見出し画像

ミャンマーの逆行ぶりがすごいと思う

 タイとミャンマーはこの時代においても政治的に不安定で、将来的に長く安心して暮らすには厳しいかもしれないと思えてしまう。トップが変わるとすべてが覆されるので、先が見えないというか。

 タイも現在の不安定な状態は2006年から続いているので、近代のゴタゴタした中ではわりと長引いている方だ。とはいえ、それ以前70年代、あるいは戦後からずっと似たような状態で、なにか問題があればクーデターが起きたり、市民と政府軍の衝突が繰り返されてきたわけで。

 それでもタイはこの政情不安が徐々に形を変えてきてはいる。いいか悪いかは何十年も先にならないと答えは出ないだろうが、今や若者たちが王室にまで噛みつき始めているし。

 しかし、ミャンマーのこの前のクーデターから現在に至るまでの流れは、なんというか、タイのような進化ではなくて、思いっきり退化しているイメージだ。ミャンマーが急激に90年代とか2000年代初頭に戻った気がする。

画像1

 インラックさんが首相だった時代だから、なんだかんだもう8年くらい前になるのかな。そのころに日本企業、あるいは日本人ビジネスマンがこぞってミャンマーを目指していた時期があった。タイからもたくさんの日本人がミャンマーにビジネスチャンスを求めて動いていた。

 ところが、1年もしないにうちにその熱が冷めたような印象だったな。それ以前もタイ・プラスワンとしてベトナムやカンボジア、インドネシアなどに企業が進出しようとしていたけれど、結局タイが一番って感じでなかなかタイの次の候補地が現れなかった。タイ政府が経済回廊の整備なども行うからということでミャンマーが急激に注目されたのに、どうもミャンマー側がそのブームに対応できる器がなかったのかな。

 まあ、それでもミャンマーはだいぶ行きやすい国になった。2018年から観光ビザも免除になったので、観光は楽になったと思う。以前の状況を知っている分、よりそう思う。

画像2

 ボクは2回ほどミャンマーに行ったことがある。首都のネピドーと最南端の町コータウンだ。ネピドーのときはビザが必要で、ミャンマー大使館にビザを取りに行った。大行列でとにかく面倒だった記憶がある。しかもネピドーはなにもない町で、なんも楽しいことはなかった。

 コータウンはタイのラノーン県から船で渡ったので、特別入国許可の扱いだったのかと思う。日帰りでコータウンから出られない条件で入国が許される。これはほかの国境の町を陸路で入るとだいたいそんな措置らしく。

画像3

 2000年初頭まではビザはもちろんのこと、入国時に外国人専用の通貨を両替しなければならない条件だったはず。最低でも100米ドルとか。市内ではミャンマー人が受け取ってくれず、結果、紙くずを買わされたのと同じで、別途、ミャンマーの通貨を両替をする必要があるという問題があった。そんな感じなので、行きたいと全然思わせないすごさがあった。

 軍政ということで、ミャンマー国外に住むミャンマー人の中には政治的なトラブルを抱えていて、国外に逃亡するしかない人も以前は結構いた。反政府デモには堂々と水平射撃をするし、外国人ジャーナリストの死亡例も少なくない。日本人もわりと最近のデモで撃たれているくらいで。

 今はもう聞かないけれど、2000年代の頭は国境付近でタイ軍とミャンマー軍の銃撃戦が起こったりもしていたくらいだ。1999年くらいにはバンコクのミャンマー大使館で人質を取った立てこもり事件も起こっている。ミャンマーの反政府派のテロといわれ、日本人も人質になっていた人がいるはず。最終的にはヘリを要求され、そのままあっさりとミャンマーに逃げられた。

 ただ、タイ政府が「逃がした」というのが本当のところらしい。いろいろな事情があるのでしょうが、ミャンマーというのはかつてはそんな危ない国という印象の方がボクには強かった。

画像4

画像5

 しかし、実際にミャンマーに行ってみると、言葉がわらかないのでどこまで本音なのかはわからないにしても、ミャンマー人は基本温厚で好感が持てる。タイ人よりもよほど微笑ましい民族なのではないかと思う。

 なにもないネピドーも、わざわざ首都を移転させているにもかかわらず、国民があまりついてきていない感も、ミャンマー人はマイペースなのかなと思わせた。

画像6

画像7

 それが今、こんな時代になったというのに、反政府デモ隊だけでなく一般市民にも軍は銃を向け、さらにネットもメディアもすべて規制しているそうで、国内外から支持されるとは到底思えない。これでどうやって国を運営していくのだろうなと思うと、逆に見てみたい気もする。

 タイは単純労働のマンパワーとしてミャンマー人の人手は欠かせない。一方で、タイ国内ではミャンマー人の不法就労が問題になっているけれど、このまま軍政が完全に君臨してしまうと、タイにも大量の難民が新たに流れてくるのかな。どうなっちゃうのかね、ミャンマー。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?