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今週の為替イベント解説「イベント・インサイツ」 ~日銀副総裁講演、ベッセント指名承認公聴会

ストリート・インサイツの安田佐和子さんが為替市場のイベントを解説してくれる「イベント・インサイツ」。毎週月曜日の午後~夕方に更新しています。動画版はこちらからご覧ください。


1月6日週の振り返り

まずは前週の動きを振り返ります。前週はトランプ砲がとどろき、為替が乱高下する場面がありました。

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前週の振り返り:ドル円、159円に迫るも日銀報道が重石に

1月6日、ワシントンポスト紙が「トランプ陣営は一律輸入関税を重要セクターのみに適用する」と報じ、ドル円は一時156円24銭と週の安値を更新。
その後間もなくトランプ氏が「トゥルース・ソーシャル」で全面否定をしたためドル円は買い戻しを迎えました。

1月7日にはトランプ氏が金利は高すぎるなどと発言しましたが、為替が再び大きく動いたのは1月8日です。
CNNがトランプ氏新たな関税プログラム導入に国家経済緊急事態宣言を検討すると報じたためドル円は再び158円台の半ばへ上昇しました。

その後トランプ氏は特に否定もせず、ドル円が高値で推移する中、1月10日には日銀が物価見通しを引き上げるのではないかとブルームバーグが報道。変動が大きい生鮮食品とエネルギーを除いた消費者物価指数・コアコアCPIについて、2024年度と2025年度の見通しを引き上げる方針と伝えました。

これを受けてドル円は下落する場面を迎えましたが、ニューヨーク時間に米12月雇用統計が市場予想を上回る好結果となり、ドル円は一時158円88銭と週の高値を更新。
ただし、アメリカ株が下落したほか、日銀の報道が意識されたようでドル円は雇用統計後の上げ幅を間もなく打ち消し、157円台の後半で週を終えました。

米雇用統計の結果を受けたブルームバーグの報道によるとスワップ市場では、次回の利下げ予想が10月まで後ろ倒しになる場面があったと言います。ただ、FF先物市場では引き続き、年内の利下げ予想は1回で、6月か7月が有力視されています。

1月13日週の注目指標

続いて今週の注目指標をお伝えします。
今週はアメリカと日本の物価指標に続きアメリカ金融当局者の発言が集中し、イベント目白押しの1週間となっています。

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今週の注目指標:米物価指標や米金融当局者の発言が集中①

1月14日(火)のイベント

1月14日には日銀の副総裁の講演を予定します。質疑応答も予定される中、植田総裁のハト派よりの見解を踏襲するか、これにより1月追加利上げ見通しが消滅する可能性もあり注意が必要です。

同じく14日には米12月卸売物価指数、生産者物価指数とも言いますが、PPIを予定します。足元のISM製造業景気指数では、仕入れ価格が12月に前月を上回っていました。川上でのインフレ再燃があるのかPPIで確認することとなりそうです。

1月15日(水)のイベント

1月15日には米12月消費者物価指数(CPI)を予定します。同じくISM非製造業景気指数の12月の仕入れ価格は2023年2月以来の水準へ急進しました。これを受けてサービス価格などが上ぶれするのか、CPIの総合よりもコアCPIとスーパーコア(住宅を除くコアサービス)が上ぶれするかに注意が必要です。

そのほか、15日には米12月ニューヨーク連銀製造業景気指数も予定します。カンザスシティ連銀総裁の発言を始め、ニューヨーク連銀総裁やシカゴ連銀総裁の発言、アメリカ地区連銀経済報告、ベージュブックも控えています。

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今週の注目指標:米物価指標や米金融当局者の発言が集中②

1月16日(木)のイベント

16日には日本の12月国内企業物価指数が予定されています。企業物価指数には輸入物価指数も含まれますが、植田総裁はこの輸入物価指数につき、落ち着きを示すと発言していました。その通り落ち着きを示す結果となるか、いったんの答え合わせとなりそうです。

同じく1月16日には米12月小売売上高を予定します。年末商戦がらみで個人消費は堅調になると予想されています。

そのほか16日には米12月輸入物価指数や米新規失業保険申請件数、米1月フィラデルフィア連銀製造業景気指数を予定します。

そして16日といえばベッセント次期財務長官が米上院銀行委員会で開催される指名公聴会に出席します。
ベッセント氏がトランプ2.0での関税やドルを巡る発言を行うのか非常に注目されます。

1月17日(金)のイベント

17日は中国の第4四半期国内総生産GDPの発表を予定するほか、アメリカの住宅関連指標、鉱工業生産などが控えます。中国の指標についてはアメリカ株相場のリスク選好度を強めるか否かという点で、為替に影響を与えそうです。

14日、日銀副総裁の講演。植田発言を踏襲するか

続いては今週の注目トピックスです。1月14日は日銀の副総裁による講演を予定します。

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氷見野副総裁、14日に何を語る?

日銀の副総裁の講演を控え、11月実質賃金は-0.3%と4か月連続でマイナスとなりました。マイナスとなった背景にはコメなどの食料品価格に加え、エネルギーなどが物価を押し上げたことがあり、結果的に実質賃金はマイナスとなりました。
一方で所定内給与は前年比2.7%上昇し、1992年以来の強い伸びを保っています。

一連の結果を踏まえると「物価の番人」としての役割を担うのであれば、日銀が追加利上げを行ってもおかしくない状況というふうに見えます。

しかし、日銀支店長会議の報告によれば、2025年度の賃金設定につき、現時点では競合ほか社の動向を見極めており、賃上げ率を固めていない、さらに中小企業を中心に収益面の厳しさから、慎重な姿勢を示す声も引き続き報告されたといいます。
そのほか、継続的な賃上げが必要との認識が幅広い業種・規模の企業に浸透という指摘も確認できました。

とはいえ強弱ミックスの内容と判断され、1月に追加利上げが可能な状況とは読み取れません
しかも日銀の大阪支店長は、どんどん円安に進んでいるわけではないことを好感する企業もあると発言したほか、輸入物価は落ち着いていると言及しました。
この輸入物価は落ち着いているという発言は、植田総裁が2024年12月の日銀金融政策決定会合で発言した内容と重なります。

一連の動向を踏まえますと、1月14日の日銀の副総裁の講演で植田総裁の発言を繰り返すのかが大きなポイントとなるでしょう。

植田総裁の発言といえば重要なポイントは3つあります。

  1. 春闘のモメンタム

  2. トランプ次期政権の経済政策などの不確実性

  3. 輸入物価は落ち着いている

というものです。これら3つの発言を日銀の副総裁が踏襲するならば、やはり1月追加利上げの可能性は極めて低いと判断される可能性がありそうです。
ブルームバーグで報じられた2024年度と2025年度の物価見通し上方修正との兼ね合いも、意識されるでしょう。

CPIと小売売上高の見通しは

次にアメリカ12月CPIと小売売上高についてお伝えします。

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米12月CPIと小売売上高、強含むかー寒波の影響も

米12月CPIは、クリーブランド連銀のナウキャストに基づいてと前年同月比2.9%、コアCPIは3.3%と予想されています。これは市場予想と一致する数字になります。
前月と比較しますとCPIについては2.7%からの加速。コアCPIは3.3%と前月と変わらずの予想となっています。仮に前月から加速したとしても市場予想と一致するならば前月のCPI結果のドル円の動きと同じく下落する可能性があります。
逆に12月ISM非製造業景況指数の仕入れ価格指数が2023年2月以来の水準へ急進したように、コアCPIやスーパーコアが上ぶれするならばドル円を押し上げそうです。

米小売売上高について言うならば、「除く自動車」でシカゴ連銀は前月比0.5%の増加を予測していました。
この数字は足元の市場予測と一致するもので、前月から加速するとしても市場予想と一致するならばドル円への影響は限定的となりそうです。

ボラが出る可能性、16日夜・ベッセント次期財務長官の公聴会

1月16日と言えばアメリカ上院銀行委員会でベッセント次期財務長官に対する指名公聴会を予定します。
16日の午前10時30分、日本時間の24時30分から開始する予定となっております。

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ベッセント次期財務長官、ドルと関税への言及に注意

ベッセント次期財務長官といえば、過去にアメリカ経済が発展するならトランプ氏はドル高を容認するのではと予想していました。
ただし、トランプ氏といえば2016年のアメリカ大統領選に勝利したあと、就任式を控えた2017年の1月17日、ドルは強すぎると言及していましたよね。
また最近でも1月7日に金利は高すぎると発言していました。

したがって、ベッセント氏がドル高を容認するような発言を行う可能性は現時点で低いと考えられますが、上院議員からドルの信任について質問される可能性もあり、ベッセント氏がどのような見方を表明するのか、ベッセント氏の発言次第でドル円は大きく変動しそうな雲行きです。

そのほか、トランプ2.0を控え、ベッセント次期財務長官には関税に関する質問が集中しそうです。
ベッセント氏はアメリカ大統領選中、関税について、あくまでも交渉材料であるとの姿勢を一貫して打ち出してきました。
その一方、関税については3つの点から有用だと発言していました。

  1. アメリカが貿易不均衡から立ち上がる手段

  2. 大統領の外交政策目標を達成するための手段

  3. 歳入増の手段。

この3つの観点から有用と説明しています。
足元でトランプ氏はグリーンランドを購入できないのであればデンマークは高い関税を支払うことになるだろうと圧力をかけていますが、まさにベッセントが言う大統領の外交政策目標を達成するための手段に該当すると言えそうです。

このようにこれまでのベッセント氏の発言というのは、足元のトランプ氏の行動と整合的な部分もあり、今回の指名公聴会のベッセント氏の証言はトランプ2.0を占う上で非常に重要となるでしょう。

以上、今週の経済指標「イベント・インサイツ」。安田佐和子がお届けしました。どうもありがとうございました。

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