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1on1での最近どう?ってむずかしい

この記事は弁護士ドットコム Advent Calendar 2022の19日目の記事です。
前日は@NaokiTsuchiyaさんの「IDEとテストコードを中心としたブラウザ不要なウェブアプリケーション開発スタイル」でした。


解釈が難しいけど便利な質問「最近どうですか?」

弁護士ドットコムデザイン部の林(@taka_piya)です。
4月からマネージャになり、チームメンバーの1on1も担当することになりました。

マネージャー側で1on1するようになって感じたのは「最近どうですか?」便利ということです。「する側にとって最初の一言に便利な質問No.1」です。

同時にメンバー側としては「答える側にとって難しい質問No.1」だと思います。自身がメンバーとして1on1したときに「最近どう?」と質問されると、答えるのが難しいなーと思っていました(もちろん影で言っているわけではなく、そう伝えています)。

この記事は「最近どう?」の非対称(勝手に最近どう?問題と名付けた)について、上長や周囲のデザイナーと話したことと、1冊の本を紹介する記事です。

難しい理由

最近どう?らしさが潜んでいる

「最近どう?」と聞かれた場合 → 聞き取り
自分が聞かれた場合、この頭の中にいくつか話は浮かんでいるものの「きっと、なにか聞き取ろうとしてるんだな」「別に言うほどのもんじゃないしなぁ」というところから「いや、特にトピックはないですね…」という発話になります。

このとき「最近どう?」が文字通りの意味ではなく、「最近どう?」に対する回答のふさわしさが求められているように感じます。このふさわしさは回答の期待値と言い換えてもいいかもしれません。

「最近どう?」と聞く場合 → アイスブレイク
一方で「最近どう?」と聞く場合は、体調でもいいし、最近気になったデザインでもいいし、今やっている相談でもいいし、アイスブレイクや場の温めを思って聞いています。

回答を考えるのに時間がかかる

メンバーや周りのデザイナーにはどうか聞いてみると、「この1週間で何があったかな…と思い出している」 と考えていたり「ネタが有るときは話しやすい」ということも聞かれました。
「最近困っていることは?」も同様に難しいという話がありました(自分は聞きがち…反省)

質問にはコスパがある

ここから難しさは、話すことを洗い出す、場のテーマとして設定するといった話題設定コスト(話題がない場合=無限大になるような)や、関係性や場の温まり具合から感じる回答の期待値のバランスがありそうです。

質問の期待値と、回答にかかるコストのバランス

このバランスが崩れ、「自分の発話内容の価値」が期待値にあわない感覚が芽生えると、どう?に答えることが難しいと感じるようにのではないでしょうか。

そもそも、どう?とはどうなのか

そう考えると、本来マネージャが責任を持つべきコストを、メンバーに転嫁してしまっているともえます。

大前提としては、メンバーとの関係性を構築する核となるものであることは至るところで語られているとおりです。上下関係がないとはいえ、その先導はマネージャー側が行うべきでしょう。

その1on1の役割はなにか、定期的に何をキャッチアップをしていくのか。
自分自身が聞きたい、どう?含まれる意味を分解して、メンバーのコストを下げる必要があります。

最近どうと聞かれたときに/聞かないために

話は変わってあるとき、文喫で家族に本をプレゼントに買っていこうと探していたところ、水中の哲学者たちという本に出会いました。

哲学者である著者が小学校や街で行う「哲学対話」の話や、日常の話を哲学を交えて語りかけるエッセイになっている本です。

プレゼントといいつつ自分が読んでいると、
最近どう?問題を解決するヒントに出会いました。

ある哲学者は、哲学することの根源は「驚異と懐疑と喪失の意識」であると言った。
ひとはびっくりしたりつらいことがあったりすると「なんで?」と自然に問うてしまう。
ようするに「は?(驚異)マジで?(懐疑)つら(喪失)」から哲学は始まるのだ。

水中の哲学者たち 「爆発を待つわたしたちの日常について」

「は?マジで?つら」から哲学は始まる

「は?マジで?つら」はゴロもいいし、話しやすそう。
そのまま読みすすめてていくと、サンドウィッチマンの漫才に対して

意識してではない。自然と内からわき出る「なんでやねん」である。
そして「なんでやねん!」から哲学はおそらく始まる。

水中の哲学者たち 「爆発を待つわたしたちの日常について

なるほど、確かに誰かに話したいときは湧き出る感覚があります。
また、自然に湧いてきた感情を切り口にすると
・自分の話を聞いている(主観で良い)ことが伝わる
・事実ベースだから、論理建てて話す必要がないことが伝わる
といったメリットもありそうです

実際に1on1で使ってみる

早速、1on1で「今週働いていてびっくりしたことありました?」と使いました。

すると「びっくりしたこと!?」とびっくりされました。
そうですよね。コミュニケーションの前提を揃えないとびっくりされるので、やるときはマネージャー側も事前に自己開示が必要ということがわかりました。

1on1もUXライティングである

隣のチームのデザイナーにも話をしたところ「UXライティングと近いですよね」という反応をもらいました。

話を聞いていると、朝会でちょっとした良かったことを共有するコーナーを「Good&New」と名付けてアイスブレイクにしていたら「そんなにGoodないよ〜」と焦られてしまったけれど、「茶柱が浮かんだくらいの本当にちょっとした良いこと」という問い直しから「茶柱トーク」として広まり、みんなが答えやすくなったとそうです。

いい表現はユーザーを迷わせないということですね。

最後に

最近どう?にとって変わる言葉はないのかと、つらつら書いてきたのですが、本当はただ「水中の哲学者たち」が良くて紹介したかっただけなんです。
引用部分だけ見るととてもお硬い本に見えますが、前後の文脈と合わせてみるととても柔らかく面白いのでぜひ読んでみてほしいです(アフィリンクじゃないよ)

1on1も1つの手段ですが、一番身近なUXライティングの実践の場ともいえます。

一番身近なコミュニケーションの質を高めていくこと、そのための多くの手段を持っておくこと、やってみることはユーザーに良いものを届けるうえで重要になります。

もしいつも「最近どう?」と聞いていたら、もう少し回答しやすい質問ないんだっけ?と言い回しを考えてみませんか。


明日は、@t2ynkmrさんの「AuroraMySQL のカスタムエンドポイントを採用しようとして断念した話」です!

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