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たこ焼きは小さいに限る

 大阪でたこ焼きの元祖という店に行った。

 タイには2000年代初頭にはすでにたこ焼きを売る店はあった。しかし、そのころはタコが一般的には食されていなかったから市場にはあまり出回ってなくて、イカやカニカマが代用されていた。実際、今でもタコが入っていないたこ焼きをよく見かける。

 和食ブームが始まってからはタコの入ったたこ焼きもタイで見るようになったものの、居酒屋などの大半が冷凍ものだし、屋台も日本のものとはレベルが違いすぎた。銀だこがやってきて本格的なものが食べられるようになったものの、どこにでもあるわけではないので、ボクのような郊外暮らしには縁がない。

 なかなかいいものに出会えないので、ときどきたこ焼きをどうしても食べたくて仕方がないときがある。今回大阪に行く機会があったので、またとないチャンスだ。よりおいしい店がいいと思い、たこ焼きの元祖に行くことにした。

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 たこ焼きの元祖という店は「会津屋」という。初代店主が福島県出身だからだそうで。元はラヂオ焼きの屋台から始まった。昭和8年のことだ。そして、明石焼きをヒントに昭和10年にたこ焼きを開発した。

 ここのたこ焼きの最も大きな特徴は、出汁が入っていることだ。小麦粉を出汁で溶いているので、ソースをかける必要がない。その点が大きな特徴だと思う。

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 ボクがこの店を知ったのは、マンガ「美味しんぼ」のあるエピソードからだ。日本の郷土料理対決シリーズの中の大阪編の頭の方でこの店が出てくる。これをたまたま大阪に行く1ヶ月くらい前に読んでいて、滞在中にふと思い出した。さすがに名前まで出てこなかったが、ネットで検索したら一発で出てきた。

 今現在は3代目になっているので、だいぶ経営も手を広げているらしい。冷凍の通販もあるようだし、ラヂオ焼きも一時期なかったらしいが復活させたようだ。なにより支店が複数あるので、本店まで行かなくてもいい。ボクの場合はなんば店に行った。イベント会場のすぐ近くだったからだ。

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 値段もリーズナブルだ。元祖たこ焼きは12個で550円となる。ほかにもねぎ入りやチーズ入り、それから明石焼きとラヂオ焼きもあった。

 どれを頼んでいいかわからない人には3種盛り、4種盛りもある。一気に多数を楽しめるので、初めての人にはちょうどいい。あとはアルコールメニューとセットになったものもある。タコ焼きにアルコールは欠かせない。値段設定を見るとかなり得になるので、ビールを飲みながらがいいという人に断然おすすめだ。

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 これは4種盛りだ。右上から反時計回りに元祖たこ焼き、たこチーズ、ねぎ入りたこ焼き、元祖ラヂオ焼きとなる。御覧のようにソースは使わない。頼めばあるようだけれど、実際、ソースなしでも十分においしかった。

 なによりうれしいのは球が小さいことだ。かなり小さいので、グラム単価から見ると実際にはそんなに安くないと感じる人もいるかもしれない。でも、ボクはいわゆるジャンボサイズのたこ焼きが好きではない。

 子どものころはたこ焼きと言えばだいたいこのサイズだった。それが小学校高学年のころか、もうちょっとあとかな。そのころから屋台などのたこ焼き店にジャンボサイズが登場する。その時点ですでにジャンボをおいしく焼ける店なんか皆無だったのに、なぜかどんどんと広まって、いつの間にかたこ焼きのサイズはジャンボが主流になってしまった。

 小さい方が主流だったころは300円が一般的だった気がするが、ジャンボは500円という設定だった。これを見ると、粉ものなのでジャンボという大きさに客を惑わせ、値上げもすんなり受け入れさせるためだったのかな。

 とにかく、ジャンボでうまい店に出会ったことがない。サイズ的には昔ながらの小さいものでないと本当においしいたこ焼きはできないと思う。だから、ボクはこの会津屋のサイズは大賛成だ。

 ここのたこ焼き、タイに来ないかな。出汁が入っているので、冷めてもおいしい。熱いものが苦手な人がムチャクチャ多いタイにおいて、そんな点もセールスポイントになると思う。

 懸念材料は薄味なのでタイ人にわかるかなってところか。あとは甘い味つけも好むので、多少オリジナルからアレンジする必要があるかもしれないこと。一方で、オリジナルの味をいじると反発するタイ人もいることか。

 いずれにせよ、タイでもヒットすると思う。というか、ボクが毎日でも食べたい。

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