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note de ショート

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2000文字〜8000文字くらいの、色々なジャンルのショートストーリー(時にエッセイのようなもの)を、月10話くらいのペースで書いています。
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記事一覧

しあわせイコライザー③(note de ショート #21)

 土曜日の朝、と言ってももう昼前。僕は目が覚めた。昨日の夜はいつもの金曜の晩のように遅く…

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しあわせイコライザー②(note de ショート #20)

 「大丈夫?」  僕はハルカが連れてこられた保健室に来た。保健師の先生がハルカの足にシッ…

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しあわせイコライザー①(note de ショート #19)

 放課後、いつものバーガー屋でいつものメンバーと盛り上がった後、僕は駅まで早足で歩いてい…

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天使のすべり台を撮影する方法(note de ショート #18)

 どうして僕はiPhoneばっかで写真を撮ってるかって?  自分が「おっ」と思って、撮影したく…

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春は心踊る季節なのか?(note de ショート #17)

「春は心踊る季節」 だなんて、誰が言い始めたんだろう。 「早くあったかくなって春が来て欲…

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違う人間になろうとして寝たはずなのに〜シュウの場合

 夜明けに春の鳥の鳴き声が聞こえるようになった。山の稜線は薄紫色をしていて、空には三日月…

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The music of the other world echoing in Tokyo 〈on the anniversary of Shinji Sato's death by the Fishmans〉〜English Version

Toward the end of the 20th century, there was a band in Tokyo that played "music from the other side of the world. The vocalist sang most of the songs in a high tone that included a back voice, and his voice was always wavering. Behind her,

東京で鳴り響くあの世の音楽〈フィッシュマンズ佐藤伸治さんの命日に寄せて〉 (note …

 20世紀の終わり頃、東京で「あの世の音楽」を奏でるバンドがいた。ボーカルはほとんどの部分…

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ココアは甘いはずなのに(note de ショート #14)

「ねえ、リコ」    僕は隣に座ってノートパソコンで作業しているリコに聞いた。   「なに?…

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「タンジェリンの夢とマーマレードの空」(note de ショート #12)

 公園で出会った小さい女の子からもらった虹色のグミを口にして以来、僕はカラフルな世界に住…

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ヴレ・ド・ヴレ〈vere de vere〉 (note de ショート #13)

「このワイナリーは、建てて10年になるかな。ここで作るものは外に出して売るつもりのない。ま…

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ひらがなではなして(note de ショート #11)

 デパートのレセプションという仕事が、果たしていつまであるのかわからないけれど、私は3年…

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瞬と純(note de ショート #10)

 チャンスはいつも終わり際にやってくる。    85分が過ぎて右サイドを駆け上がる足は、 重…

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人の恋路を邪魔する者は(note de ショート #9)

 僕は父親が嫌いだった。  物心ついてから気づいた事は、自分の住んでる家は父親に怯えていると言うことだった。外面は良いくせに、家族である僕たちにはきつく当たる。母は常に父親の顔色を見ていたし、父はそんな母が何をやっても褒めるなんて事はなかった。母のそんな様子を見て僕と妹は小さい頃から、この家での立ち振る舞い方を身に付けていった。  父は会社員をしていて、会社では評判が良いみたいだった。年齢を重ねるごとに昇進をしていったが、それとともに「付き合い」と言う名の飲み会の機会が増