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【北海道の田舎者視点のベストコンサート-国内編 4/5】 ー小澤征爾とNHK交響楽団ー

小澤征爾さんとNHK交響楽団

小澤征爾とN響との関係については多くの人の知るところですが(N響事件)、例の出来事以来30年以上にわたってN響を振っていなかった小澤さんがN響の舞台に再び登場したのは1995年のこと。チャリティーコンサートという形でした。そのコンサートの模様はもちろんNHKでも放送され、最後に演奏されたドヴォルザークのチェロ協奏曲は、ソリストに小澤さんの親友であるロストロポーヴィッチ迎えた大名演でした。それ以来また長いことN響を振ることはなかったのですが、2005年のNHK音楽祭で10年振りにN響を振るというので、「これは歴史の証人にならなければ!」と思い、必死に電話をかけまくってやっとのことでチケットをゲットしたのです。

小澤征爾さんがNHK交響楽団を振った、現時点での最後の公演

2005年10月26日。この度も定期公演ではなく、「子供のための音楽会」という位置づけ。2日公演で、両日ともチケットをゲットできたので北海道から飛行機に乗って出かけました。プログラム構成がユニークで、最初にベートーベンの5番をやり、それからガーシュインのピアノコンチェルト、そして千住明さんの日本交響詩。コース料理を後ろから食べさせるような内容に驚かされたのですが、いよいよコンサート開始。超満員のNHKホールの万来の拍手に迎えられた小澤征爾さん。私にとっては2度目の生オザワだったものの、「お~来た~!小澤さんとN響!」身震いが止まりませんでした。小澤さんが指揮台に上がるなり、ベートーベン5番の「ダダダダ~ン、ダダダダ~ン」とはじまります。

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N響とのコンサートは普通にしたくなかった小澤さん

でもそこで指揮を止めて、マイクを持ち、「というのが…(笑)、せっかくこの『運命』っていうんでね」と解説をはじめられました。私も含めて誰もが意表を突かれ、一気にNHKホールがこれまでの小澤さんとN響との関係が何事もなかったかのように明るい雰囲気になります。子供たちにもわかりやすいように温かく、優しくベートーベンとは、オーケストラとはを教えてくれます。私も目からうろこでした!そしていよいよノンストップでベートーベンの5番が始まります。これまでの優しいまなざしが一転、例の鋭い目つきになり、目くるめく演奏が進んでゆきます。驚いたのが、小澤さんの気迫と勢いにN響が必死に食らいついたかと思えば、力尽きて引き離されてゆくの繰り返しのように見えたこと。「こんなN響見たことない!」「大変な演奏会に来てしまった!」と思いました。もちろんテレビでも放映されましたが、実際の演奏はテレビから伝わる数十倍も素晴らしいものでした。当然ブラーボ―の嵐。(そのうちの一つは私のブラボーの声です…笑)ガーシュインのピアノコンチェルトも素晴らしく、涙が止まりません。さすがアメリカで長いこと第1線で活躍した小澤さん。音楽からアメリカの空気がこれでもかと匂ってきます。日本交響詩の最後に「さくらさくら」を聴衆全員で大合唱!「自分が小澤さんの指揮で歌っている~!」と感動しながら、演奏会終了。「あれは何だったのか?!」何もかもが意表を突くもので、腰砕けに。NHKホールを後にするときに前を歩いていたのはなんと、小澤さんの奥さんのヴェラ夫人!誰かと話しながら歩いていたのですが、「主人来週はウィーンなの」と聞こえてきて、「わー本当に小澤さんの奥さんだ!」とか思いながら、放心状態で歩いたのを覚えています。小澤さん、それから1か月余り後に体調を崩されて、この時以来体調を崩されることが多くなるんですよね。そのことを考えても本当に感慨深い演奏会でした。歴史的なコンサートに立ち会えて本当に良かった。残念ながらこの時以来小澤さんの演奏会に行くことができていません。小澤さんも今ではご高齢であられるので、せめてもう一度だけ!小澤さんの指揮するコンサートに行きたい!

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