32歳で潰れそうな家業を経営再建した話 3/3

ホッとするのもつかの間、過去の粉飾決算が判明。業績悪化で融資を断られる心配からか父が偽装を行っていました。稚拙な手法で銀行は分かっていたでしょう。当時は貸し渋り・剥がしと銀行が悪い様な報道が多くありましたが、業績報告を正確にしていない企業にも責任があると思います。
そこで毎月サポートしてくれている仕入先と銀行に経営報告を行う事にしました。こうして再建計画は社員の頑張り、仕入先・銀行の協力の元で計画通りに進みました。仕入先に猶予してもらった支払いも計画通りに終える事が出来ました。再建は予定を2ヶ月過ぎた2年2ヶ月で達成しました。古い社屋は新築の社屋になりました。
いろいろありましたが結果として見事V字回復を果たして再建に成功してひと安心したのもつかの間、再建の過程で私は大きな問題に気づきました。紙卸業界の慣習もあり紙販売だけでは利益を伸ばす事が非常に難しかった事です。若手の社員を増やしましたが、彼らの将来を考えると今後消費量の減少が予想される紙以外の柱を早急に作る必要がありました。しかし今度は一緒に再建を頑張ってくれた社員の意識が障壁となりました。
再建計画は売上高を維持出来ればそんなに難しい事では有りません(逆に言えば売上減少が原因の場合の再建は難しくなります。売上を上げる具体策、固定費の変動費化、新規売上を作る施策、それらを行う時間…ですので再建は初動をいかに早く出来るか何より大切になります)が、新たな市場を開拓するのは大変な事です。社員も再建時は崖っぷちなのでまとまりましたが、再建が終わると危機感は無くなり、まとまりも無くなってきました。私から発信する新しい提案は実行出来ず経営はまたもや難しい局面を迎えていました。
紙卸商は倉庫と配送網を持っています。印刷洋紙は当時キロ120円程度。粗利益率は20%を切っています。そこから社員の給料や諸々の経費を捻出しなければなりません。もしボールペンだったら一本運んでも20円程度利益が上がりそうですが、社員にはそういう考え方を理解されませんでした。何故なら自分達は紙屋だから。
しかし、この社員の意識と時代が私をM&Aへと向かわせる事になりました。

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