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椎名林檎「自由へ道連れ」と、今更だけど私立恵比寿中学のカバーについて

 2018年5月にリリースされた椎名林檎トリビュートアルバム『アダムとイヴの林檎』。かつて、「灰色の瞳」をデュエットした同郷・草野マサムネが「正しい街」を歌ったり、EMIガールズ仲間の宇多田ヒカルと小袋成彬の「丸の内サディスティック」はじめ、J-POPやそれ以外も含めたジャンルも世代も多種多様なメンツが名を連ねていました。

 その中で、「異色」と称されたのが私立恵比寿中学の「自由へ道連れ」。「なぜ?」という声も多かったものの、ライブ動画が上がって以降は評価の声の印象が強かったです。

 その後、「自由へ道連れ」はエビ中のライブでも高頻度で披露されており、2018年以降だったら完全にエビ中の方が「自由へ道連れ」歌ってるよなぁと。この曲について思うことをまとめてみます。


1.原曲

 原曲は2012年、東京事変が解散した後の第一弾シングルとして配信リリースされた楽曲です。林檎が楽曲提供するタイミングでのSMAPの中居正広と、4曲楽曲提供した栗山千明も出演していたドラマ(後に映画化)『ATARU』の主題歌として書き下ろされた楽曲です。ミュージックビデオには小松菜奈が出演しています。自分の髪を切るシーンも印象的ですね。

↑彼女もエビ中と同じスターダスト所属なので、スターダストと縁のある楽曲といえます。(ですが、ジャ〇ーズ事務所が版権を持っているという…)

 ギターにPOLYSICSのハヤシ、ベースにはGOING UNDER GROUNDの石原聡、ドラムにはDragon Ashの桜井誠という布陣です。ドラムが口火を切るように始まり、イントロからバンドメンバーが躍動。ギターから林檎嬢が最高にカッコよく歌い疾走感あふれたまま、サビへ突入。林檎嬢の歌いまわしも1番2番にも違いがありながら、ロックナンバーに仕上がってます。


2.カバー

 2018年のカバーは編曲に乃木坂46や岡崎体育らも手がけている野村陽一郎が担当しました。演奏陣はギターには編曲の野村陽一郎、ドラム白根賢一とベース高桑圭はかつてGREAT3として活動した二人(白根は現在も所属)。シンセサイザーとオルガンは、椎名林檎のバンドメンバー「虐待グリコゲン」にも参加していた皆川真人となっており、こちらも豪華です。

 コーラスからはじまり、Aメロより最後のユニゾンまでのほとんどの歌割りを、メンバーが1人ずつソロで歌いまわしていきます。

 ポップさもありつつもロックなアレンジで、原曲が間奏から落ちサビ→ラスサビと上げていく流れなのに対して、カバーは間奏部分で演奏が上げていってからの「道連れしちゃうぞ」→そのままラスサビという流れにした点が曲の展開として大きな違いを作ったと思います。


3.発表からリリース当時

 今でも覚えてますが、仕事の休憩時間に何故かエビ中のLINEアカウントから「椎名林檎」の文字が。ただ両方のファンで、発表時から2か月以内に両方のライブへ行く予定があった自分としては、椎名林檎の文字に見慣れてて、これがエビ中情報であることに気づかず、よく見たら、エビ中アカウントからの情報であり、ここではじめて、エビ中が椎名林檎のトリビュートでカバーするという事実に気がつきました。好き同士がこんな形で関わることに、すごく嬉しかったなぁ。

↑後に、メンバーが椎名林檎のライブ(2018年真空地帯)に行った話もしています。


4.評価された要因

 エビ中のカバーに関して、SNSを見ると、とにかく評価されている印象。そもそも、椎名林檎のカバーに興味がなく、シリアルコード目的でしか買わなかったとか、一回しか聴いてなくて、感想をSNSに上げるほどとも思わなかったOTKも相当数いると思われます。そうした事情は考慮しつつ、それでもかなり評価されてだと思います。

 少数の好意的でない意見も曲やパフォーマンスに触れておらず「アイドルだから」が批判要因な意見がほとんどだったので、無視して良い意見かなと笑

 要因としては、①そもそもあまり期待されてなかった。②歌詞がエビ中が歌うことで意味合いが変わり、カバーとしての面白さが生まれていた。③楽しそうに走り回りながら生歌で歌う動画が公開されていた。④エビ中の歌声が絶妙だった。⑤アレンジ自体が良かった。

 ①そもそもあまり期待されてなかった。→正直、発表時点ではあまり好意的でない表現も多かった印象でしたが、それゆえ「意外と良かった」って意見も多かったし、アイドル=口パクor歌が上手くないのイメージが一般的にあったため、そうじゃないアイドルであったことに意外な印象があったようです。(動画公開して正解)もし、後に林檎本人をギターに歌うことになるアイナ・ジ・エンドのカバーがこの時点ですでに世間的に知られた後であったら印象はまた違っていたのかもしれませんが。

 ②歌詞がエビ中が歌うことで意味合いが変わり、カバーとしての面白さが生まれていた。→元々、「ATARU」のために書き下ろされた楽曲であった歌詞が、エビ中に作られたかのような印象に感じたという意見も多かったです。SNSでの考察や、記事も見かけるほどです。考察に関しては他に任せますが、「生きている証は執着そのものだろうけど」という歌詞が原曲では落ちサビで印象的だけど、エビ中カバーはそこを強調しなかったのは、意味があるのかなぁと。

 ③楽しそうに走り回りながら生歌で歌う動画が公開されていた。→エビ中が生歌でパフォーマンスすることをアピールできたことも大きかったと思います。音源だけだとアイドルへの偏見を覆せなかったし、アイドルのライブって楽しそうだなと思わせた意味でも、あの動画が上がったのは大きかったなぁと思います。

 ④エビ中の歌声が絶妙だった。→エビ中の歌声って圧倒的な個性というタイプじゃない。それは多彩な楽曲も歌いこなせる要因でもあり、世間発見されにくい要因でもあり、ポジティブな面もネガティブな面もあるなと思っています。

 他の個性の強いトリビュート参加シンガーと比較して、椎名林檎の歌い方に寄せていっている印象に感じた方の中で、肯定的に捉えた人もおり、一方で6人で歌うエビ中がそれぞれオリジナリティがあると捉えた方の中で魅力を感じた人もいました。個性が強すぎも弱すぎもしない歌声が対照的にも感じる捉え方をする人がいたこの塩梅が絶妙だったように思います。

⑤アレンジ自体が良かった。→アレンジへの評価も高かったような気がします。「道連れしちゃうぞ」の部分も考えたアレンジャーの野村陽一郎の椎名林檎に対するアプローチはBUBKAの2021年2月号のインタビューに答えており、詳細に関しては以下の記事をどうぞ!


5.2019年Mステの編

 2018年以降、椎名林檎は2018年の「椎名林檎と彼奴等の居る真空地帯-AIRPOCKET-」ではセトリに「自由へ道連れ」を入れていました。

 2019年椎名林檎初となるベスト盤「ニュートンの林檎」をリリースし、「自由へ道連れ」も収録されました。(リマスタリングが素晴らしすぎるので、原曲と比較して聴いてください。なお撮り直しはしてません笑)

 そのこともあり、2019年末のMステで「NIPPON」と共に「自由へ道連れ」を披露しました。その際、ギター:名越由貴夫、ベース:中尾憲太郎、キーボード:ヒイズミマサユ機、ドラムス:みどりんというメンツで、爆速で披露されたことも話題となりました。賛否は割れたものの、「NIPPON~自由へ道連れ(悦楽編)」ともいうべき内容を地上波の音楽番組で放ってきたこととそれをこなす演奏陣はすさまじかったです。(若干、このメンバーでも演奏しきれていなかったことだけはちょっと…と思いましたが。)


6.ちゅうおん2021

 その後もエビ中は「自由へ道連れ」を高頻度でカバーしています。ただ、個人的にはもういいかなぁ…と思っていた部分もあって、それは、提供者の音楽と変わらないアレンジのままの楽曲を彼女らの歌声でエビ中の楽曲に染め上げているのがエビ中の好きなところで、トリビュートの性質上、あくまで椎名林檎の原曲とは違うものを求められている「自由へ道連れ」は、自分のエビ中の音楽的な好みとはやや異なるものと感じるようになりました。

 しかも椎名林檎の音楽に対してもこだわりがあるので、エビ中の「自由へ道連れ」の立ち位置が微妙に思うようになってしまったんですね。

 そんな中、2021年9月に開催されたちゅうおんという、バンドをバックに歌のみのパフォーマンスを披露するライブが開催された際、「自由へ道連れ」も披露されました。このとき、エビ中カバーver.の音源をベースにしつつも、ややアレンジを変えてきて、アウトロでは、ベースのサウンドが目立つことで、原曲に近い印象のアレンジになる瞬間もありました。原曲にも少し沿ったアレンジを聴き、エビ中のカバーが久々に良きだなと思いました。




#椎名林檎 #私立恵比寿中学 #エビ中 #自由へ道連れ

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