穂村弘さんに採用して頂いた短歌
ミッキーとミニーには歯が無いけれどわりとなんでも食べるみたいだ
もう君の夢をみないと約束をさせられた日にみた君の夢
少しだけネイルが剥げる原因はいつもシャワーだよシャワー土下座しろ!
脱がしかた不明な服を着るなってよく言われるよ 私はパズル
タメぐちで宝石を売りつけようとする人と二時間喋ってる
本をあんなに持っているのにまた本を買うのかとなじられる毎日
覚えててわたしの棺へ入れるものメリーゴーランドの設計図
ファミレスをおごってくれそうなひとにかたっぱしから電話をかける
あしたから十日間カップ麺だけで生きなくてはならないなんて怖い
ラッシュ後の駅にはいろいろ落ちていて今朝はゼムクリップと名刺と歯
一日に三回ドトールに行ったじぶんのことをだめだとおもう
ジェットコースターの絶叫が窓から聞こえる部屋で二年間 した
募金箱を持つ女子高生が掲げてるプラカードには「写真NG」
礼拝の前に教えてほしかった聖書をめくる音は響くと
自転車の乗りかたをもう忘れたな最後に乗った日のシャボン玉
「そしてこの光を押します」自販機の使い方を教えている深夜
店長に監視カメラのうちあれとあれとあれはニセモノだと教わる
波打ち際から逃げる君をみつめてたあの日の波打ち際に住みたい
四十になるというのにまだ犬にいちども触ったことがありません
黄身色の毛布にくるまれ救急車は卵みたいと思った昨夜
サーカスの団長になって全員を同じ匂いのシャンプーにしたい
おばけ屋敷が途中で止まったことがただうれしくてそれだけの一日
「わたしのこと知らないよね」とだけ書いた紙のはさまっている古本
冷蔵庫にのりたま入れたことだけを覚えているよもう終わる夏
やり方を忘れてしまった解剖のように進んでしまう恋です
今日もまだテーマパークのテーブルに消毒液はくくられている
まず上に○つぎに下に○を書くわたしの8に「ふーん」と言う君
一万人が銃の形にした指をステージに向けていたコンサート
らくがんを食べる砂糖の塊を食べる生きているうちに食べる
発車時刻ぎりぎりまで本を読んでるバス運転手を見た誕生日
十二本スプーン曲げをされた日に真顔で元に戻したわたし
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