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Fry me to the Eurasia【エッセイ】

 中学生のころ、椎名誠の「インドでわしも考えた」を読んだ。強い衝撃を受け、インドに行きたい欲がふつふつと湧き、高校の時には休み時間に「地球の歩き方 インド編」を読んでいる変なJKになってしまった。
 インドの文化や風習に惹かれるなか、隣国のネパールにも興味が湧いてきた。そもそも山が好きだったので、ヒンドゥー文化圏のネパールで、ヒマラヤを眺めるのもいいかも、と思い始めた。
 ネパールのことを調べはじめると、山の方はチベット文化圏でもあると知った。政治的話題はなんとなく知っていたが、具体的にチベットとはどんなところなんだろう。そしてチベットについて調べはじめる。チベットの歴史を調べていると、中国の歴史、そして最終的にシルクロードの歴史について興味が湧いた。

 シルクロード。名前は聞いたことがあるし、そのお陰で仏教など様々な文化が日本にもたらされたとも知っていた。しかし、詳細が分からない。そこで見たのが、随分と昔にやっていた、NHK「シルクロード特集」で、かなり感動した。
 中国の都から果てはローマまで、さまざまな民族が伝言ゲームのように文化や宗教を運んでいく。伝言ゲームだから多少の誤差があり、それが誤差のあるままローカライズされ、根付いてその土地の文化になる。
 餃子は中国料理だが、実はその派生は世界中にある。イタリアのラビオリ、ロシアのペリメニ、ネパールのモモなど、ユーラシアに広く分布する。シルクロードによって伝播されたと考えると、なんだか感慨深い。
 宗教もシルクロードによって伝搬された。仏教はもちろん、キリスト教も五世紀ごろには既に中国に到達して、民衆の間で流行したようだ。日本がまだ奈良時代の話である。また、中国のミーラン遺跡から発掘された絵の中に、明らかに東洋系のいでたちなのに、翼が生えている天使像が発見されたこともある。
 
 ロマン。シルクロードは本当にロマンの塊なのだ。
タクラマカンの砂に埋もれた楼蘭、移動する湖ロプノール、トルファンやベゼクリクやクチャの遺跡、ダンダンウィリク、汗血馬、消えたソグド人、匈奴、突厥、フン族、モンゴル帝国、髪の中に蚕の繭を隠したホータンの王女、香妃、文成公主、ビビハヌムのモスク……。
 こうやって羅列するだけでワクワクする事柄が、シルクロードには溢れている。

もしも、死んでしまったら。
私はシルクロードを飛来したい。ユーラシアを西へ向かって横断して、古来の人々が行き交った貿易の道を辿ってみたい。どんな民族がどんなところで暮らしているのか眺めてみたい。険しい山々、灼熱の砂漠、広大な草原。全てをこの目で見てみたい。
 生きているあいだに行くことが出来ればいちばん良いが、今は家庭を持つ身だし、それ以外にも悲しいかな様々な問題がありかなり難しいだろう。だから今世は諦め、死後に託すことにする。

 あなたが王将で冷たいビールを飲み、あつあつの餃子を頬張っているとき、イタリアではワイン片手にラビオリを食べている人がいる。
 そしてそれは、幾千年の時間をかけてユーラシア大陸を舞台に行われた、ロマンあふれる伝言ゲームの答え合わせなのだと言うことを、少しだけ思い出してみてほしい。

 これを読んで、シルクロードに興味が湧いた人はNHKのシルクロード特集を見てみてください。新シルクロード特集も合わせて是非。
本当に面白いので!
もっとシルクロードに興味が湧く人が増えますように!

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