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私立恵比寿中学の音楽史

 アニメ『マッシュル』第2期はオープニングテーマのCreepy Nutsの「Bling-Bang-Bang-Born」。前作「ビリケン」に続くような中毒性の高いサウンドが世界的な話題ですが、エンディングテーマの「トーキョーズ・ウェイ!」もオシャレでちょっとコミカルな楽曲も注目されています。

 歌うのはアイドルグループ私立恵比寿中学、略して"エビ中"は2009年の結成以降、長いキャリアの中で様々な楽曲にチャレンジしてきており、コミカルな楽曲もオシャレな楽曲も自分たちのものとしてきたエビ中ゆえ「トーキョーズ・ウェイ!」が似合うのかもしれません。そんなエビ中の楽曲史を振り返っていきます。

1.インディーズ期

 2009年デビューのエビ中。初のCDはカバー曲でした。(桜っ子クラブさくら組の「なにがなんでも」とZONE「大爆発NO.1」。)初のオリジナル曲は「えびぞりダイアモンド!!」でヒャダインこと前山田健一による提供作でした。以後、インディーズ期は、ヒャダインが多く提供し、またさつき が てんこもりの楽曲も印象的であり、2人によるコミカルな楽曲が目立ちます。

 ヒャダインはエビ中の先輩グループももいろクローバーZへの提供作である「行くぜっ!怪盗少女」が話題となり、エビ中の楽曲も多く担当しています。花粉症をテーマにした「ザ・ティッシュ〜とまらない青春〜」、運動会をテーマにした「もっと走れ‼︎」等当時のエビ中にしか歌えない楽曲です。

 さつき が てんこもりは動画投稿サイトで話題となったソングライターで、「ネトゲ廃人シュプレヒコール」等の楽曲で知られます。エビ中は提供した「売れたいエモーション!」は後にTikTokで話題となるなど、これまたユニークな楽曲を制作しています。

2.メジャーデビュー〜『中人』

 9人体制となりソニーミュージックのデフスターレコードでのメジャーデビューシングルとなった「仮契約のシンデレラ」は、ヒャダインによる「行くぜっ!怪盗少女」への意識を感じるグループのアイディンティティを表現した楽曲でありながら、提供はTANEBIとしても活動する杉山勝彦で、嵐や中島美嘉、家入レオや乃木坂46への楽曲提供で知られます。

 ヒャダインは「放課後ゲタ箱ロッケンロールMX」「GO! GO! Here We Go! ロック・リー」「」等ユニークな楽曲をメジャー後も提供。シンガーソングライターのたむらぱんは、「結果オーライ」「大人はわかってくれない」「誘惑したいや」のような思春期の心情を描いた音楽を提供しました。

 アニメタイアップでは、ポケモン主題歌も担当し、「サクラ・ゴーラウンド」と「手をつなごう」がありました。「手をつなごう」の作曲は、後にグラミー賞を受賞する宅見将典です。

 この時期は、「歌え!踊れ!エビーダダ!」「パクチー」「あたしきっと無限ルーパー」のようなユニークな歌詞ながら、サウンドはバキバキのダンスチューンな楽曲もあり、YMOのカバー「体操」もあり、番組共演もしていた元SUPER BUTTER DOGで、現在は日本史をテーマにした楽曲を歌唱するレキシ頑張ってる途中」もあり、米米CLUB等での活動で知られる石井竜也提供の「中人DANCE MUSIC」あり、すでに様々な作家陣が参加しつつ、"永遠に中学生"を感じる楽曲が生まれました。2013年に1stアルバムの『中人』がリリースされ、エビ中のコンセプトの反映と音楽性へのチャレンジも感じるアルバムとなりました。

3.ゴールデンエイト期

 「ずっきゅんずっきゅん」というフレーズが印象的な「未確認中学生X」を経て、2014年に、瑞季、杏野なつ、鈴木裕乃の転校と小林歌穂、中山莉子の転入。アニメ主題歌となった「バタフライエフェクト」。元JUDY AND MARYTAKUYAら提供の「ハイタテキ!」がリリースされました。この時期から初期からのクセの強い楽曲とはまた異なる方向性の楽曲も増えてきました。編曲に曽我部恵一鈴木慶一が参加した「幸せの貼り紙はいつも背中に」、夏の爽やかなポップスを全面に感じる「ラブリースマイリーベイビーA.F.R.O提供の「涙は似合わない」等、多様さもまた別の方向に広がりました。

 さらには真山りかはソロデビューし「Liar Mask」をリリースしました。アニメ主題歌となったために海外での人気も高い曲となりました。2ndアルバム『金八』がリリースされるとヒャダイン作詞作曲、さつき が てんこもり編曲とインディーズ期の2トップの共作となった「金八DANCE MUSIC」は、曲の題材となったミュージックステーションで披露され、声が特徴的だった廣田あいかが同じ日に出演していたSMAPにハマる等高い注目を浴びることになりました。

 『金八』には魔法少女になり隊提供の「ちちんぷい」、ホーンアレンジや演奏に渋さ知らズが参加した「買い物しようと町田へ」、クリープハイプ尾崎世界観が提供した「蛍の光」他、中々一つのアルバムに集うことがないであろうメンバーでした。

 この時期には覆面ユニット五五七二三二〇というユニットも始動し、KenKenの提供した「半世紀優等生」、菅野よう子作曲の「ポンパラペコルナパピヨッタ」、4曲をミックスすると1つの曲になる「四味一体」と挑戦的な楽曲もリリースされました。

 ORANGE RANGERYO提供の「夏だぜジョニー」の様な夏ソング。「スーパーヒーロー」は歌声を聴かせるような楽曲もリリースされました。『穴空』では、番組共演していたロックバンドHERE尾形回帰による「春休みモラトリアム中学生」、ユニコーンABEDONによる「ゼッテーアナーキー」、後に関ジャムでも注目された吉澤嘉代子提供の「面皰」、KEYTALK首藤義勝提供の「MISSION SURVIVOR」、フジファブリック加藤慎一の提供「お願いジーザス」、ヒャダイン作詞曲でCMJKがアレンジを担当した「参枚目のタフガキ」と有名ミュージシャンも参加しました。

 さらにはMONDO GROSSOでの活動でも知られる大沢伸一作曲の「summer dejavu」や、杉山勝彦提供の「まっすぐ」、初のベスト盤に合わせて製作された岡崎体育提供の「サドンデス」と今ではエビ中との関わりが深いミュージシャンも初めて提供しています。

4.『エビクラシー』と7人体制

 松野莉奈の急逝があり、悲しい形で注目を浴びる中、リリースされたのが『エビクラシー』です。ユニークなジャケットや大正を意識したアルバムコンセプトではありました。その楽しげな要素がありつつも、松野へのメッセージを印象づける楽曲を過去にも提供している作家が制作しました。レキシによる「なないろ」、たむらぱん提供の「感情電車」(楽曲自体は逝去前に完成し、松野も歌唱しているものの、一部歌詞が変更された)、元ジュリマリTAKUYAによる「紅の詩」、CMJK「藍色のMonday」、ヒャダイン「フォーエバー中坊」らにメッセージを感じます。一方で、四星球提供作「コミックガール」、Yogee New Waves提供「さよならばいばいまたあした」、照井順政提供「春の嵐」と音楽的チャレンジもしっかりみえた作品でした。

 応援ソング「YELL」やTOTALFAT提供の「HOT UP!!!」がリリースされ、歌のみを披露するライブ・ちゅうおんも初開催されました。さらにはMrs.GREEN APPLE大森元貴提供の「シンガロン・シンガソン」とリリースされました。2018年1月にエビ中の顔的な役割を担っていた廣田あいかが転校しました。

5.6人体制

 2018年、廣田転校の翌日6人のスタートとなった「」や吉澤嘉代子提供作「日記」のリリースYouTube公開を経て、2018年5月よりサブスクに楽曲を解禁。同日にリリースされた椎名林檎トリビュートアルバム『アダムとイヴの林檎』に参加し、野村陽一郎編曲で「自由へ道連れ」をカバーしました。。前年のメッセージ性の強い楽曲のイメージから脱却するような楽曲「でかどんでん」をリリース。カップリングには、SUSHIBOYSも参加した「熟女になっても(feat.SUSHIBOYS)」他も収録されました。

 いしわたり淳治作詞、溝口和紀作曲の「イート・ザ・大目玉」や、高橋久美子作詞による「朝顔」とタイプの異なるサマーソング、高校生のバスケ大会「Softbank ウィンターカップ2018」テーマソングだった「BUZZER BEATER」がリリース。2019年には、吉澤嘉代子提供の「曇天」やTik Tokを意識したMVの「明日もきっと70点 feat.東雲めぐ」と、多彩さこそエビ中と言わせてくれる楽曲たちが収録された10周年を記念したアルバム『MUSiC』がリリース。エビ中常連のたむらぱんが提供し、先輩・ももいろクローバーZが参加した「COLOR feat.ももいろクローバーZ」、メンバーの歌唱レベルの高さの出た「星の数え方」や宮藤官九郎作詞、ニューロティカKATARU作曲、グループ魂港カヲルも参加した「元気しかない」、5作目の制作楽曲が楽曲提供となったMega Shinnosukeによる「踊るロクデナシ」も収録されました。

 エビ中主演ドラマ「神ちゅーんず~鳴らせ!DTM女子~」主題歌としてリリースされたのが、indigo la Endゲスの極み乙女ジェニーハイ等、多数のバンドとプロジェクト・プロデュースと活動する川谷絵音提供による「トレンディガール」や、表題シングルのカップリング「あなたのダンスで騒がしい」も川谷の提供でした。当時の所属メンバーよりも若いさなり提供の「結ばれた想い」も収録されました。この時期、エビ中が楽曲提供者を呼んだ主催フェス・MUSiCフェスを開催。HERE、ももクロ、吉澤嘉代子、ゲスの極み乙女、岡崎体育、フジファブリックらが出演しました。

 2019年2枚目のアルバム『playlist』もリリースされ、全曲が初提供者による提供作品となった。石崎ひゅーい提供の「ジャンプ」をリード曲とし、ビッケブランカ提供「ちがうの」、ポルカドットスティングレイ提供「SHAKE!SHAKE!」、マカロニえんぴつはっとり提供「愛のレンタル」、iri提供の「I'll be here」等、シンガーソングライターやバンドマンによる提供が目立つ一方、ハロプロ楽曲の作詞を多く手掛ける児玉雨子作詞の「オメカシ・フィーバー」も収録されました。

 2019年~2021年にかけて、安本彩花の二度の休養や2020年のコロナウイルスの流行により、2020年からリリース楽曲も極端に減りますが、その中でも、「23回目のサマーナイト」がリリースされました。


6.ココユノノカ加入による9人体制と柏木ひなたの卒業

 2021年の5月に、桜木心菜、小久保柚乃、風見和香の3人が転入しました。2021年7月に安本彩花が復帰し、その復帰の場であり、6人の最後の場として、YouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」に出演し、「なないろ」と石崎ひゅーいの伴奏でパフォーマンスされた「ジャンプ」が公開されました。いずれも楽器一本の伴奏のみで披露され、メンバーの歌に対する真剣さが伝わる動画でした。

 新メンバー3人も含めた初のリリースとなったのが「イヤフォン・ライオット」でした。児玉雨子作詞、杉山勝彦作曲、野村陽一郎編曲というそれぞれエビ中とこれまでも関わってきた作家が同じ作品に加わる形となりました。同年、大橋ちっぽけ提供による「Anytime, Anywhere」は、翌年発売のアルバムを期待させる先行楽曲となりました。2022年にリリースされたアルバム名はセルフタイトルとなる『私立恵比寿中学』でした。Saucy Dog石原慎也提供の「ハッピーエンドとそれから」やキタニタツヤ提供「宇宙は砂時計」、また「シュガーグレーズ」他、これぞエビ中というべき多彩さを存分に示しました。

 柏木ひなたの卒業が発表されたからも、元ジュリマリ・TAKUYAの提供「青春ゾンビィィズ」他多数の楽曲がリリースされました。自身で楽曲制作している安本彩花は、MAISONdesいえない (Glitch Night mix)」にリミックスで参加しました。「ヘロー」はharha作詞作曲、ササノマリイ編曲でした。

   ベストアルバム『中吉』が発売し、桜井えま、仲村悠菜の転入と柏木ひなたの卒業を意識した楽曲「ボイジャー」も配信され、卒業ライブ、新メンバー披露ライブでも披露されました。

7.10人体制

 2023年は、新たなチャレンジが目立ち、シングル『kyo-do?』は、Tik Tokを中心に流行するカワイイソングを意識しつつもなにか違うものを求め、FRUITS ZIPPER「わたしの一番かわいいところ」も制作しているヤマモトショウが提供しました。

 続く「Summer Glitter」では、K-POPを意識しつつもボサノバ調の楽曲でした。

 オーケストラとディスコを融合したライブ・オケラディスコも開催され、年末に配信された楽曲は「BLUE DIZZINESS」、「CRYSTAL DROP」と翌2024年にリリースの「TWINKLE WINK」は3曲とも佐藤千亜妃が作詞を担当しており収録される予定です。


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