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タイ国際旅行フェア2020を見てきた

 タイは現在、空前の日本旅行ブームが続いている。2013年のタイ国際航空の札幌直行便就航で「さっぽろ雪まつり」がテレビなどで取り上げられるなどで大ブームになった。そこから今に至るまでずっと日本旅行が続いているのだ。

 そのため、タイの旅行博、そのほかのイベントで日本の観光局などが力を入れて日本誘致をPRしているので、これらのイベントは日本色が異様なまでに強くなっている。それが拍車をかけるように、さらにタイ人が日本を訪れる。

 以前はビザが必要だったので、多くの人にビザの取得方法を聞かれたものだ。ボクが初めて妻を連れて行ったのは婚前で、そのときの経験から前職ではタイ人の日本研修などの際には書類作成をしてあげたりした。そんなこともあって、日本の観光ビザの取得方法をよく質問された。

 しかし、タイ航空の札幌直行便が2012年の10月前後に就航してブームになると、日本政府が2013年7月からタイ人への短期査証(実質的な観光ビザ?)を免除し、約2週間ならビザなしで滞在できるようになった。そうして、タイ人からの質問はビザ取得方法からどの都市に行けばいいのかという質問に変わった。東京、大阪のどっちがいいのかといった、パッケージツアーの大まかなコース選択についての質問だった。

 それが最近は「上野のナントカ通り辺りならどんな居酒屋がいいのか」とか、もうマニアックすぎて知るわけのない質問になってきた。好きな人は個人旅行で何度も何度も日本に行くのだ。ボクが初めてタイに来たのが1998年で、そのころは「タイに行った」と言うと高確率で「台湾に行ったの?」と返ってくるほどタイ旅行は一般的ではなかった。それが2000年代初頭から徐々に認知され、リピーターはガイドブックには載っていない、自分だけのタイを追い求め始めた。それと同じことを、今タイ人たちは日本でやっている。

 こうなると、某国の人たちよりもおとなしくて優良な顧客であるタイ人をもっと獲得したいホテルや旅行業者、小売店が増えてくる。そんな業者たちがこぞってやってくるのが「タイ国際旅行フェア」だ。英語の頭文字を取って「TITF」とも呼ばれる。2020年最初のTITFは1月16日から19日の4日間開催で、例年より少し早めとなった。今年は中国の春節(旧正月)が早いので、それに合わせたのかもしれない。

 2004年から年2回ほど、前半は2月ごろ、後半は8月ごろにクイーンシリキットで開催された。しかし、去年から向こう4年間くらい、そこは建て替えで開催できなくなり、前回の8月から「インパクトアリーナ・ムアントンタニー」に会場を移している。例年8月はあまり客があまり来ないため、多くの業者が2月開催を本番と見ている。ちょうどタイも3月から5月は夏休みに当たる時期なので、行き先を旅行博に求める人が少なくない。

 とはいえ、第26回になる今回は場所を移しての本番開催だったので、誰もが来場者数や客層など、未知数な部分を抱えながらの手探り出展になったと思う。開催中、開催後に出展者に話を聞いても、それぞれがTITFに違った印象を持っていたほどだ。

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 出展者は旅行関係業者がほとんどだが、タイ人顧客を獲得したい小売業者も来ていた。そのほかには各国の観光局や観光協会、航空会社などが大きなブースを出している。

 中でも日本のブースはとにかく大きい。日本政府観光局が多くのブースを押さえ、日本企業がTITF事務所ではなく、観光局に申し込んで出展する。これはほかの国の観光局には見られない傾向で、日本政府の注目度が伺え、TITFがほぼ日本旅行の博覧会になっているようにさえ見えた。また、日本ブースに頼らずに出展する日本企業も数社見られた。あくまでも数社だが。

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 外国の企業はどこもちゃんとタイ語のパンフレットやチラシ、ポスターも用意しているし、日系は日本語がベラベラのタイ人通訳を用意して、「本気」を感じさせる出展者ばかりだった。キャラクターの着ぐるみを用意したり、コスプレで耳目を惹こうという企業もあったりと、みんなあれやこれやでタイ人客に振り向いてもらおうとかんばっていた。

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 あとはこういったタイの旅行関係の企業がブースを出していた。海外旅行のパッケージだけでなく、個人旅行向けの商品も多かった。

 また、タイ系ではタイ国内の宿泊施設なども多数出展していて、国内旅行をしたいタイ人客を狙っていた。こういった国内商品のブースにも活気はあった。日本以外の国外商品と比較すれば、むしろタイ国内商品の方にタイ人は注目しているように見えた。

 あと、タイ系には海外で使えるWi-Fiのルーターレンタル、SIMカードの販売も少なくなかった。タイは高齢者もスマートフォン所有は当たり前である。日本のようにフィーチャーフォンや、いわゆるガラケーにしがみつく高齢者がほとんどいない印象だ。各ブースでは粗品プレゼントもしていて、その際にQRコードで自社サイトのフォローなどをしてもらう条件になるのだが、高齢者でも問題なくコード読み取りをしていた。

 だから、海外旅行でも通信環境の確保は重要な要素になっている。そのため、Wi-Fiルーターの貸し出しブースなどは結構盛況だった。特に日本向けという印象を受けている。というのは、日本は東南アジア圏から見ると恐ろしくWi-Fiなどの環境が悪い。電波がよくないのではなく、日本の携帯キャリアを契約していない人、すなわち外国人に対して非常に排他的なのだ。

 東京は23区の各区が数年前から無料Wi-Fiを飛ばすようになっているが、それも大きな駅周辺だけしかない。こういった、日本ではWi-Fi難民になることをみんな知っているので、特に日本行きではWi-Fiについて準備をしておかなければならないのだ。

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 航空会社や格安航空会社も数社出展していた。「ピーチ」も相変わらず人気で、タイ人の沖縄旅行もかなり増えているらしい。

 とはいえ、航空会社のブースにはそれほど客はいなかったように見受けられる。日本企業はタイの法令で旅行商品を売れないが、タイ企業で旅行関連の資格があればTITF会場内でも商品販売が可能だ。だから、そういった企業はTITF特別価格を用意するのだが、格安航空会社の場合はそもそも安いからわざわざここで買わなくても、というのもあったかもしれない。

 それから、活気があったのは日本ブース内くらいで、ほかの場所に出展していた企業はあまり客が来なかったと嘆く場合もあった。このあたりの明暗を分けたのは会場内の立地だったと思う。これはほかの展示会にも言えることで、コネクションがものを言う世界だなと感じた。

 来場者も必ずしも旅行に貪欲ではなくて、どうも会期中に韓国のアイドル歌手が隣のホールでコンサートを開催していたようで、そのファンたちがきたのかもしれないという推測もあった。だから、奥よりも入り口に近いこと、あるいは入り口の目の前から続く通路だけが活気があったとも言われる。

 とはいえ、大盛況の日本ブース内にいながらもTITFの集客力に疑問を抱く企業もあって、出展はこれが最後と言い切ったり、今回の結果では次回出展の見合わせも検討するというところもあった。扱う商品、通路の場所、隣のブース内容など、要因は様々だ。結局、新会場のために誰もがなんらデータを持ち合わせていなく、印象も結果も様々なものになった。

 要するに商売は難しいということで。

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