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本  ほんのさわりだけ

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本の紹介です。書評ではありません。ほんのさわりを紹介するだけです。 月に1〜2本ペースでのんびりと更新します。
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記事一覧

『脳は世界をどう見ているのか』〔本〕人

「脳が知るのは現実世界の一部分」であり、「知覚するのは世界のモデルであって世界そのものではない」。 評価は分かれるだろうが本書は間違いなく、神経科学の最先端の最良かつ最高の成果である。 本書は、3部からなる。 いまのAIにIntelligenceはない 「現在の深層学習ネットワークには知識がない」と筆者はいう。 コンピューターは「日常的な知識を表現する方法」をもたないのである。

『大規模言語モデルは新たな知能か~Chat GPTが変えた世界』〔本〕人

Chat GPTの衝撃が広がっている。 すでに使ってみた人も多いと思う。チャット画面で質問などを入力すると、きわめて自然な会話が返ってくる。 「大規模言語モデルは、世の中にある様々な言語で書かれた莫大な量のウェブデータや書籍、プログラムなどを読み込み、それらの知識や情報を備えた上で対話することができる」というものだ。 本書は、この「大規模言語モデル」が何を可能にし、どんなリスクがあるのか、それはどのように登場してきたのか、どのように動いているのか、ヒトはそれとどう付き合

『君たちはどう生きるか』〔本〕人

「たったひとりしかいない自分を、たった一度しかない人生を、ほんとうに生かさなかったら、人間、生まれてきたかいがないじゃないか。」 山本有三『路傍の石』の中の有名な一節である。 山本有三は栃木が生んだ文豪である。私の実家は、山本有三の生家から歩いて20分ほどのところにある。私は小学3年から高校3年まで、山本有三が生まれた栃木市で過ごした。入学式や卒業式だけでなくいろんな場面で耳にした一節である。私の心に深く残っている言葉でもある。 路傍の石とは、道端に転がった石ころのこと

『言語の本質』〔本〕人

ことばとはなにか。 1990年代以降の言語学は、構文論と意味論の世界に明け暮れた。 抽象的な記号論の世界は、私にとってはまさに「記号から記号へのメリーゴーランド」であった。 この30年間で機械学習の世界が格段に進化した。 機械学習の進化という必要不可欠なプロセスを経て、ようやくたどり着いた。それが「記号接地問題」である。 機械学習の進化によって、あらためて「言語とはなにか」が問われるようになったのだ。 本書は、「言語と身体の関わり」を考えることで、ヒトの「言語習得」

『人類の起源』〔本〕人

古代DNA研究の近年の進展はすさまじい。 コロナウィルス検知で有名になったあのPCR法である。そしてここから「古代DNA研究という新たな学問分野」が生まれることになった。 古代人類のゲノム解析は、古代人骨や化石から抽出したDNAを解析する次世代シーケンサーの登場によって大きく進展した。次世代シーケンサーとは、DNAやRNAの塩基配列を高速かつ効率的に読むための技術である。従来のシーケンサーよりも大量のデータを短時間で取得できる。 これにより、高品質なゲノム情報を得ることが

『ヒト、イヌと語る』〔本〕犬

著者の人柄が伝わってくる。そんな素敵なイラストの装丁の本である。 犬好きの方は、タイトルを見てピンとくるだろう。本書は当然ながら、タイトルも含めて、かの有名な動物行動学者コンラート・ローレンツの『人イヌにあう』を意識して書かれている。 では、なぜ「イヌと語る」なのか。

『火の賜物』〔本〕火

この問いに対して、それは「火の使用と料理の発明だった」という「新しい答え」を示したのが本書である。 「料理」こそが、「食物の価値を高め、私たちの体、脳、時間の使い方、社会生活を変化させた」のだという。

『ヒトは〈家畜化〉して進化した』〔本〕人

なぜ、ホモ・エレクトゥスやネアンデルタール人は絶滅し、なぜヒトだけが生き残ったのか? 本書において「ヒト」とは、ホモ・サピエンスをさす。 本書は、〈自己家畜化〉仮説によって「ヒトの進化」を解き明かそうとする意欲作である。 邦訳タイトルは、衝撃的だがやや誤解されやすい。決してヒトが〈家畜化〉されたわけではない。ヒトが動物を〈家畜化〉して進化したということでもない。 本書の主張はこうである。 「ヒトは《自己家畜化》によって進化した」 いったいどういうことだろうか。

『犬だけの世界』〔本〕犬

犬の幸せとはなんだろうか。人間の家で飼われている犬たちは本当に幸せなのだろうか。 世界には約10億匹の犬がいる。「オオカミは全世界で推定30万匹」というから、犬の生存戦略はおおいに成功したといえる。ヒト10人に対しほぼイヌ1匹の割合だ。このうち、ペットと呼ばれる「飼い犬」はイヌ全体の2割に過ぎない。残りの8割は「自由に歩き回るイヌ」だ。実は、世界のほとんどのイヌは飼い犬ではない。 本書は という思考実験を試みた研究書である。思弁的生物学という学問手法を用いて、このやや無

泣いた赤おに  絵本の思い出2

いろんな版の絵本があるようだが、おすすめしたいのは原文に忠実な偕成社の1993年版だ。私が読んだのは、たぶん偕成社の1965年版だった。幼稚園児の頃に近所の児童館で何度も何度も何度も読んだ。 最近はオペラとしても上演されているようだが、残念ながら私は見ていない。 だれもが知っている話だと思う。 あらすじを紹介しておきたい。以下、「」はすべて原作からの引用である。 そのおには、「おにの子どもが、いたずらをして」「小石をぽんと投げつけようとも」「にっこり笑って見てい」るよ

三ねんねたろう  絵本の思い出1

いくつかのバージョンがあるらしいが、私が読んだのは、1967年ポプラ社発行のものだ。私は1963年生まれだが、幼稚園児の頃に近所の児童館で、何度も何度も読んだ記憶がある。 ただ寝ているのではない。怠け者にみえても、世のため人のためにいろいろ考えているのだ。そして、最後には世の役に立つことを成し遂げるのだ。