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【タイ生活】敵は近くにいる【妻の家庭料理が辛すぎる件】

 よく誤解されるが、「タイ料理=辛い」わけではない。確かに辛いものもあるが、すべてではない。辛くないものもたくさんある。また、「タイ料理=パクチー」というわけでもない。洋食=パセリではないように、パクチーは基本的にはちょっとだけアクセントに使うもので、すべてのタイ料理に入っていない。

 辛いから、香草が苦手だからという理由でタイ料理を避けている人がいたら、それは人生の楽しみをひとつ損していると思う。だから、そういった理由でタイ料理を食べていないのであれば、ぜひタイに来て、タイ料理を楽しんでもらいたい

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 ボクは世界を旅しているわけではないが、タイを中心に何カ国か周って気がついたことがある。それは、

ビールと女は地元がいい

 ということだ。日本でなら日本のビールがおいしいし、日本人女性が美しい人が多い。タイに来ればタイのビールがおいしく、タイ人女性に美しい人が多い。これは料理にも当てはまる。

 ボクの父はかつてはひどい偏食だったようだ。それで初めてボクの妻に会ったのは、結婚前の妻がまだ大学生のころのことで、日本に連れて行ったときである。父としてはおそらく外国人と深く接したのもそれが初めてだったのかと思う。そうして「タイ」に興味を持ち、パスポートを初めて取得し、タイにやって来た。

 初日にどこに連れて行くか考えたが、まあちゃんとしたタイ料理店に行き、そこでだめなら滞在中は和食かなと。それで「バーンカニタ」に連れて行った。日本の皇室も来るという有名店だ。今はわからないが、当時は突き出しみたいなものにミヤンカムが出された。香草にピーナッツや赤玉ネギ、トウガラシなどを巻くものだ。「いきなりヘビーなのが来た!」と思ったものの、父は平気で食べた。その後、パクチーも普通に食べられた。

 単に食わず嫌いだったのかと思うが、タイのものはタイで食べるべきであると思った瞬間だった。

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 タイ料理というのは和食と違い、基本的にはすべてのタイ人が食すものだ。和食なら懐石だとか寿司などは専門店で食べるもので、家庭で作ることはそう滅多にない。しかし、タイ料理は高級店から屋台まで、メニューは基本的に同じだ。違うのはサービスの質や食材の品質など。それ以外は基本的に同じで、家庭でも同じようなものを食べる。

 だから、注文方法も同じだし、メニュー名も凝った創作料理系のタイ料理以外ならだいたい似たようなものだ。屋台や食堂にあるタームサングという系統の店はメニューすらない場合もある。タームサングは注文に従うという意味なので、客が料理名や食材の調理法を指定すれば、あとは調理師が作ってくれるというわけだ。

 タイ料理は完成された料理ではない。つまり、懐石のように「この料理はこうである」という店や料理人の決まり事や押しつけがない。麺類のクイッティアオを見ればわかるように、最終的な味は自分で作っていい。

 だから、辛い料理でも辛いのが嫌なら、辛くなくと、パクチーが嫌いなら、いらないと言えばいい。ただ、気をつけたいのはタイ人の辛くないと日本人のそれが違うことが多い点だ。また、調理器具を洗わずに使うことも多いので、青パパイヤサラダのソムタムなんかは前の人が辛いものを注文していると、次の人も自動的に辛くなってしまうことがある。

 そんなタイ料理は家庭でも店と同じようなものを作って食べる。タイ人は今の若い人は別だが、少なくとも40代以上は小さいころから家の仕事を手伝って育っているので料理ができる人が多い。幸い、ボクの妻も料理はうまい方だ。単にボクの好みに合っているというか。

 ボク自身は辛いものが好きなので、基本的にはなんだっていける。ただ、ときどき妻の料理が異様に辛いときがある。記憶をなくすくらい辛いときも少なくない。特に、ビールのつまみを作ってくれたときなんかはその辛さはマックスだ。

 辛すぎて呼吸が荒くなり、それで脳が一時的に記憶を失う。ときにはスプーンあるいは箸を口に近づけただけで唇がピリリと反応してしまう。辛味って空気で伝わるものなのだろうか。口に入れず、数センチ寄せただけで辛さを感じるとは。当然、そんなものを口に入れれば、むちゃくちゃ辛いわけで。

 いくらタイ人と日本人の辛さの感覚が違うとはいえ、妻に辛くしないでと頼んだところでちゃんと伝わることはないのだろう。敵は案外身内にいるものなのである。

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