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タイのお守り「プラクルアン」を手に入れる

 タイ人の、主に男性が首からじゃらじゃらとつけているペンダントのようなものは、タイ仏教の中で信仰される仏像や幾何学模様を象ったお守りだ。これをタイ語では「プラクルアン」と呼ぶ。プラクルアンは一般的には寺院などで借りるものであるが、コレクターによって売買もされる。タイ国内では資産価値のあるものと見なされ、等価交換で車や不動産の売買に利用することも可能だ。そんなプラクルアンのタイ最大の市場が外国人観光客に人気のエリアにある。

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 まず前提として、プラクルアンはタイ仏教に根づいた文化であり、またプラクルアン売買は買う・売るとは言わず、借りる・貸すという

 通常は寺院などで新造され、貸し出される際には僧侶がひとつひとつに霊力を吹き込んでいく。かつてはひとつひとつが手作りだったが、現在は金型が発達していることもあり、様々な素材で作られる。製造数も多いことから、僧侶が力を込めるときには糸で結界を作ってまとめて吹き込むようになった。

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 かつては高尚な僧侶がひとつひとつ作っていたため、歴史のあるプラクルアンは今現在、数百万バーツ、あるいは何千万円といった金額になる。こういった国宝級のプラクルアンはタイの有力者が手にしているので、一般市場に出回ることはほとんどないし、これくらい歴史的価値がある場合はタイ政府の許可がないと国外に持ち出せないため、外国人がコレクターになるにはハードルが高い。

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 マーケットとして確立されているので、純粋に信仰心からプラクルアンを持つ人が大半である一方で、コレクターも少なくない。そのため、プラクルアンの専門誌が何紙もあるし、その中にはプラクルアンの目利きポイントなどが特集されている。

 しかし、先述の通り、プラクルアンの中でも歴史的価値があるものは一般市場には出てこないので、市場で探してもまずみつからない。万が一掘り出し物が出てきても、店主がいち早く見つけ、然るべきところに売ってしまうだろう。

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 プラクルアンはタイの文化のひとつである。しかし、実際にプラクルアンがタイの文化に根づいたのは1800年代に入ってからだ。

 元々プラクルアンはプラピムと呼ばれるお守りとしてインドからタイに仏教が伝わってきたのと同時に伝来した。プラピムは仏像やヤン(幾何学模様のような図)などを粘土や石、布などに表したものだ。

 これがアユタヤ王朝時代になって、プラピムに未来の祈願を込めるようになった。それまではそういった自身を守るものとしては護符刺青のサックヤンの方が文化としては根強かったのかと思う。ただ、サックヤンは今でこそ仏教の中に組み込まれているが、誕生当初はカンボジア系の住民が行っていた土着宗教的なものだったようだ。サックヤンに関してはまた改めて紹介したい。

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 そうしてアユタヤ王朝が滅び、のちに現王朝が誕生した。現王朝のラタナコーシン王朝の5代目王の時代にプラクルアンが一般市民にも広まり、このころになって「プラクルアン」と呼ばれるようになった。現在も仏像を象ったお守りだけをプラピムと呼ぶ人もいるが、一般的にはこういったお守りはすべてプラクルアンと呼ばれるようになっている。

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 タイではプラクルアンをこのように大量につける人もいる。いろいろな願いや思いを込めたものなので、どんどん数が増えてしまうが、特殊な人はプラクルアンを何キロも首に提げる。

 プラクルアンが新造されるのは、多くが寺院の資金集めのひとつの手段となる。有名寺院などは宣伝看板などを製作して、道路脇に立てたりする。その中ではたとえば事故や殺人現場の画像を使い、こういう目に遭いたくなければプラクルアンを持つべきと煽ったり、「このプラクルアンのおかげで撃たれたけれども死にませんでした」という宣伝が見られた。ツッコミどころが満載というか、そんな宣伝なら逆に信用ならないが、タイ人はそれで納得するようだ。

 そんなプラクルアンのタイ最大の市場「タープラチャン市場」は王宮前広場やタマサート大学があるエリアにある。チャオプラヤ河沿いの昔ながらの市場だ。表側から見ると入り口が狭く見えるが、中にはたくさんの店が所狭しと並んでいる。

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 この辺りはタイ伝統医学の大学とも言われたワット・ポーも近いので、露天でタイ漢方なども売っている。

 プラクルアンの市場はタイ国内のどこにでもある。ただ、タープラチャンの規模は確かにタイ最大と言える。ここではプラクルアンのほか、カンボジアを由来とする呪術関係の道具、仏教やタイの精霊信仰に関係したグッズなども多数ある。

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 最近は市場の一部が改装され、飲食店やカフェなどが併設されるようになったことで、一部の市場はきれいになった。

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 また、最近の若い人はプラクルアンをあまりしない。どちらかというとプラクルアンは中流階層以下の人がつけるイメージが強い。そのため、若い人にはダサいという印象を持たれているのだろう。

 そんなプラクルアン業界も黙ってい見ているわけにはいかないのか、置物などもクリスタル風のお洒落な感じに仕上げていたり、上記の画像のようにブレスレット風のものも売り出している。最近はわからないが、20年くらい前はバンコクはシルバーアクセサリーの仕入れ先として有名だった。こういったブレスレット的なもののデザイン性は高いと言える。

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 プラクルアンもこういった洒落たものもある。ボクが今しているものはこのガルーダのプラクルアンの青のものだ。本当はクマントーン(タイの座敷童子)のプラクルアンがほしかったが、一緒に行ったニコ生で人気の怪談チャンネル「モノガタリ」の木村氏が気に入ったので、ボクは迷っていたガルーダにした次第だ。

 この市場のプラクルアンは安いもので20バーツ程度からある。これといったプラクルアンをほかで見つけられないなら、こういった市場で探すのもひとつの手だ。

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