『武士道』を読んだ開成中高生の感想文

 新渡戸稲造が『武士道』を著したのは1899年であるが、英語で書いた初めての「日本人論」として、アメリカやヨーロッパでベストセラーとなった。この中で新渡戸は、「武士道は独特の日本の精神(The Soul of Japan)を形成する基となった。しかしその中身の多くは世界共通の普遍的価値を含んでいるのだ」と述べている。

武士道とは「ノーブレス・オブリージュ」である

 新渡戸は「武士道とは一言にすれば、武人階級の身分に伴う義務(ノーブレス・オブリージュ)である」と述べているが、武士道の仁・義・礼・智・信、名誉、克己などもノーブレス・オブリージュそのものである。
 私は20年近く自衛隊幹部学校で「精神教育の要諦」という理論の講義を担当しており、大森惠子抄訳・解説『高校生が詠んでいる『武士道』』(角川書店)に掲載されている開成高校及び開成中学3年生の『武士道』の以下の感想文を読み上げるが、若い幹部候補生たちの大きなどよめきと歓声、拍手が鳴り止まない光景を目の当たりにしてきた。

「今この書に出会え、僕の血の中に抗(あらが)うことのできない日本人固有の伝統精神が生きていることを誇りに思う。これから先、日本はますます疲弊し、混沌とするかもしれないが、日本人の原点回帰の書として憶えておきたい」
「いま僕たちは世界最先端の技術を持っていることを誇る前に、日本古来の伝統や歴史・文化そして精神をもう一度見直す時期にいるのではないだろうか。自国の伝統や脈々と受け継がれてきた精神を知らずに世界の第一線に出ていくことは恥ずかしいことだ。『武士道』にはこれまで培われてきた日本人の精神のすべてが詰まっている。これは日本人が日本人としての誇りを取り戻し、世界に胸を張って出ていくための必読の書だと思った」
「僕は誇りある日本人の一人として『武士道』のいう名誉の掟を精一杯守りたいと思う。たとえどんな状況にあろうとも、己を律すること厳しく、責任感を持って困難に立ち向かうことを厭わない人、どんな逆境の中でも自らの誇りと使命感を失わず模範的生を示す強い精神の持ち主でありたい」
「日本人は『武士道』にある克己を忘れることなく、言葉で自分の意思、考えを表現し伝えていくための新たな伝統を打ち立てなければならない時期に来ていると思う。それによって国際社会での日本の立場を築いていけると信じている」

WGIPを陣頭指揮したスミス論文「日本精神」の3本柱

 WGIP(戦争につての罪悪感を日本国民に植え付ける情報宣伝計画)を陣頭指揮したブラッドフォード・スミス(米戦時情報局の中部太平洋作戦本部長、GHQ民間情報教育局の企画作戦本部長として、米国務省が公的な米国史観として編集した『平和と戦争』に基づき『太平洋戦争史』をまとめた)は1942年、コミンテルンの外郭団体「米国シナ人友の会」の月刊誌「AMERACIA」に発表した論文「日本精神」において、神道、皇道、武士道を日本精神の3本柱として捉え、「軍国主義」だと批判した。
 スミス文書はカリフォルニア大学ロサンゼルス校のチャールズ・ヤング研究図書館に所蔵されている。詳しくは拙著『「日本を解体する」戦争プロパガンダの現在一WGIPの源流を探る』(宝島社)を参照されたい。
 

 

 

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