見出し画像

デジタルデバイドのこちら側

私は介護業界に16年、特別養護老人ホーム、老人保健施設、デイサービスを経て訪問介護にたどり着きました。東京の多摩地域で訪問介護、居宅介護支援(ケアマネ)、デイサービスを運営する法人に10年在籍し、ほぼ2年毎に異動し5市町村で事業所の仕組み作りをしてきました。NOTEを利用される皆様からは想像がつかないであろうデジタルデバイドのこちら側をお伝えします。

ガラケーすら持ってない

訪問介護の現場は60歳を越える方々が主役です。80歳を超えたヘルパーも現役でチョロチョロいます。この方々は登録ヘルパーと呼ばれ、1人親方扱いなので利用者宅へ直行直帰します。当然サービス利用者の高齢者は体調が悪い時もありますが登録ヘルパーの中には携帯電話を持っていない方々が存在しています。スマホを持っていない、ではありません。急な変更は伝えられません。そんな業界です。

スマホは電話とカメラと万歩計

そんな業界でもスマホを持つ人も徐々が増えています。しかし、可能性が拡がる弊害があります。アプリのダウンロードから教えなくては使えないのです。アプリをダウンロードするにもパスワードが分からないみたいな。心のとても広い、ガジェット好きな管理職がいれば良いですが、世の中そんなに甘くありません。皆さんのお母さん位の年齢の管理者と一緒に首を傾げ、ようやくカメラと万歩計としての利用方法を理解します。そして、色々出来るようになったと満足しアプリのパスワードをまた忘れます。

ベッキー事件の弊害

介護保険に携わるので書類での記録が多く求められます。数年に一度は実際に事務所に役所の担当が来て書類をチェックしていきます。ほとんどの法人は紙で保存します。何時から何時まで誰々さんの家で何をした。担当者のハンコと利用者の認め印を毎日貰います。記入ミスがあると訂正印を貰います。

少し話が逸れますが正規雇用されている職員が1ヶ月の労働時間の中で実際現場に出られるのは、移動時間もありますので頑張って90時間程度です。90時間現場に出て35万円位の請求ができます。登録ヘルパーは内容にもよりますが、概ね請求の5〜6割しか貰えません。以前に比べ登録ヘルパーが減少している為、正規職員も現場に行きまくります。

事務所に人がいない時間が増えると情報の共有が出来ません。使える人だけでもLINEでの情報共有を始めようとしますが、そんな時に60代の社長から指示が入ります。LINEでの情報共有は禁止!LINEは個人情報が漏れるリスクが高い!ニュースでずっとやっていただろうと、、、、、

介護業界の年齢分布

介護業界では施設と在宅で就労層が全く違います。施設と在宅での転職はほぼありません。施設で働いている人はずーっと施設。ヘルパーをやってる人はずーっとヘルパーをします。

若い人はシフト勤務で夜勤のある施設で少しでも稼ごうとし、経験を積んでも給与が下がる事や、移動がある事、家事をする機会が多い事を理由に在宅に転職はしません。訪問介護の職員は、夜勤が大変、シフト勤務や夜勤は出来ないと施設に転職はしません。理想の形は施設で経験を積み、在宅でその経験を活かす事だと思いますが。

このような素地から、在宅介護はプロに頼んでも老老介護に近い状態です。利用者はインターネット環境のない家で暮らしていますし、介護者はスマホも上手く使えません。

訪問介護の未来

既に平成28年からヘルパーは減り始めています。2025年には段階の世代が後期高齢者となり、訪問介護は崩壊します。

利用者宅にwifi環境があり、タブレットで買物を済ませ、洗濯代行を呼び、薬の時間を伝える。ネットワークカメラで見守りをし、スマートウォッチで体調管理をしながらオンライン受診する。

こんな未来が早く来る事を祈りますが、デジタルデバイドのこちら側は全く準備が出来ていません。

なんとか出来る様に頑張ります。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?