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田舎のソンクラーン(タイ旧正月)

 2020年はタイの旧正月であるソンクラーンは中止となった。戦争などの事由以外でソンクラーンが政府によって停止されたのはこれが初めてなんだとか。2021年はどうなることかと思われたが、一応、休暇は実施されるようだ。ただ、ソンクラーンの代名詞でもある水かけ祭りは執筆時点で実施可能かどうかの判断が政府から出ていない。

 中国の春節やベトナムのテトのように、タイも旧正月がタイ人にとって最も大切な長期休暇になる。以前は1月1日はほとんど意味がないという感じで、年末年始は大みそかと元旦だけが休みという企業も普通にあった。

 そのため、ソンクラーンは中国と同じように民族大移動が始まる。たとえばボクの妻の故郷であるコラートは、通常時はバンコクから4時間くらいで帰れるが、ソンクラーン前の帰省ラッシュに巻き込まれると12時間かかることだってある。

 そこまでして、彼らは田舎でなにをしているのだろうか。ちょうど今年のソンクラーンまで1ヶ月を切ったので、過去のソンクラーンの様子を振り返ってみた。

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 タイ旧正月は毎年4月13日を元旦とし、15日まで3日間がその期間に当たる。昔は旧暦とか太陽暦とかなんだかわからないが、そういうものを使っていたのかと思うが、今は4月13日からの3日間で固定されている。

 これが1888年に今の4月1日が元旦となった。すでにこの時点でタイの正月から大きくズレたわけだが、さらに1940年に今の1月1日を新年に合わせたので、さらにタイの旧正月が対外的には意味のわからない日程になったというわけだ。

 ちなみにタイは仏歴を使う。2021年は2564年だ。ボクは1977年生まれで、仏歴では2520年とキリがいい。だから、仏歴もわかりやすい。タイではもちろん西暦も使われるけれども、田舎に行くとまったく通じないこともある。先のように2回、タイでは正月を変更しているので、仏歴で過去の文献を確認する場合は年度のズレに注意しなければならない。

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 ソンクラーンの水かけ祭りは基本的には4月13日と14日のみだ。15日は普通は行われない。ただ、盛り上がっている場所だと15日もやるし、12日の夕方から始める人もいる。また、パタヤやバンコクのプラプラデーンはソンクラーンが1週間遅い。

 水かけで有名なのはチェンマイ、あとはアユタヤなど。どちらも昔の都市であり、お堀や川など水場がたくさんあることが共通する。東北のコラート(ナコンラチャシマー県)も旧市街内外に貯水池があって、市内は水かけが盛り上がる。水の衛生面にかなり不安があるけれども。

 農村でも水かけはある。多くが旧来的な、年長者が若い人に水をかける、あるいはその逆の、儀式的なことをするようだが、村によっては道端で水をかけ合う。中には村の道を塞いで通行料を徴収するとんでもない悪ノリをする連中もいる。

 また、農村によってはちょっとしたイベントを開催することもある。このタイミングで全土に散っている村人が集まるので、学校や寺の敷地(田舎は寺院に学校があることが一般的)にテーブルを並べてパーティーのようなことをする。

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 妻の出身地の農村は寺院と学校が村の中心にあり、そこでパーティーもあるし、隣の貯水池ではイベントが開催される。ヤラセで問題になった日本のテレビ番組で取り上げられるお祭りシーンにも出てきそうな遊びが村の若者たちの間で行われ、村人が拍手喝采する。

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 これは水上ムエタイだ。足は使わず、パンチだけで相手を水に落とす。もちろん本気ではなくて、あくまでもお遊びの範疇に過ぎない。

 ソンクラーンはタイの真夏だ。この時期のこういう貯水池なんて風呂くらい温かくなっているので、なにが楽しいのだか、とボクは思ってしまう。でも、意外と参加するとおもしろかったりもするのだろう。

 在住日本人はソンクラーンの時期になると日本に一時帰国するか、遠くに旅行する。近隣諸国に出かける人も少なくない。一方でバンコクに残る人もいるわけで。そんな人はみな前日までに買い出しをして、できるだけ外に出ない努力をする。タイに来たばかりのころは水かけ祭りに参加するが、もういいや、という人が多いのだ。

 でも、ボクも子どもができて再び一緒に出かけるようになって思ったが、意外と水鉄砲をもって戦闘態勢で水かけに臨むとおもしろいんだ。今は粉が禁止になったイベントが多いが、20年くらい前は水かけだけじゃなくて粉もあって、水に溶いた白い粉(なにでできているんだろうか)を相手の顔に塗ったりもした。

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 妻の田舎の話に戻る。この貯水池が結構広いこともあって、ボートレースも行われる。タイは各地でボートレースが開催されたりと、手漕ぎのボートのイベントが多い。なにせ王室も専用の船を持っているくらいだし。

 ただ、普通に競走したのではおもしろくない。というわけで・・・・・・。

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 この村で開催されるボートレースのルールは漕ぐ人が目隠しをするということになっている。船頭が指示する方向に漕ぐのだが、結構距離もあるし、オールはひとつしかないので、なかなかまっすぐに進まない。

 田舎のソンクラーンは場所によって全然違うとは思うが、妻の田舎ではこのようにして3日間を過ごし、15日の朝や夜にまた出稼ぎ先に散っていくのである。

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