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慣れるとおいしい孵化直前の卵【カンボジア】

 カンボジアのシェムリアップで孵化直前の卵の料理を食べた。話には聞いていたので、どんな味なのか食べてみたかった。でも、やっぱりビジュアル的にはなかなかきつかったので、ふたつ頼んでみたものの、結果ひとつしか食べられなかった。

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 カンボジア、そしてベトナムは食べるものが結構アグレッシブな印象を受ける。昆虫のほか、爬虫類も食べるし、犬を食べる地域もあるし。さすがに東南アジアで猫を食べる話は聞かないが、中国以外で食べる地域があるのだろうか。

 その点で言うと、わりとタイはおとなしい方だなと思う。昆虫食も日常的に、特に東北の人はよく食べるけれど、それでも種類は数えられる程度しかない。調理もほとんどが塩を振って素揚げしているだけだ。

 この孵化直前の卵はどうやら鶏卵ではなくて、アヒルの卵なのだとか。ただ、中国の孵化直前系料理だと、地域によっては鶏卵でも食べるらしい。また、ベトナムはウズラの卵でも作るのだとか。

 アヒルの卵は基本的には加工して食べるというイメージがボクの中にある。ピータンがその代表で、タイだと塩漬けのカイ・ケムもよく見かける。ピータンはガパオライスに入れている店もあって、意外とおいしい。

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 この孵化直前卵をボクはカンボジアで食べたが、実際にはフィリピンやベトナム、中国でも日常的に食べるみたいで、アジア圏では決して珍しいものではないとか。日本とタイではまず見かけないから、かなり特殊な料理のように見えるけれども。

 カンボジアでは「ポンティアコーン」と呼ばれる。なんか、幽霊みたいな名前だ。インドネシアの古典幽霊にポンティアナックというのがいる。タイのナーング・タニーのアグレッシブなバージョンというか。

 ベトナムでは孵化直前の卵を「ホビロン」と呼ぶようで。ベトナム語では「hột vịt lộn」と書くらしく、またチュンビロン(trứng vịt lộn)とも呼ばれるようだ。

 フィリピンでは「バロット」という名称。フィリピンはより日常的に食べるものらしく、孵化の段階で呼び分けているのだとか。初期、中期、後期みたいな感じで分けているらしいが、バロットがどの段階なのかはボクは知らない。意外なのは、初期段階が最も臭みがあるらしい。

 中国では毛蛋と書いて「マオタン」と読むらしく。漢字はピータンの皮蛋と対になるようなネーミングだ。ただ、エリアによって呼び方は様々らしい。その中には死胎蛋と書くところもあるようだ。一発でなにかわかるからいいけれど、食欲が失せる字面である。

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 シェムリアップの屋台で注文すると、このような感じで卵が出てきた。ゆで卵を置く台のような器も一緒に。昭和の時代なんかは普通のゆで卵がこんな台に載って出てくることが当たり前だった気がするが、今はどうなんだろう。

 ちなみに、後述するが、この台がついてくるのはここでは大きな意味がある。

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 こういったライムや香草もついてくる。タイの、特にイサーン料理ならこういうつけ合わせは珍しくないけれども、初めての食べものにこういうのがついてくると、これらと食べなければいけないほど臭いのでしょうか、と疑いたくなる。

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 ここはかなりうろ覚え。ベトナムで言うムオイ・ティエウ・チャンという、岩塩、コショウ、完熟ライムのタレを使った気がする。でも、実食の体験そのものにインパクトがありすぎて、細かいところまで憶えていない。

 まあ、なにもつけなかったってことはないので、たぶんこの塩コショウ+ライムだったとは思う。

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 さて、先述の台に載せる理由がこれだ。卵と一緒にスプーンも来るので、それでこのように先端を割る。割った卵を横にできないので、この置く台が必要になるのだ。

 食べ方は簡単で、先のタレを投入し、先端を割ったスプーンですくって食べる。それだけ。孵化の状態や地域によって食べ方が違うらしい。殻から割られた状態(中身が皿に載せられている状態)で供されることもあるし、そのまますくって食べる、中身を殻の中でかき混ぜてから食べるなどがある。シェムリアップの店ではそのまますくって食べた。

 実際に食べてみる。これほど口に入れるのに勇気が必要だった食べものってほかにあるだろうか。思い出せる限りでは、クサヤくらいかな。なにせ、わりと孵化の段階が進んでいたので、形は結構できあがっていたからだ。スプーンで中身を少し持ち上げると、もう小鳥状態。

 なんとか口に入れてみたら、味はよかった。濃厚なゆで卵と、軽めに茹でた鶏肉の間くらいの味。ただ、多少骨が気になる。骨も完全にできあがっていないので柔らかく、噛んでそのまま飲み込めるくらいだけれども。

 若干アンモニア臭というか硫黄の臭いがするような気がした。ゆで卵もよく考えれば硫黄臭があるので、極論、同じではあるけれど、やっぱり見た目も相まって、臭いが気になったかな。だから、ふたつ頼んだけれども、ひとつしか食べられなかった。

 ちなみに、ふたつ頼んだのは理由があって、トゥクトゥクの運転手に連れて行ってもらい、そのまま一緒に食事をしたからだ。彼が、カンボジア人はふたつ食べるのが普通、とか言うから。だから、実際は4つ頼んでふたつずつのつもりだったけれど、食べられなくて、トゥクトゥクの運転手が3つ食べた。

 一度は食べてみることをおすすめしたい。まずくはない。鮮度が悪いとサルモネラ菌とかが怖いみたいだけれども、逆に新鮮で管理もしっかりしたものはおいしいという。まあ、ボクはもう食べないかな。

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