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日本にあってタイにないもの【牛タン編】

 東京でいう「ねぎし」みたいな、牛タンの専門店がバンコクにはない(と思う)。牛タンはあるし、牛タンのメニューを売りにしている和食系飲食店もある。でも、専門店はない(はず)。

 そもそもタイ人が牛肉をよく食べるようになってきたのが最近で、かつては牛肉は硬くておいしくないというイメージが一般的だった。食べ慣れていないからだと思うが、牛肉の香りを苦手とする人も多かった。

 今は食生活が豊かになって、日本人ほどではないけれども、牛肉を食べる人がかつてよりは増えてきた。バンコクならステーキ店も増えたし、日本式の焼肉店も人気がある。

 日本式、韓国式、タイ式のいずれでも、焼肉店なら牛タン、あるいは豚タンはある。でも、大概薄っぺらくて、それこそ仙台の牛タンのような厚みのあるタイプはまず見かけない。ねぎしみたいな店がバンコクに来たら人気になるのにと思うのだが。

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 日本滞在中は大体1回はねぎしに行く。意図して行くわけではなくて、東京だとよく行く場所である上野や池袋にあるので、時間があれば行く感じ。貧乏性なので、ご飯が無料でお替りできる点のポイントは高い。

 ねぎしの牛タンは厚みがあって食べ応えがあるし、かといって肉が硬いわけでもない。その加減が絶妙でいい。

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 肉自体の柔らかさもあるとは思うが、切れ込みが入っていることが硬すぎず、食べやすい牛タンになっているのかと思う。タイだと、まずこういった気配りがない。

 タイ料理は素材の味を引き出すというよりは、調味料で濃い味つけにしてしまう。そこには大胆さと繊細さもあるのだが、大衆的な料理店はただただ味が濃いという感じだ。

 また、トムヤムスープなどを代表に、タイ料理はタイ伝統医学でも使われる薬草であるサムンプライを入れるメニューが少なくない。それらでスープを取っていくわけだが、完成後に抜き取るわけではなく、そのまま供される。そうなると、トムヤムスープは見た目よりも食べられる部分が少ない上に、普通に食べにくい。

 そんな料理の世界なので、日本の牛タンのような「仕事」がタイ料理における牛タン料理などでは行われていない。

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 要するに、牛タン、豚タンは噛み切れないくらいに硬いケースが多々ある。そもそも、こういうホルモン系は下処理もしっかりしていないことが多い。

 たとえばレバーを見てみると、日本のヤキトリ店だと血抜きなどがしっかりしているから、焼いたあとも硬くならず、しかも甘みを感じるほど。ところが、タイのヤキトリ屋台でレバーの串焼きを食べると、土を食べているんじゃないかというほど硬くてパサパサしている。血の臭みも抜け切れていないことが圧倒的だ。

 鶏だとハツも臭みが若干ある。豚や牛の腸も普通に見かけるが、日本ほどおいしいと感じるものはない。

 タイ料理店やタイ料理調理師たちにはどうしてもそういった下処理は期待できない。タイ人はわりと保守的なところがあるので、一度こうだと思い込むとなかなか新しい技術を得ることが難しくなる。若い人、和食店などほかのジャンルに行けば変わるのだが。

 というわけで、タイで牛タンを食べるならば日本人経営、あるいは和食経験のあるタイ人調理師の店で食べるべきだ。ただ、その条件が揃っていておいしい牛タンの店というのはなかなか見つけられないのだが。ホント、ねぎしとかバンコクにくればいいのにな。

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