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43.副業コンサル事業を薦められる。

バイト後、元町にあるカフェへと向かった。今日は、高山からの提案で、次に取り組むビジネスについて話し合う予定だ。

カフェに到着すると、既に高山が窓際の席で、ノートPCを弄りながら珈琲を飲んでいた。

「おす高山!」
「お~淳平! すまね。1件だけ仕事終わらせていい?」
「お~、構わんよ」

俺はブラック珈琲を注文すると、ノートPCで作業する高山の横で、【経済学者コトラーの本】を読み始めた。今までは、お手軽なビジネス書や自己管理の類いの本ばかり読んでいたが、最近は難しい本も読むようになった。コトラーの本を広げてしばらくすると高山のカチャカチャ音が止む。

「淳平、何読んでるんの?」
「コトラー」
「マジかよ」
「ビックリだろ。俺も驚いてるよ」

積み重ねとは凄いモノで、今までは役に立つ情報、スグに使える情報を仕入れる為に本を読んでいたのだが、最近は読書が趣味になってしまったのだ。母の影響であんなに読書嫌いになってたのに……。

そして、いざ読書が趣味になると、読み応えが欲しくなってしまった。多分、サッカー部時代のトレーニングと同じ感覚なんだと思う。読み応えがあるからこそ、それを乗り越えた時に脳汁(快感物質)が出る。その快感が堪らないんだと思う。

その後、高山の後輩が飲み屋でナンパした女性が実は上司の愛人だったけど、知らずに共通の知人くらいの乗りで、うっかり「今度、上司に3人目のお子さん生まれるんだよ」と言ってしまったが故に勃発した修羅場に巻き込まれ、その修羅場が収まった直後に、なぜかその後輩はその女性と結婚し3ヶ月後に子供が生まれた!という、異様にこんがらがった話で盛り上がると、本題でもある「俺が次に取り組む予定のビジネス」の話し合いになった。

高山からは、副業コンサル事業を進められた。SNSやウェブサイトから、見込み客リストを集めて、メルマガを通じてクライアントを獲得するというビジネスモデルなのだが、当然、俺は戸惑った。

「俺がコンサル? たかだか月40万~50万だよ」
「問題無い。問題無い」
「そうなの?」
「ダメなお前が副業でそこそこ稼ぐようになれた。これが価値だから。だってさ、優秀で有能で行動力があって決断力があって継続力がある人が成功するのは当たり前だろ。でも、淳平はそもそも違うだろ。挫けながら、失敗しながら、堕落しながら、でも何度も立ち上がって、ここまで来たんだろ。それに多分だけど、この先、まだまだ稼げるようになると思うぞ」
「あっそうなの?」
「元々優秀な人達みたいにさ、成功ノウハウ使って一気に跳躍する事が出来なかった分、ほぼ全ての課題という課題に躓いているから、色々な人の悩みに答えられるんじゃないか? ファーガソン(黄金期のマンチェスターUの監督)だってサッカー選手時代はパッとしなかったけど監督としては凄かっただろ」
「あ~、そういうこと」
「それに、淳平のしゃべりは味がある――」

高山曰く、俺は俺が考えている以上に、しゃべりに味があり、相手の心に響くらしい。

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