第60回男女共同参画会議「体罰」に関する意見書(令和2年3月16日、首相官邸)

 「非認知能力」を育む子育てに関する科学的知見に基づく「体罰によらない子育て」啓発を要望する
 
    文科省の「情動の科学的解明と教育等への応用に関する調査研究協力者会議」の提言に基づく10大学と16教育委員会が連携した「子どもみんなプロジェクト」は、長期的追跡調査によって裏付けられた科学的エビデンスに基づき、「対症療法」にとどまらない「予防」を重視する「子育て支援学」や「メンタルヘルス支援学」を核とした「情動発達研究」を5年間積み重ねてきました(別紙参照)。
 ノーベル経済学賞を受賞したシカゴ大学のヘックマン教授は、5歳までの躾等によって自制心、忍耐力等の非認知能力を育てることが人生に決定的な影響を及ぼすことを長期追跡調査によって明らかにしました。また、スタンフォード大付属幼稚園のマシュマロ実験によって、4歳までに自制心を育むことが大事であることも明らかになっています
 脳神経解剖学が専門で京大総長・臨教審会長・医道審議会会長を歴任された岡本道雄氏は、脳の発達は刺激によって大脳辺縁系が促進的に働き、大脳新皮質が抑制的に働き、人間形成においてこの促進性と抑制性のバランスが大事であり、自我が形成される臨界期には甘やかさず厳しい壁となって、前頭前野を「鍛える」必要があり、躾の時の叱責と称賛、忍耐の養成が必要であることは、「教育の不易」な部分だと強調されています
 厚労省の「体罰によらない子育て」啓発に当たって、「子どもみんなプロジェクト」の5年間の研究成果である、いじめ、不登校、不安、暴力行為などの予防を重視する「子育て支援学」を踏まえて、5歳までに原型が形成される「情動」や非認知能力を育む子育ての在り方や、子供の発達の臨界期を踏まえたかかわり方についての科学的知見」を参考にし、「子供の最善の利益」のためには、「自制心を育む」ことの重要性も見落としてはならない点を強調しておきたいと思います。


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