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スポーツカーのタイ国内正規販売

 先日パタヤに行った際、初めてタイ国内でフォード・マスタングを見かけた。日本ではフォードは撤退しているが、ピックアップトラックの販売がそれなりにあるからか、タイではまだフォードの正規ディーラーも残っている。そして、最近になって、アメリカン・マッスルカーの代表格でもあるマスタングの正規販売が始まった。そのことは知っていたが、実際に見かけたのは初めてだった。

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 パタヤは外国人が多いので、レンタカーやレンタルバイクのラインナップがほかの地域とは違う気がする。ジープとか、バイクならハーレーなどリゾートに似合う、たいではややラグジュアリーカー寄りの車種が多いといつも思っていた。とはいえ、今はこういう状況なので、外国人もいないからそういった車を見かけなかったが、ホテルそばでマスタングが走ってくるのを見て興奮した。

 レンタカーなのか個人所有者かはわからないが、赤ナンバーなので、このマスタングは登記されたばかりの車両だ。パタヤだけでなく、タイは全体的に観光客もいないし、失業者も多いが、金があるところにはあるのだな。

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 タイは2000年代初頭まで車の販売はピックアップトラックが多かった。今でこそ誰でもローンで車を買えるようになっているが、ほんの20年前は所得水準も低く、誰もが車を買えるわけではなかった。だから、セダンなどを買うよりは、実用性の高いピックアップを買っていたのだ。

 それにタイは車の税金が高い。実際には輸入関税はそれほど高い税率ではなくて、物品税など諸々の計算式の関係で、結果的に販売価格が高くなる。この税率はピックアップは低くて、趣味の世界になるスポーツカーなどは税率が高い。為替レートも関係してくるが、日本の販売価格の何倍もするので、かつて物価が低かった時代は特にスポーツカーの値段の高さは異常だった。

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 若いころにアメリカン・ピックアップが大流行していたので、アメ車への思い入れというか憧れがボクは強い。しかし、タイの場合はフルサイズ・ピックアップやフルサイズ・バンは道が細いし、税金が高いしで、ほとんど見かけない。シボレーも撤退になったし、全然アメ車が注目されないのだ。

 一方、ベトナムを始め、インドシナはわりとアメ車をよく見かける。タイのようにベンツやBMWなどの欧州車も少なくないが、中国や韓国車のほかにアメ車も見かけた。まあ、道路が右側通行というのもあるのだろうが。

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 2017年の時点でこのようにホーチミンではカマロもあった。うしろにはマスタングもあるし、ベトナムはアメリカン・マッスルも人気があるようだった。

 かつてのタイではスポーツカーはまず見かけなかった。富裕層の若者がフェラーリ、ポルシェ、ランボルギーニを乗り回すことはあったが、アメリカン・マッスルは当然ながら、ジャパニーズ・スポーツカーもかなり少なかった。たまに個人輸入でスープラなどを乗っているのを見たことがあるが、それも数えるほど。

 しかし、タイも豊かになり、かつ世界中の情報があっという間に手に入るようになったことで、その状況も変わってきた。所得も上がり、物欲も変わってきたのだろう。それを見越してか、2018年3月ごろに日産がGTRをタイで正規販売し始めている

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 日産のタイのサイト冒頭は上記のような画像が貼られている(参照)。見ると結構な値段設定で、1350万バーツ~だ。今のレートだとだいたい4590万円~と見ていい。日本ならフェラーリも買えてしまいそうな設定だ。

 ちなみに日本におけるGTRの価格は下記の設定になっている(参照)。

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 日本だと一番下のグレード(価格帯)はピュアエディションだったはず。タイはレース向けのニスモバージョンなどがないこともあり、グレードの設定が違うようなのでダイレクトに比較することができないが、一応、日本では1083万円~となっている。

 タイはほぼ5000万円なので、概ね日本の5倍くらいの値段ということになる。GTRは欧米でも大人気で、フェラーリなどと比べて安くて丈夫で速いという魅力があるからだ。しかし、タイのこの価格だと日本や欧米であっても普通の人はまず無理をしても手が出ない。まあ、その分、タイはフェラーリなども高いので、同じことなんだけれども。

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 上記はマスタングの公式ページだ(参照)。GTRの発売を見たからなのか、フォードも同じ2018年の10月ごろにマスタングを正規販売し始めた2.3リッターのエンジンだと約370万バーツ、5リッターのV8エンジンが490万バーツという設定だ。高いグレードを選択してもGTRの半額で済む。

 求めるものによって違うけれども、価格だけで見ればマスタングがGTRよりも俄然いい。しかし、タイではアメリカン・マッスルカーは不人気なので、難しいところか。

 というか、スポーツカーやマッスルカーはあまりタイでは流行らないのかもしれない。ヨーロピアン・マッスルカーとも言えるBMWのM5、メルセデスAMGのE63もタイ価格は1200万バーツはするので、値段的に日本よりも高いし、そもそも注目もされていない。

 どうしても高すぎるので、タイの所得レベルとかけ離れすぎていて見向きもされない。ただ、そんな中ではボクはアウディはいいなと思う。

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 このプライスリスト(参照)の真ん中の車種、RS4アヴァント・クアトロが好きだ。本当ならRS6がいいのだが、タイのラインナップにはない。タイの路面や交通状況を考えると、RS6はオーバースペック観がある。というか、先のM5やE63に匹敵する馬力なので、アウディは注目されないのをわかっているのではないか。

 しかし、RS4なら公道での性能はオーバー気味だが、上記のRS Q8やRS6よりは抑え気味だし、スポーツカーの性能を持ちつつワゴンスタイルなので、ファミリーユースにもできそう。これが日本だとこうなっている(参照)。

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 タイではRS4の値段設定は590万バーツで出ている。日本円で2000万円とちょっと。日本販売価格は上記の画像では1218万円~となっている。

 ここで「あれ?」と思うのが、日本ではRS4のスタート価格がGTRより高いのに、タイ価格はずっと安い。RS4の外観がスポーツカーではなくワゴンスタイルだから税率が低い・・・・・・からなのだろうか。

 日本の車名に「クアトロ」がないので、値段もその点で単純比較できない可能性もある。クアトロは『センターデフを備えない、多板クラッチで制御する新世代システム』だそうで、結構高そうなシステムだからだ。

 また、RS4のタイ価格はスタート価格ではなく、おすすめ価格になっているので、オプションが乗っている価格の可能性もある。だとすれば、なおさらアウディの安さが際立っていて、スポーツカーならアウディもひとつの選択肢になりそうだ。

 とはいえ、アウディのスポーツチューンのジャンルとなる「RS」シリーズは、タイのサイトには車両情報が掲載されていない。上記のタイのプライス画像は、タイ・アウディの公式サイト内にあるプライスのページにあったものだ。しかも、そのプライスリストにも掲載されていなくて、スクロールしないと気がつかない位置にあった。

 タイはこのようにどのメーカーも基本的にスポーツカーをあまり推していない。路面も悪いし、高級車は盗難の怖れもあるから、セキュリティーがしっかりした車庫を用意しないといけないし、結局のところ、そもそも庶民が乗れる車ではないのだ。

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