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タイで金への投資は儲かるのか?【前編】

 世界情勢の諸々で金地金の相場が高くなっているそうだ。有事の際には金相場が上がるのはセオリーで、「金行」と呼ばれる金製品を売買する店が多いタイも当然ながら相場が高騰している。かつてタイ・バーツ、そしてタイの銀行の信頼性が低かったことから、資産を金製品に換える人が少なくなかった。しかし、2000年代に入って以降は若い世代が金製品を持つことはほとんどなくなっている。タイ・バーツも安定しているし、銀行の破綻の不安も小さいので、資産はタイ・バーツで保有する人が多数だ。

 いずれにしても、タイでも金相場が高騰している現在、タイで金で資産運用をしたら儲かるのだろうか。簡単にタイの「金」について調べてみた。

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 タイで金行と言えばバンコクの中華街ヤワラーが主要地になる。タイの金行ビジネスの発祥はこのヤワラーだし、元々金の取引を好んでいたのも中華系だったからだ。

タイの金相場はこう動いていた

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 まず、タイの金相場はどれくらい推移しているのか確認してみよう。タイの金相場は後述するが、世界情勢と連動している。金の価格変動というのは下記のような要因があるようで、それによって市場がつける値があり、タイの金市場もそれに従う。

上昇要因
・需要拡大、供給縮小
・ドル安
・金利安
・情勢リスクの懸念(戦争など)
・インフレ上昇
下降要因
・需要縮小、供給拡大
・ドル高
・金利高
・情勢リスクの安定(戦争など)
・インフレ沈静化

 タイには金行の業者組合がある。その「金行業者協会」のサイトで過去の値動きが閲覧可能だ。ここでは掲載開始の2006年5月から現在に至るまでのうち、わかりやすく各年の8月の平均相場を抽出した。この価格は後述する「バーツ」という重さの単価になる。

■金地金の相場(左がBUY、右がSELL)
2006年:11,198.08THB/11,298.08THB
2007年:10,684.62THB/10,784.62THB
2008年:13,532.00THB/13,632.00THB
2009年:15,224.00THB/15,324.00THB
2010年:18,210.00THB/18,310.00THB
2011年:24,892.31THB/24,992.31THB
2012年:24,154.00THB/24,254.00THB
2013年:20,150.00THB/20,250.00THB
2014年:19,562.00THB/19,662.00THB
2015年:18,670.00THB/18,770.00THB
2016年:21,950.00THB/22,050.00THB
2017年:20,096.30THB/20,196.30THB
2018年:18,770.37THB/18,870.37THB
2019年:21,724.07THB/21,824.07THB
2020年:28,978.85THB/29,078.85THB
■金製品(加工品)の相場(左がBUY、右がSELL、カッコ内が加工賃)
2006年:11,037.65THB/11,698.08THB(660.43THB)
2007年:10,531.54THB/11,184.62THB(653.08THB)
2008年:13,336.56THB/14,032.00THB(695.44THB)
2009年:15,004.16THB/15,724.00THB(719.84THB)
2010年:17,946.41THB/18,710.00THB(763.59THB)
2011年:24,530.63THB/25,392.31THB(861.68THB)
2012年:23,803.02THB/24,654.00THB(850.98THB)
2013年:19,857.85THB/20,650.00THB(792.15THB)
2014年:19,278.67THB/20,062.00THB(783.33THB)
2015年:18,399.39THB/19,170.00THB(770.61THB)
2016年:21,555.19THB/22,550.00THB(994.81THB)
2017年:19,734.39THB/20,696.30THB(961.91THB)
2018年:18,432.88THB/19,370.37THB(937.49THB)
2019年:21,333.49THB/22,324.07THB(990.59THB)
2020年:28,456.49THB/29,578.85THB(1,122.36THB)

 わかりやすところで金地金を見るといい。加工品はタイではネックレスやブレスレットなどになる。また、置物などもあるし、地金に絵や家族の写真をプリント加工するものもある。

 金地金の価格は、ボクの記憶が正しければ、2000年代初頭は7000バーツくらいだった。その後徐々に上がってきて、2015年くらいに一度落ち着いたが、先月、2006年から現在の中でも最高値になっている。

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 タイでは金の重さの単位を「バーツ」で表している。タイの貨幣と同じ呼び方なのでややこしい。金の方は漢字で「(しゅ)」と書く。中国の古い重さの単位で、中国では1両が37.3g(諸説あり)=24銖、1銖あたり1.554gだった。タイの1バーツは大まかに15.2gなので、まさに中国の重さの単位を使っている。おそらく、タイで金取引が始まったときに使った秤が中国の物だったからではないだろうか。

 注意したいのは、金地金と加工品では1バーツの重さは違う。それは下記を参照に。

■製品1バーツあたりのグラム換算
・金地金(トーンカムテーン):15.244g
・加工品(トーンループパパン):15.160g

 また、上記の金相場は23Kのものだ。これは純度を表す単位で、23カラット、23金と日本では呼ばれる。製品に含まれる金の純度は96.5%だ。タイでは一部の金行で純金99.99%(24K)の金地金も扱うが、実際には軟らかすぎて好まれず、銀や銅と混ぜて23Kの延べ板やアクセサリーにしている。

そもそもタイの金製品を日本に持ち帰ることは可能?

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 タイ語で金地金は「トーンカムテーン(ทองคําแท่ง)」、ネックレスなどのアクセサリー(加工品)は「トーンループパパン(ทองรูปพรรณ)」と呼ばれる。

 資産運用をする人に向いているのが金地金だ。金地金は1g以下の小さなものから、キロ単位の大きなものまでたくさんの種類がある。ただ、前述の通り、タイでは基本的に23Kが主流なので、純金の地金も買えるには買えるが、取扱店は限られる。

 最も気になるのは、タイで買った金製品を国外に持ち出せるのか否かだろう。基本的には持ち出せると考えていい。アクセサリーとして身につけている程度であれば特に申告は不要だ。ただ、売買目的(金業者あるいは個人売買)や量が多い場合は申告が必要とされる。ただ、いずれにしても輸出税はかからないようだ。

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 逆にタイに持ち込む場合が規制品目に入っているため、許可申請が必要とされる。それももちろん個人で身につける程度は大丈夫だとは思う。売買の場合、タイは免税措置があるので、その辺りの制度の兼ね合いなのでしょう。とはいっても、金行業者協会加盟企業でないとその免税は受けられないので、輸出入の際は事前に税関などに問い合わせるべき。

 日本に金製品を持ち込む場合、純度90%以上で100kgを超える金地金、もしくはほかの物品と合わせて免税範囲(20万円相当)を超える金(純度や重量は問わず)を携帯して持ち込む際は税関に申告が必要だ。税金の安い国から金地金を密輸するケースが相次いでいるので、日本への持ち込みは厳しい可能性が高い。

 世界的に金相場は同じなので、結局金製品で利益を出せるか否かは、購入する国の税金の安さが、日本の輸入関税以上であるかどうかも重要になる。金製品は安く買うことが困難だからだ。タイも値引きできるとしたら、あくまでも加工費だけだ。それでも、200~300バーツほど値引いてもらえればラッキーというところだろう。

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