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読書11 『グランドシャトー』
『グランドシャトー』高殿円
東京オリンピックが始まる、少し前の昭和の時代、18歳のルーは家を飛び出して、大阪にたどり着いたが、行くあてもなくお金も底をついてしまった。ルーはとにかく空腹だった。橋の上から、川や京橋駅を出ていく国鉄をぼんやりと眺めていると、頭にスカーフを巻いた女のひとが「食べる?」と言いながら、次々とお菓子を差してくれた。
目の前にそびえる西洋のお城のような建物はキャバレーらしい。グランドシャトーのネオンがきらびやかに輝いていた。
ルーは、このグランドシャトーで働くことになる。ホステス150人を抱える全盛期のキャバレー。
ある事情があって、寮を追い出されたルーは、10年以上、グランドシャトーのナンバー1ホステスの、真珠と一緒に住ませてもらえることになった。
橋の上でルーにお菓子をくれた、いつかのひとだった。
真珠の生活は、慎ましく、全く贅沢をせず、ここにいる時は、時がゆっくり流れていった。毎朝、表の仏さまの掃除を、真珠は欠かず行なっている。近所のひとたちがやさしく接してくれるのは、このためだと知ってから、ルーが仏さまの掃除をするようになった。
そんな真珠との生活があったから、ルーはその後、道を外れることなく、歯を食いしばって生きていくことができたのだった。
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読み進めるうちに、真珠の「なぜ?」が、たくさん出てきますが、それは、最後の最後に明らかになります。ルーの人生も壮絶です。
時代とともに、グランドシャトーも変化していきます。
出会ったひとによって、そのひとの人生が左右されることを痛感した本でした。
「第11回大阪ほんま本大賞を受賞」だそうです。
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