ヴァイニング婦人との出会いと妻の詩⑷

 致知出版社の拙著『日本が二度と立ち上がれないようにアメリカが占領期にに行ったこと』が7刷、累計発行部数は2万7千部になった。私がアメリカで発見したウォーギルト・インフォメーション・インフォメーション・プログラム(WGIP)に関する本は、『検証・戦後教育』(廣池学園出版部)、『WGIPと「歴史戦」』(モラロジー研究所)、『「日本を解体する」戦争プロパガンダの現在一WGIPの源流を探る』(宝島社)、『歴史の喪失』(総合法令出版)を含む5冊で、WGIPについて外国人に分かりやすく解説する出版計画が進行中である。
 マッカーサー記念館で開催された日本占領シンポジウムで上皇陛下の家庭教師をされたヴァイニング婦人と懇談する機会に恵まれ、マッカーサーとの会見で陛下が”You may hung me"と言われたと会見の通訳を担当した友人から聞いた、と伺った。
 この実話を上皇陛下と天皇陛下に直接詳しくご報告させていただいたが、ヴァイニング夫人の文書が保存されたハバフォード大学マジル図書館クエーカー文庫では、コピー、写真撮影、メモも許されなかった。
 香淳皇后と美智子皇后、上皇陛下の書簡や、マッカーサーとの会見の逐語的記録及び面会のための小泉信三氏らとの準備記録などが含まれていた。
 
 ワシントンDCを出発し、車で移動し3日後にハバ―フォード大学に到着した時、妻が次のような詩を書いた。

雨のハバフォード大学で見たものは何?
それは あなたの無心の働き
内からの衝動で動く まっすぐな純真な働き
何の邪心もない
何の計らいもない
無心の働き

車の荷台から資料を取り出そうとする
後ろ姿を見たとき
この大学に来るまでの
緻密な準備を感じて
私は何の役にも立てず
一人でこの人生を引っ張ってきたのだなあと
涙が出そうだった
その後ろ姿に
父を感じた

  歴史を明らかにしてほしいという願いから「史朗」と名付けた父が、長いアメリカ大陸横断を毎年繰り返しながら、全米各地の大学や研究所を駆け巡って在米占領文書の調査研究に没頭してきた私達を見守り、後押ししてくれていることを最も感じていたのは妻であろう。
 ハバフォード大学に到着した時の光景は私の脳裏にも深く刻まれている。真っ暗な早朝からレンタカーで出発し、昼まで休憩なしに一気に走行し1日800キロ全米を駆け抜けてきた思い出は一生忘れられない。二人だけが共有してきたかけがえのない宝物の時間であった。


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