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24.グッとくる話と「へ?」て感じの起業セミナー。

コールドなホワイト企業Z社に嫌気が差す頃、湘南紳士塾で仲良くなった古森さんに起業セミナーに誘われた。

横浜駅の東急線改札前で待ち合わせをし、渋谷駅のセミナールームへ向かった。俺は、セミナーのドレスコードがよく分からずスーツを着ていったのだが、古森さんはTシャツにワイシャツを羽織る程度のラフな格好だった。

古森さんも色々と事情を抱えている人だ。元々は飲食チェーン店で店長をしていて、バイトに来た20代の女性と懇ろになり、出来ちゃった結婚する。

だが、結婚は3年も持たなかった。酔った上でのモラハラが酷かったそうで、追い詰められた奥さんは、とある宗教団体に助けを求め、最後は逃げ出す事になる。

古森さんは奥さんを奪回するべく動くものの、その際、依頼した弁護士さんから、モラハラの件を指摘され自分の否に気付いたそうだ。その後、会社を辞めて帰省し、親の脛を囓りながら、荒れた実家生活を送っていた。

だが、ある日、母親に「お願いだから働いて」と懇願され、湘南紳士塾への入塾を決意。その真剣な表情を見て、「これは俺が立ち直らないと母は死ぬかもしれない」と思ったそう。その後、半年間の寮生活を経て社会復帰。時々、自身への戒めの為に短期の合宿に参加しているそう。

現在、先輩の整体院で働きながら夜学に通い、来年には資格取得予定だ。あまり儲かる仕事では無いそうなので、「今から副業で出来るビジネスを探している」と渋谷に向かう電車内で話してくれた。古森さんの後ろに居た女性が、田園調布駅を過ぎる頃から鼻水を啜っていたが、確かにちょっとグッとくる話だった。

セミナー会場は渋谷駅から5分程歩いた古いビルの中にある。外観は古いものの、実際に中に入ると中はキレイにリフォームされていて、トイレも無駄にデザインに凝った便器内に黄色が飛び散りやすそうな形をしている。

なんだろう? 飛び散りもアートって事なのだろうか? 「じゃあ」という事で、俺もアートに協力をしたが、便器の表面が多分最新の素材でツルツルだからか、一撃の水で綺麗に真っ新に回復。

最新であろう便器に驚き、最新の手荒い場のセンサーに苦戦し、最新?のゴワゴワな紙で手を拭くと、最新ではないゴミ箱にゴワゴワな紙を捨て、昔ながらのトイレのベタベタな扉の取っ手を引いて、セミナー会場へと移動した。

セミナー会場は100席くらいだろうか、開始時刻の5分前には席が埋まり、セミナー会場のスタッフさんが折りたたみ椅子を追加するくらい聴講生が集まっていた。

セミナー自体は講師の成功自慢から始まり、塾生のインタビュー動画を挟み、最後に講師が主催する塾への勧誘になった。正直、セミナー自体は「へっ?」って感じだったが、途中で流れた塾生へのインタビュー動画は、「講師様はスゴい!」を補強するヨイショ話を除けば、すごく興味を惹くモノがあった、

特に、酒乱で家庭が崩壊し暴力で仕事をクビになり、ファーストフードの夜間清掃の仕事をしながら挑戦したネットビジネスで年収2000万円を突破した、という40代の男性の話は、どこか自分の境遇に似ていた事もあってか、真剣に聞き入ってしまった。

セミナー終了後、古森さんと一緒に駅から少し離れた場所にあるカフェに寄った。塾は年120万円。古森さんは「夜学の学費が払い終えたら入ろうと思う」と入塾は決めたみたいだった。

俺は講師や塾自体には何の興味も湧かなかったが起業そのものには興味を持った。何となくだが、俺に合ってそうな気がしたのだ。

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