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【中医基礎理論 第23講】 - 陰陽学説 陰陽転化 - 四季・昼夜=「陰陽消長」+「陰陽転化」

前回の記事では「陰陽消長」を学んだ。

ポイントは3つ。

  1. 陰陽の消長(増減)は、一定の範囲、制約、時間と空間内で動的なバランスを保っている(動的平衡)。

  2. 陰陽の変動形式は「此長彼消」、「此消彼長」、「此長彼長」、「此消彼消」の4パターンである。

  3. 消長平衡の根本原理は「陰陽対立・制約」と「陰陽互根」である。


今回は、陰陽の法則5つ目、「陰陽転化」を学んでいこう。



陰陽転化

陰陽転化とは「事物の属性がある条件化において相反する方向に転化すること」である。

つまり、陰陽属性が特定の条件の下で、逆の性質に変化することを指し、陽属性のものが陰属性のものに、陰属性のものが陽属性のものに転化できることを意味する。

陰陽転化の形式は、陰から陽、陽から陰と性質が変わる質的な変化である。変化には、徐々に転化する形式と突然転化する形式がある。例えば、四季の変化や、昼夜の変化は「徐々に転化」する形式である。一方で、夏の暑い日に急に冷え込んだり、雹が降ったりするのは「突然転化」する形式である。

陰陽転化はすべて、物事の発展と変化が極まった段階で発生する。いわゆる「物極必反(物極れば反転す)」である。陰陽の消長運動が一定の段階に達したとき、「極則生変(極限に達したら変化が生じる)」というように、物事の属性が転化する。《素問・陰陽応象大論》には「重陰必陽、重陽必陰」、「寒極生熱、熱極生寒」と書かれてる。これはどちらも、極点に達すると属性が変化することを指している。

「重」「極」「甚」は陰陽の属性が転化するための必要条件を表すキーワードであり、陰陽の消長変化が極端な段階に達したことを指す。

陰陽転化は、陰陽互根と陰陽互蔵が基盤になっている。陰には陽が含まれていて、陰性成分が主である場合、物事や現象の陰陽属性は陰に属すことになる。しかし、陰陽消長の変化の中で陽性成分が陰性成分を上回った場合、物事や現象は陽性に転化する。これが「陰から陽への転化」である。反対に、陽から陰への転化も同様である。

反対の性質へ転化


四季は一年で2渡、転化が起きる

前回、陰陽消長を学んだ中で、四季の変化について話しをした。

陰陽消長は陰陽転化の前提である。そのため、四季の変化にも陰陽転化が関わるのだ。

冬から春、そして夏にかけては陽気が増加し陰気は減少する。

夏から秋、そして冬にかけては陰気が増加し陽気は減少する。

この様に、陰陽消長によって四季の変化が生じている。

ここで1つ疑問が湧く。

陽気の増加は、いつ陰気の増加に切り替わるのだろうか(逆もまたしかり)?


答えは、陽気が最も多くなった時、つまり「夏至」である。

夏至は最も陽気が多く、最も昼間が長い日だ。

夏至に陽気の増加はピークを迎え(極る)「転化」して、今度は陰気の増加に切り替わるのだ。

そして、この陰気の増加がピークを迎えるのは「冬至」だ。

冬至に陰気の増加はピークを迎え(極る)「転化」して、また陽気の増加に切り替わるのだ。

つまり四季は、「陰陽消長」と「陰陽転化」によって移ろいでいるのである。

四季の変化のまとめ

  1. 冬至から夏至は陽長陰消

  2. 夏至で陰陽転化が起きる

  3. 夏至から冬至は陰長陽消

  4. 冬至で陰陽転化が起きる

四季は①〜④の繰り返しである。

変易思惟で触れました


一日の中でも2渡、転化が起きる

一日の中でも2渡、転化が起きている。

どこか分かるだろうか?


正解は、昼12時深夜12時である。


昼の12時から深夜12時までは、陰気が増加する時間だ。

徐々に日が落ちて夕方になり、日没を迎え夜になり、そのまま夜は深まっていく。

これは、陰長陽消である。

そして、陰が極まる深夜12時に陰陽転化が起きる。

ここから徐々に陽気が増加していく。夜が明けて、そして日の出を迎え、そのまま太陽は南の空に向い昇っていく。

これは陽長陰消である。

そして、陽が極まる昼の12時に陰陽転化が起きて、また陰気の増加に切り替わるのだ。

一日の変化のまとめ

  1. 深夜12時から昼12時は陽長陰消

  2. 昼12時で陰陽転化が起きる

  3. 昼12時から深夜12時は陰長陽消

  4. 深夜12時で陰陽転化が起きる

一日は①〜④の繰り返しである。

1日は陰陽消長と陰陽転化で成り立っている


一日を4等分して陰陽で分類

陰陽学説では、一日を4等分した際、それぞれの時間帯の陰陽の特徴から別称が付けられている。

  • 朝6時から昼12時までは「陽中の陽」
    最初の「陽中の〜」は日中(太陽が地平線より上にある)を表す。反対に、日が沈んだ夜は「陰中の〜」となる。朝6時から昼12時までは、日中のなかでも、太陽が昇り、陽気がどんどん増加する時間なので「陽中の陽」と言われる。

  • 昼12時から夕方6時までは「陽中の陰」
    昼12時から夕方6時までは日中でも徐々に陽気が減少し、陰気が増加し始める時間だ。そのため、「陽中の陰」と言われる。

  • 夕方6時から深夜12時までは「陰中の陰」
    夕方6時から深夜12時までは日が沈んで夜になるので「陰中の〜」となる。この時間帯は、深夜に向けて陰気が最も多くなる時間である。そのため、「陰中の陰」と言われる。

  • 深夜12時から朝6時までは「陰中の陽」
    陰が極まる深夜12時に陰陽転化が起きる。ここから徐々に陽気が増加し、陰気が減少し始める。日はまだ昇っていないが、日の出に向けて陽気が増加しているので「陰中の陽」と言われる。

陰陽を用いた一日の時間帯の別称は、国家試験試験で問われやすいので、きちんと理解しておこう。


月でみられる陰陽転化

月でみられる陰陽転化をみていこう。

《呂氏春秋・不苟論》には「全則必缺、極則必反、盈則必虧(全なれば則ち必ず欠し、極むれば則ち必ず反り、盈(み)つれば則ち必ず虧(か)く)」とある。

この文章を、月の運動に当てはめれば「満月になった後は、必ず月は欠けていく」という意味になる。

つまり、満たされた状態から欠けていくとは、相反する状態に転化したことになる。*満月は陽、新月は陰なので、陽から陰への転化ということになる。

このまま、月が欠けていき、完全に欠けきった=新月になったらどうなるか?

また、「陰陽転化」して今度は月は満ちていく。

《国語・越語》には「陽至而陰,陰至而陽;日困而還,月盈而匡(陽至れば陰になり、陰至れば陽となり、日極まりて還り、月盈ちれば匡す)」とある。※匡す:ただす=転じる

このように、昔の人は、太陽にも月にも陰陽転化を見出しているのである。

太陽は夕方になると西の空に沈む。

沈んで終わりではなく、沈みきれば転じて還ってくる(昇ってくる)のである。

自然界は絶え間ない転化を繰り返していることが分かる。


陰陽消長は量の変化、陰陽転化は質の変化

陰陽の消長と転化は、陰陽の運動変化を表すが、本質的に異なる。

陰陽消長は量的な変化で、物事の属性自体は変化しない。一方、陰陽転化は質的な変化で、物事の属性が反対のものに変わる。

陰陽転化は陰陽消長の結果である。陰陽消長の変化が「極限」に達することが転化の条件であり、陰陽の双方の消長が限界を超えると、その物事の属性が転化するのだ。

疾病の進行過程では、陰陽の転化はしばしば起こる。特定の条件の下で寒証と熱証が相互転化する形で現れるのだ。

例えば、急性熱病では、高熱、顔紅、咳嗽、呼吸困難、口渇、乾燥、洪数脈などの実熱症状が現れる。これは陽証に該当する。熱邪が極端に盛んになり、正気が大きな損傷を受けた場合、突然、顔面蒼白、四肢の冷え、意識低下、微弱脈などの虚寒症状が現れる。つまり、陰証に転化したということだ。この症例の場合、「熱邪の勢いが極端に強い」というのが、陽証から陰証への転化の条件であり、性質が変化したということである。

太陽は毎日2回、月は月2回転化している


寒いのに暑くて服を脱ぐ!?

矛盾脱衣をご存知だろうか?

矛盾脱衣は、雪山での遭難者の遺体が裸の状態で発見されること、または寒い環境の中で脱衣してしまう異常行動のことでである。

寒い環境下に長時間いると、体温が下がる。

体温が一定以下に下がると、体は生命維持のためにそれ以上の体温低下を阻止しようとして産熱を高める。

また、皮膚血管を収縮させ熱放散を抑制することにより体温を逃さないようにする。

この時、体内の温度と外の気温との間で大きな温度差が生じる。すると、まるで暑い場所にいるかのような錯覚に陥ってしまい、極寒の環境下にもかかわらず、衣服を脱いでしまうと考えられている。

はっきりしたメカニズムは分かっていないが、おおよそこのようなメカニズムで起こると考えられている。

陰陽学説から考えると、これはまさに寒さが極まって熱に転化した状態=陰陽転化と考えることができる。

「暑そうだから冷やさなきゃ」と症状に惑わされてはいけない。

温めて寒さを取り除くことが正解だ。


まとめ

今回は「陰陽転化」を学んだ。

ポイントは3つ。

  1. 陰陽転化は、陰陽属性が特定の条件の下で、逆の性質に変化することである。

  2. 転化条件のキーワードは「重」、「極」、「甚」である。

  3. 陰陽転化は陰陽消長の結果で、陰陽消長は陰陽転化の前提である。


次回は法則の6つ目、「陰陽自和」を学んでいく。


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