LGBT理解増進法案をめぐる内閣委の注目すべき質疑応答

    LGBT理解増進法案が6月9日の衆議院内閣委員会で、日本維新の会・国民民主党案をほぼ丸呑みした与党案修正案で可決し、13日の衆議院本会議で可決、参議院に送付され、16日に成立する公算が大きい。
 当事者団体の全国組織「LGBT法連合会」等は同日記者会見を行い、「自治体の今のLGBTQ支援施策等の取り組みが抑制されてしまう。当事者や支援者が声を上げにくくする効果を生むのでは」と問題視した。

維新議員の質疑応答

 衆議院内閣委員会の審議で注目されるのは、日本維新の会の堀場幸子議員と阿部司議員との次のような質疑応答があることだ。

<(維新・国民民主案は)保護者の理解と協力を得て行う心身の発達に応じた教育または啓発というような表現で提案をしていたが、(修正案は)家庭及び地域住民その他の関係者の協力を得つつ行う、という表現になった。心身の発達に応じたという文言と、保護者の理解、協力と定めなかった理由を教えてほしい➡維新・国民案の趣旨は既に原案(与党案十条一項「心身の発達に応じた教育及び学習の振興」)に盛り込まれているということで、この修正案となった。>

<政府は運用に必要な指針を策定するとあるが、趣旨を教えてほしい➡全ての人の安全安心につなげていくことができるよう、基本計画だけでなく、必要に応じてガイドライン、すなわち指針を定めることによって、さらに理解増進のための取り組みを後押ししていくことに資するということ>

<維新・国民案では、民間団体の自発的な活動を促進するという文言を削除されたと聞いているが、その経緯をを教えてください➡まずは、国、地方公共団体やその職員の理解を増進していくことが必要であると考え、削除しました>

立憲民主党・れいわ新撰組議員との質疑応答

 また、立憲民主党の吉田はるみ議員と新藤義孝議員との次の質疑応答も注目される。

<古屋圭司議員のブログに書かれている「多くの皆様から御指摘いただいた懸念を払拭しており、かつ、この法案はむしろ自治体による行き過ぎた条例を制限する抑止力が働くこと等強調したい」という趣旨なのか➡地方自治体の事務は国との連携の中で行われていく。自治体が国の指針に基づいて適切に判断されるということだ>

 新藤義孝議員が立憲民主党の西村智奈美議員の質問に対して、「保護者の理解を得て教育の啓発活動を行おう、ここは、家庭と地域の協力を得てという形に、これは私どもで提案させていただきました。その方がより安定性が高まると思ったからです」と答えている点にも注目したい。
 教育基本法13条は「学校、家庭及び地域住民その他の関係者は、教育におけるそれぞれの役割と責任を自覚するとともに、相互の連携及び協力に努めるものとする」と明記しており、家庭教育は全ての教育の出発点であり、人格形成の原点である。
 この13条の法的安定性のある文言を用いて趣旨を明確にしたというのが新藤義孝議員の答弁のポイントである。さらに、れいわ新撰組の大石あきこ議員は6月9日付産経新聞に掲載された「なぜ急ぐのか疑問」と題する私のコメントを引用して、次のように質問した。

<性道徳を全面否定する過激な性教育を行う団体や活動家が行政や学校と癒着して研修を担い、継続的に補助金を受け取れる恐れがあるから問題だとおっしゃっているんですけれども、(「民間団体等の自発的な活動の促進」)を削除したコンセプトにそのようなものは含まれているか、教えてください>

 この質問に対して新藤義孝議員は「それは、ちょっと危なくて答えられない」と明言を避けている点が興味深い。大石議員は私を「社会の発展を阻害する危険な考え」「人類の当たり前の前進を否定する危険な考え方、その核心は優生思想」であると批判しているが、「優生思想」とは一体何か。
 それは、身体的、精神的に秀でた能力を有する者の遺伝子を保護し、逆にこれらの能力に劣っている者の遺伝子を排除して、優秀な人類を後世に遺そうという思想であるが、私はこのような思想を主張したことも言及したこともない。このような不当且つ荒唐無稽なレッテル張りを国会発言の中で行うことを黙視するわけにはいかない。


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