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読書6 『16夜荘ノート』

古内一絵著

マーケティング会社に勤める大崎雄哉は31歳。29歳でグループ長に抜擢されて、毎年確実に利益率をアップさせ、2年連続社長賞に輝いている。

そんな雄哉の元に、ロンドンに住む母方の祖母の姉にあたる、大叔母の玉青が亡くなり、その不動産を雄哉に引き継ぐという連絡が入る。
戦前は祖母の家系は華族だった。東京のその屋敷は『十六夜荘』という、シェアハウスになっていて、住人もいる。

『十六夜荘』の住人に、地に足がついていない生活をしていると感じた雄哉はうんざりし、一方的に退去を促し、ここを売るための手続きに入る。

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玉青が生きた激動の時代、昭和13年から昭和22年までの出来事と、雄哉を巡る今の時代との話が交互に進んでいきます。

それまでは常に自分が正しく、何の無駄も許さずに生きて来た雄哉が、思いもよらないしっぺ返しに合うことになります。それをきっかけに、関心がなかった大叔母がたどった人生を、知りたいと思うようになるのですが、知っていくうちに、衝撃的な事実が見えて来ます。雄哉自身も大切なものが見えて来るようになります。

雄哉が『十六夜荘』で食べた素朴な食事に「味がする」と言いました。どんな高級料理にも、味わって食べていなかったことに気づきます。
何を大切にして生きたらいいのかを、大叔母から感じたようでした。

裏切りがあったり、悲惨な内容もあります。それでも、やさしい人がたくさん出てきて、心に沁みるお話でした。

#読書
#古内一絵
#十六夜荘ノート

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