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揺れを止めることはできないが、備えることはできる。
ちょうどテレビを見ていた。上部に表示された、「揺れがきます(意訳)」にギョッとして、とっさにチャンネルをNHKに変えた。
築50年超のリノベアパートは揺れに揺れて、本棚を手で押さえながら机のしたに潜り込んだ。飾り棚タイプの食器棚がこの時ばかりは憎い。幸い、キッチンに放置していた空き缶が下に落ちた程度だった。
わたしは10年前の震災のとき、整形外科の待合室にいた。4月から入学予定の仙台の大学で部活の合宿に参加させてもらって、夜行バスで朝方に帰ってきたばかりだった。12時間前までいた場所が見たことがない状態になっていて、メールで被害状況が飛んでくるのを見ているしかなかった。屋上で救出された先輩もいた。
「10年前より家の中がめちゃくちゃ」
2月13日、揺れがおさまって、家の中に大きな被害がないことを確認してすぐ、Twitterを開く。(かなりの人が同じ行動をしたのでは)先述の仙台の大学に通っていたのは1年間だったけど、(いろいろあって1年で退学したのだけどその話は関係ないので割愛)短い仙台生活で仲良くしてくれた友達とはSNSでつながっていて、今回真っ先に気になったのは彼らのことだった。
「10年前より家がめちゃくちゃになった」と投稿していた友人がいた。投稿された写真を見ると、いろいろなものが散乱していて、雨戸も落ちてしまったという。
10年前の地震の方が、規模も被害も大きいことは数値からも自明の事実だけど、今回の地震の方が個々のエピソードが数え切れないほどSNSで共有されている。それはTwitterの普及率はもちろん、“リアルタイムで” 情報を共有しあう(情報を得る)文化がより浸透していることが伺えるのではないか。
ここでは詳細に触れないが、ひどい差別的なデマを発信して非難される人がいる一方で、先の震災経験者(東日本大震災に限らず、阪神淡路大震災、熊本地震の経験者も多くいたと思う。)による、すぐにやるべき行動投稿が、かなりエンゲージメント(※)していたのでちょっとまとめてみる。
エンゲージメント
Twitter・Facebookにおける「いいね」「リツイート」「シェア」「コメント」などの総アクション数。数が多いほど、多くのユーザーに、SNS上で言及されている・注目されていると定義しています。また、この数値はポジティブに語られているもの、ネガティブに語られているもの、両方を含んでいます。
調査概要
・SNSプラットフォーム:TwitterおよびFacebook
・キーワード:「地震」「震災」を含むTwitter / Facebook投稿
・期間:2021年2月13日(土)
・ツール:spiceboxのオリジナル・ソーシャルリスニングツール「THINK」
※キャンペーン・クラウドファンディングは除外。
【経験者による有益な情報】 家の中でできる断水に向けた行動
とにかくお風呂に水を貯めるべき! とする投稿。15万を超えるエンゲージメントを集めた。
【拡散希望】
— ヒロ🚬🦍 (@HIRO_twst_1015) February 13, 2021
地震。東日本大震災経験者としてお願いします。
東北勢は、今すぐお風呂に水を張ってください。3.11の時はこの後断水しました。
さらに明後日当たりもっとデカい本震来る可能性も十分あるので、今日落ちた本とかはそのまま床に転がしておいてください。
この投稿への注目はもちろん、特筆すべきはリプライで他の震災経験者による、「いますぐやるべき行動」が寄せられていたこと。妊産婦さんに向けたアドバイスや、ガソリンを満タンにするべき、とする車持ちへのコメントも。
妊産婦産さんへ。停電中は、ミルク用のお湯をカセットコンロで作ったら、魔法瓶か昔ながらの保温ポットに。これで一晩保ちます。私は震災当時、乳幼児連れの妊産婦で仙台で被災。電気は2日目夜復帰。余震のたびにマンションエレベーター停止。ガスは復帰遅く1か月。安全確保を!
— Momoko Yonaiyama (@MomokoYonaiyama) February 13, 2021
東日本大震災経験してお風呂にお湯が張ってあったので断水した時は助かりました。ガソリンも常に半分くらいになったら満タンにしてます。
— エレガン (@yukka_jiguiwa82) February 13, 2021
いずれも100〜6,000程度エンゲージメントしており、リプライも含めて有益な投稿として捕らえられていた。
【経験者による有益な情報】 部屋の被害は片付ける前に写真撮影を!
他にも、部屋がめちゃくちゃになってしまったときにまずやるべき行動はこれ! といった投稿も。部屋がめちゃくちゃになったら現状復帰してしまいそうだけど(実際わたしも真っ先に考えたのがこれだった。)その前にスマホでいろいろな角度から写真を撮っておくこと。これが後で役に立つ、かもしれない。
家の中ぐちゃぐちゃになった人へ
— スヒト (@10ya_1ya_) February 13, 2021
片付けの前にまず写真!!
片付けの前にまず写真!!
撮りすぎかってくらいあらゆる角度から撮れ
地震保険に入ってたらかなりの額が降ります
(写真は大阪北部地震、この写真で保険金200万降りました) pic.twitter.com/4HRFpoP3AE
【拡散希望】今の地震で家が歪んだりヒビ割れてたりしたらきちんと証拠写真を撮っておきましょう💪被害状況を記録してから家の中を片付けましょう💪保険などで役に立ちます
— ころく (@koroku6_) February 13, 2021
【経験者による有益な情報】 災害時に役立つアイテム共有
地震で倒れると明かりを灯してくれるこけし。使い方も簡単で、普段はかわいい置物として、災害が起きると使えるものも。こういうソーシャルグッドかつデザイン性の高いアイテムは、対震災に限らず増えているように思う。
ちなみに震災以降「明かりこけし」という商品が作られていて、こけしが地震で倒れると自動的に明かりがついて足元を照らしてくれる、という最高のアイテムなので是非みなさん買ってください…。 pic.twitter.com/tJYlb3JhwX
— たまごへび (@tamago_hebi) February 13, 2021
我が家は全ての書棚の下に、「ふんばる君」をひいています。10年前の震災のときもひいていましたが、書棚の転倒はなく、中身の本が飛び出すこともなかったです。
— ナカネくん (@u_saku_n) February 13, 2021
おすすめ。ホームセンターでも売っていますよ。
ニトムズ 家具転倒防止安定板 ふんばる君 ねじ・くぎ不要 https://t.co/UsU6MQIhcQ pic.twitter.com/mzAwxouKD0
タンスや食器棚の転倒を防ぐアイテムもいくつか拡散されていた。
冷静な判断はできないことが当たり前だから。
災害時のTwitter利用について、有益な情報が流れてくる一方で、完全なるデマや、必要以上に不安を煽る投稿も溢れていて、パニックで冷静な判断ができないこともある。緊急事態は特に。
そんな時でも味方になってくれるのは、やっぱり日頃の意識や備え。高校時代の友人と13日の地震後に連絡を取ったら、簡易的な非常持ち出し袋をつくったとのこと。衛生用品を中心に、数日間避難所暮らしになったとしても耐えられるような生活用品を数点。大きな災害が起きた時に慌てるな、と言われても慌ててしまう(と思う、少なくともわたしは)。
そんなとき、日頃からの備えがあれば、我に変えるきっかけになるかもしれない。
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