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ベトナムのススメ【ホーチミン編】

  ベトナムが好きだ。なんなら、今、タイよりも好きだ。タイにはもう長く暮らしているので、むしろ自分にとっては外国ではない。だから、好きな外国を訊ねられたら、現在は真っ先にベトナムと答える。そんなベトナムのどこがいいのか、ボクの見てきた感覚で紹介する。第2回目は南部の主要都市であるホーチミンだ。

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 一般的なガイドブックは首都から紹介するが、ベトナムのガイドブックは多くがホーチミンから紹介している。かつてはサイゴンと呼ばれたこの都市はベトナムの商業地としての機能がハノイよりも高く、外国企業もまずはホーチミンに進出することが多い。マクドナルドもベトナム第1号店はホーチミンだった。

 ボクはこの街が好きか嫌いかで言うと、あまり好きではない。決して嫌いではないのだが、どこかバンコクに似たところを見てしまうからだ。ベトナム南部人の気質は南国人のそれなんだと言われる。おおらかで、楽観的で、のんびりしている。まるでタイに似た部分があり、街並みもどこかバンコクに似ている。大通りに囲まれた、日本で言う町内のようなエリア、その中に張り巡らされた「ヘム」という小路は、バンコクの中華街ヤワラーの構成に似ている。

 だから、ホーチミンに来るとどうしてもバンコクと比べてしまい、街の規模からすると圧倒的にホーチミンの方が小さくて、がっかりする。そう思うことが嫌で仕方がない。一方ハノイはこれぞベトナムといった姿で、タイと比べるところがないという点で外国に来ている感がいっぱいで好きだ。

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 もちろん、いいところもたくさんある。ボクはホーチミンならいつもブイビエンに泊まる。ホーチミン1区にある安宿街で、バンコクでたとえるならカオサン通りだ。ここは活気があって、夜はいつも車道に人がいっぱいだし、週末は歩行者天国になる。タイと違ってしっかりとルールが守られているので、バイクが侵入してくることもなく、安心して道を歩ける。

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 飲食店も多いし、旅行社もたくさんあって、本当にカオサンのようだ。パブもあるし、今や外国人が集まるお洒落な場所といった感じで、ベトナムの若者もたくさん集まってくる。初めて来た2012年ごろは外国人しかいなくて、もっと寂れたような場所だった。それもまたボクが初めて行ったカオサンに似ていて、なんかここだけは嫌いじゃない。

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 宿もブイビエン通り沿いは騒々しいが、ヘムの奥にすれば問題ない。初めて来たときは声をかけてきたおばさんについていってヘムの奥にしたのだが、今考えてみればそれは運がよかった。結構いい宿だったのだ。今はアゴダなどでもヘムの奥のゲストハウスも予約できるので選択肢が広がった。

 最近、ホーチミンの「タンソンニャット国際空港」は入国時に宿や出国時の航空券の予約票などを見せろと言ってくる。だから、アゴダなどで押さえておくことは必須である。

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 南国人気質も相まってか、ホーチミンならではの楽しみもある。いや、ホーチミンというかブイビエン限定かもしれないが。それは屋台でひとりで飲んでいても、会計するころには誰か友だちができているということだ。

 ブイビエンに来るベトナム人の若者はみんな英語を話したがっている。しかも案外上手で、結構話が盛り上がる。ハノイでは隣の人が話しかけてくることはほとんどないので、ブイビエンならではの楽しみだ。

 ホーチミンはハノイと違って、屋台に生ビールがない。少なくともブイビエンは(あくまでも最後に行ったときの話だが)クラフトビールの生ビール屋台はあったが、普通のものはない。南部では生ビールはビア・ホイではなく、ビア・トゥオイと呼ぶが、そんな店はもうない。普通のビア・トゥオイは17000ドンくらい(約80円)、クラフトビールは3万ドンくらい(約141円)なので、値段的にも後者におもしろみはない。

 一応ブイビエンの行きつけの屋台はビア・トゥオイを看板に掲げてはいるものの、週に1回1樽しかなかったのに、2019年にはほぼ入荷しなくなっている。南部では北部以上に生ビールが敬遠され、若者はみなビア・サイゴンを飲んでいた。

 ビア・サイゴンはその名前の通り、南部の主流銘柄になる。レギュラー的な存在は緑のラベル、輸入もの扱い(だったかな?)は赤ラベル、プレミアムのサイゴン・スペシャルがある。

ちなみにだが、ボクはベトナムのビールなら「333」が好きだ。バーバーバーと読むのだが、開高健も著書でこのビールの名前を出していて、親しみがあった。ビア・サイゴンと同じメーカーのビールだが、なぜかベトナム在住者は見向きもせず、置いている店があまりないのが悲しいところだ。

ビア・サイゴンの緑と赤はほとんど同じ値段だが、若者たちはアルコール度数などのコスパからなぜかみんな赤を選択する。サイゴン・スペシャルは今はハノイでも飲めるし、外国人向けのグレードといった印象だ。

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 ベトナム料理はあまり詳しくなくて、一時は生春巻きばかり食べていたことがある。どこも内容は同じなのだが、タレが店によって違う。ボクはニョクマム(魚醤)が強めなのが好きだ。

 生ビールもそうだが、「生」とつくものがボクは好きだ。ただ、ベトナム料理には生肉はないみたいで、そのあたりはタイとは違う。

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 フォーなんかもおいしいものがある。この「フォー・ボー・コー」は煮込み牛肉のフォーという意味だそうで、つまりビーフシチューのフォーだ。これはハノイではあまり見ないが、ホーチミンなら至るところにある。

 組み合わせがなんとも言えないが、子どものころに家庭で食べるビーフシチューは米で食べていた世帯も多いのではないだろうか、と考えると、まあありでしょう。実際、これがおいしいのだ。店によってはフォーをバゲットなどのパンに変えることも可能だ。

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 ブイビエンの表通りは食事代がちょっと高い。円建てに換算すれば、それほどでもないのだが、ほかの一般的なベトナムの物価感覚からするとちと高いという印象を受ける。

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 たとえば、ベトナムも日本のようにタコを食べるようで、ブイビエンだと20万ドン以上するところ、4区のベトナム人向け屋台ではわずか7万ドンだ。日本円で610円も値段が違う。これは大きい。

 こんなタコ料理をベトナム最強のタレである、完熟ライムと岩塩で食べる。ま、必ずしも岩塩ではなく普通の塩だったり、塩胡椒だったり。ベトナム語では「ムイ・ティウ・チャン」と呼ぶ。

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 肉にもシーフードにもなんにでも合う万能タレだ。もうこれがあったらほかになにもいらないレベルだ。

 ただ、残念なことにこの店は英語がまったく通じない。ハローすら通じないので、メニューになにが書いてあるか全然わからない。あと、値段も書いていないので、いくらか確認するのでさえ時間を要する。

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 ボクは店の前を通って、こうやって焼いていたからタコとわかったが、ひと皿注文するのに5分はかかった。後半は完全に日本語で「いくら?」、「それなにに漬けているの?」とか聞いていた。

 こういうことが楽しめない人は4区とか8区は行かない方がいいみたいだ。治安もあまりよくないとされる。

 ちなみに、このタコの屋台はホーチミンで有名な寿司屋台「すしコ」の2号店の斜め前くらいにあった。

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 初めて連れて行ってもらったときの衝撃は半端ではなかった。安いし、完ぺきとは言えないまでも、十分においしい。今やこのエリアから逆に日本人の多いレタントン通りに進出したのだからすごい話である。

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 ホーチミンは活気のある街であるのは間違いない。先の4区の裏通りでこの交通量だ。ヘムと大通りの中間のような道なのだが、裏道でこれだけのバイクが走っているのだ。

 こういった裏通りやヘムにこそ、本当のベトナム人の姿がある気がする。ブイビエンでも一歩ヘムに入ってしまえば、食事もビールもかなり安くなる。

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 ただ、ブイビエンだからといって英語が通じるとは限らない。結局、ブイビエンの表通りが高いのは英語が通じるという通訳料が上乗せされていると考えるべきだろう。

 ちなみに上の画像のブイビエンのヘムの屋台は、近所のマッサージ店のギャルたちが集まる店だが、全然注文通りに来ないし、会計もいつも間違えまくるというしょうもない店だ。毎回、白人と揉めていたし、ボクも会計間違いを何度指摘したことか。しかし、この店のサンドイッチ「バインミー」が安くておいしいので、何度か来た。

 ある日は、注文したものが来なかった。何人もの白人と会計で揉めていたので、忘れられたのだろう。そして翌日、その忘れていた注文がテーブルに届いた。いや、その日は頼んでいないし。どんだけ時間かかっているんだと。対応がヤバすぎて逆に清々しかった。

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 ホーチミンも観光地らしい観光地には行ったことがない。あるとすれば博物館とかか。小学生のころは「プラトーン」とか「ハンバーガーヒル」、「フルメタルジャケット」を何度も観たので、アメリカの戦争映画と言えばベトナム戦争だった。ベトナムの博物館はアメリカ軍が残した兵器なども飾ってあって、いろいろなところに行っている。

 その中では「戦争証跡博物館」がいいかもしれない。ほかの博物館はどこも大国に勝利したベトナムを前面に押し出しているが、ここはほかとは毛色が違い、アメリカ軍にどれだけひどいことをされたかが展示されている。沢田教一や一ノ瀬泰造の写真も多数展示されている。

 ホーチミンは外国人向けのスポットは大体1区に集まっている。空港からはタクシーで行けるが、ベトナムは空港タクシーの評判が著しく悪い。だから、おすすめしたいのはエアポートバスだ。

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 ホーチミンは国際線ターミナルを出て右手にバス停がある。ブイビエンに近いファングラオ公園(あるいはファングラオのバスターミナル)まで渋滞を加味しても40分くらいか。料金はひとり2万ドンだ。タクシーだと13万ドン以上はするのでかなり安い。

 ちなみに、ハノイは旧市街を通り国鉄ハノイ駅に向かう。所要1時間とちょっとか。それで3万ドンだ。ぼったくられずに空港から出られるというのは本当に素晴らしい。これもまたベトナムが旅行しやすい理由のひとつでもある。

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