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【中医基礎理論 第34講】 - 五行学説 - 五行色体表まとめ 食物の五行編

前回は、「人体の五行」を学んだ。

今回は、「食物の五行」をみていこう。

飲食物の五行は、鍼灸ではあまり馴染みがないが、中薬や薬膳、食養生においてとても参考になる。



飲食物の五行

五果(李・杏・棗・桃・栗)

読み方:り・きょう・そう・とう・りつ

「五果は助と為す」といわれ、栄養の補助となる5種類の果実を意味する。

  • 李:スモモのことである。気味は甘・酸・平。清熱、生津、利水、健胃の作用があり、虚労や消渇、腹水、小便不利の治療に適している。

  • 杏:アンズのことである。気味は酸・熱。開胃健脾、消化促進、止渇生津の作用がある。「心之果」ともいわれ、心病の治療に適している。

  • 棗:ナツメのことである。気味は甘・平。身体を滋養し、元気を補充する。また、五臓や陰陽を調和させる働きがある。抗アレルギー、健脳、高血圧やがんの予防・の治療に適している。

  • 桃:モモのことである。気味は苦・微温。桃は皮膚に良いため、「肺之果」ともいわれる。肺病の治療に適している。

  • 栗:クリのことである。気味は鹹・温。身体を滋養し、元気を補充する。栗は栄養が豊富で「干果之王」ともいわれる。高血圧、冠動脈病変、動脈硬化、骨粗鬆症などを予防・の治療に適している。また、「腎之果」ともいわれ、抗老化に優れた食品でもある。


五菜(韮・薤・葵・葱・藿)

読み方:きゅう・かい・き・そう・かく

五菜は五味に基づく代表的な5種類の野菜である。

  • 韮:ニラのことである。気味は辛・微酸・温・渋。五臓を安定させ、胃の熱を除く作用がある。根は煮て食べると補虚益陽・調和臓腑の効果があり、泄瀉を止めたり、お腹の冷痛を治す働きがある。

  • 薤:ラッキョウのことである。気味は辛・苦・温。寒熱を除き、水気を取り去り、気の鬱結を散らす作用がある。煮て食べると、冷えや慢性の下痢に効く。

  • 葵:フユアオイのことである。気味は甘・寒。脾の菜で、胃腸の働きを良くする。滞りったものを通す働きが強いので、妊婦が食すと滑胎(流産)を生じやすくなるとされるので注意が必要である。

  • 葱:ネギのことである。気味は辛・平(葉の部分は温)。発汗作用があるので、傷寒の寒熱や面目浮腫の治療に用いる。また、風邪でみられる頭や筋骨、喉の痛みに効果がある。風邪の時に長ネギを食べたり、焼いた長ネギを喉に巻いたりした経験をお持ちの方も多いのではないだろうか。

  • 藿:マメの葉のことである。藿と腎は形が煮ているので、藿は「腎菜」ともいわれる。補腎壮陽の作用がある。


五畜(鶏・羊・牛・馬・豕)

読み方:けい・よう・ぎゅう・ば・し

五畜は人体を益する代表的な5種類の肉である。

*中国では犬を食べる風習があり、古典でも五畜の記載は馬より「犬」の記載が多くみられるため、ここでは犬を紹介する。

  • 鶏:温中益気、填髄補精(髄を補填し精を補う)の作用があり、気虚少食、頭暈、心悸、月経不調、産後の乳汁不足などに効果がある。特に、高齢者や虚弱者が食すのに適している。

  • 羊:滋養強壮、温補脾胃、補中益気、壮陽益腎の作用がある。高タンパクで低脂肪の優れた肉である。腰膝酸軟、産後の血虚や子宮の冷え、気管支炎など、身体が弱って冷えている場合に特に優れた効果を発揮する。熱性の病気には不適応である。

    話は変わるが、中国の羊肉串は絶品である。羊肉に塩胡椒、クミン、一味唐辛子をかけるのだ。自宅でも簡単にできるので試してみてほしい。クミンと一味は大量にかけることをオススメする(辛いのが苦手な人は一味を少なめにしよう)。

  • 牛:補中益気、滋養脾胃、強健筋骨、止渇止涎の作用がある。中気不足や貧血、めまいに効果が期待できる。

  • 犬:犬肉は熱性で、温補脾胃、腎陽や血脈を補う作用がある。腰膝冷痛、小便清長、浮腫、陽痿(ED)に効果があるとされる。犬肉はニンニクと併せて食べると正気を傷つけるので注意。
    *犬肉の熱性、ニンニクは辛温で刺激があるため、一緒に食べると上火しやすい。「壮火之気衰,少火之気壮」である。また、お茶と一緒に食べてはいけない。犬肉のタンパク質と、茶葉のタンニンが結合すると凝集作用を示す。その結果、腸の蠕動を減少させ、便秘を引き起こす。有毒物質や発癌物質が腸内に留まり、再吸収され健康に悪影響を及ぼすと考えられている。この理屈だと、犬に限らず肉を食べる時はお茶(タンニンを含むお茶)は飲まないほうがよい。しいて飲むなら麦茶かほうじ茶にしよう。ベストはビー・・・水か炭酸水かな。

  • 豕:イノシシやブタを指す。滋陰補血に優れるため、補腎養血、滋陰潤燥の作用があり、熱病による津液の損傷や、消渇による痩せ、腎虚体弱、産後の血虚、便秘などに効果がある。脂肪が多いので、痰湿の多い人は食べ過ぎないよう注意。


五穀(麦・黍・稷・稲・豆)

読み方:ばく・しょ・しょく・とう・ず(とう)

五穀は心身を養う代表的な5種類の穀物である。

「五穀豊穣」 と言われるように、現代人にも馴染みが深い。

《黄帝内経》では、五穀の記載は様々あり、「麻、麦、豆(小豆、大豆)、稲、黍、黄黍、稷、粳米」など、多くの穀物が記載されている。

その理由としては黄帝内経の各篇が編纂された時期や地域が異なっていたからではないかと考えられている。

以下に《黄帝内経》における五穀を紹介する。

  • 小豆・麦・梗米・黄黍・大豆 (素間・蔵気法時論篇第二十二)

  • 麻・麦・穆・稲・豆(素間・五常政大論篇第七十)

  • 麻・麦・梗米・黄黍・大豆(霊枢・五味篇第五十六)

  • 麻・麦・稜・黍・豆(霊枢・五音五味篤第六十五)

※麻は麻の実と考えられるが、胡麻とする説もある。

※麦は、現在の大麦と考えられるが、小麦である可能性もある。

※梗米は「うるち米」のことである。

※豆は小豆と大豆を分けて記載した篇もあるが、特に分類しない篇もある。


最後に

飲食物の五行色体は、国家試験で出題されたことがない。余裕があれば覚えておくといいだろう。

中薬や漢方、薬膳を学ぶ方はしっかり覚えておこう。


3回にわたり、五行色体表をみてきた。

今後、五臓や病気の事を学んでいく中で、より五行色体表への理解が深まっていくだろう。

何度も振り返って復習してほしい。

五行色体表の項目はよく出てくるので、その都度また触れていきたいと思う。

次回は、五行学説の「相生・相克関係」を学ぶ。


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