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 以前会社員をしていたときに、日本の大手家電メーカー数社の炊飯器とかに使われるモノクロの液晶を担当していた。開発とかは本社がやって、ボクはあくまでも客先担当をしていただけだけども。カラーが増えている中でモノクロのメーカーは減少しつつあって、日本の家電メーカーが採用できるレベルの液晶メーカーは上海近辺に数社って感じだった。

 そんなことがきっかけで上海出張もよくあって、何度行ったことか。特にハンドキャリーが当時はなんの手続きもなくできた時代で、上海の空港は10回以上は行っている。

 そんな中で何回かはまともな出張もあった。工場視察だとか、打ち合わせだとか。中国の場合は基本的に現地の方が日本語できるからありがたい。それに看板も漢字だから、なんとなくわかるので、外国としての難易度もそれほど高くないし。

 そんな出張で体験した飲み会は地獄だった。相手からしたら大歓迎の接待だったのだと思うけども、もう二度と飲みたくないと思ったくらいで。

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 中国国内で食べる中華料理を、日系企業の駐在員はみな嫌がる傾向にある。おいしくないと言うのだけども、日本人だけの食事会で連れていかれる居酒屋なんかバンコクから来た身分からすれば全然おいしくなくて、中華の方がいいとボクは思う。

 だから、なかなか上海出張で中華を食べる機会がなかったのだけども、ついにやってきたのがこのときだった。これもやはり液晶メーカーの工場視察で行ったときで、わりと早くから飲み会が始まった。17時とかそれくらいの、外がまだ明るい時間帯だ。

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 最初に気がついていればよかった。というのは、本社から来た開発部門の人と、当時のタイ支社長のふたりが朝から体調が悪いことをアピールしていた。そんな風に見えなかったのでおかしいなとは思っていたが、実は飲み会をうまいことかわすための口実だった。

 その日はむしろボクの方が体調が悪かった。前夜、調子に乗って新天地で散在して二日酔いだったからだ。でも、夕方には体調も回復して、なによりも飲むことが好きなので、喜んで参加したわけだ。

 普通の中華料理店だけども、さすが上海というか、恐ろしく店内が広い。屋外ではなく、普通の建物の中なのに店の中心に何百レベルの席があって、その周りをたくさんの個室が囲んでいる。トイレなんかもう遠くて、ドアが豆粒くらいに見えるほど。

 そして、飲み会が始まった。現地の社長が赤ワイン、社員たちがウィスキーとパイチュー(白酒と書く中国のクセとアルコール度数の強い酒)を持ち寄り、最初の乾杯には大量のビール瓶が並んだ。

 あとで知ったが、乾杯は中国のカンペーになると一気飲みを指す。しかも、飲み会では親しくなりたい人を指名して、一緒に一気飲み。これを避けるために上司ふたりは体調悪いふりをして、指名されると「高田が受けますので」って。相手は男だけでも6人はいたかな。それを全部受けて飲んだ。

 しかも、みんな飲んでるアルコールが違うし。赤ワインだけは全アルコールの中でボクは苦手。ただでさえきつくて大変なのに、そこにパイチューも度数と匂いがきつい。後半はふらふらになりながら、トイレに行こうと思っても、トイレが遠い遠い。

 やっとトイレにたどり着いたら、そのまま比喩ではなくマーライオン並みに液体が口から飛び出たね。それで、このままここで立てこもっていようと思ったら、わざわざ向こうのエンジニアさんが通訳の人を引き連れて、早く早くって。みんなカンペー待ちですよ、って。

 その後、帰るって言っているのに、日本人だけでカラオケに連れていかれた。接待だから女の子を選べって言うので、適当に選んだ。顔も上げられないくらい酔っぱらっているので、指だけ挙げて指し、顔も見ないで選んだ。そうしたら絶妙に日本語のうまい女の子で、なんでそんなに酔っているんだとか、名前はなんだとか、いろいろ質問してくる。地獄だった。

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 ちなみにこれはたぶん飲み会前の画像。リアルドラえもんだな。当然翌日は二日酔い。しかも、その前の日の新天地のひとり飲みで出産費用を使い込んでいるので、本当に飛行機が落ちてくれないかと思って帰路についていた。

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