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【中医基礎理論 第32講】 - 五行学説 - 五行色体表まとめ 自然界の五行編

前回は、「取象比類法」と「推演絡繹法」という万物を五行へ帰属させるための思考法を学んだ。

そして、五行属性に分類したものを表としてまとめたものが「五行色体表」である。

項目はたくさんあるが、一つひとつの内容量は多くないので安心して欲しい。

今回の記事では「自然界の五行」を学んでいく。


五行色体表

五行は木・火・土・金・水である(前提)。

それでは、五行に分類された各項目をみていこう。

自然界の五行

五方(東・南・中央・西・北)

五方は自然界における方位のことで、五位ともいう。

四方に中央を加えたものである。

  • 東:陽が昇る方角で木に属す。

  • 南:暑い方角で火に属す。

  • 西:陽が沈む方角で金に属す。

  • 北:寒い方角で水に属す。

  • 中央:草木が生成する場所で土に属す。


五色(青・赤・黄・白・黒)

五色は五行に対応する色である。

  • 青:新緑の青々しさを意味するため木に属す。ブルーの青ではなく、グリーンの青である(信号機の緑を青というのと同じ)。中国語でブルーの青は「藍」と書く。

  • 赤:火の色であるため火に属す。

  • 黄:黄土という土の色であるため土に属す。

  • 白:金属の色(白く輝くようす)であるため金に属す。

  • 黒:深い水の色であるため水に属す。他にも、天の北方の守護神である玄武の「玄」が、「黒」という意味をもつことから黒が北、ひいては水に属すようになったという説もある。これはまさに推演絡繹法である。


五季(春・夏・長夏・秋・冬)

五節・五時ともいう。

  • 春:草木が芽吹く季節なので木に属す。

  • 夏:暑い季節なので火に属す。

  • 秋:秋は粛殺(厳しい秋気が草木を枯らす)の季節である。また、草木が枯れる様子は収斂(縮こまっていく)しているように見える。これらは「金」の性質と似ているため、秋は金に属す。

  • 冬:寒冷の季節で水に属す。

  • 長夏(土用):土用は各季節の変わり目にあり(立春・立夏・立秋・立冬の前の各18日間)、年に4回訪れる。季節は、急激に変わるのではなく、土用の期間を経て徐々に変わっていく。これは、「五能」の「化(変化、転化)」の性質である。
    その他、夏の終わりごろ(晩夏)を長夏とする説もある。
    《黄帝内経》では、土に配当される時期を晩夏を指す「長夏」とする篇が多い。そのため中医学では、土用ではなく長夏と習うことが多い。長夏はジメジメした季節にあたる。中国の晩夏と異なり、日本では梅雨の時期にあたる。


五能(生・長・化・収・蔵)

五能は五化ともいわれ自然界の変化を5つの段階で表したものである。

この世界は「気の運動=気機」によってあらゆる「変化=気化」が起こる。

気が正常に昇降すれば、自然界は生・長・化・収・蔵を行う。

  • 生:春は草木が芽吹く。それを「生」という。

  • 長:夏は植物が花を咲かせ実を付ける。それを「長」という。

  • 収:秋は植物が枯れていく。それを「収」という。

  • 蔵:冬は植物が栄養を蓄えた種となる。それを「蔵」という。

  • 化:土用の性質で、季節の変わり目である。季節や植物の変化も瞬時に変わるのでなく、変わり目(化)を経て徐々に変化する。
    つまり、生→化→長→化→収→化→蔵→化→生・・・と巡るのだ。


五気(風・暑〈熱〉・湿・燥・寒)

五気は、各季節に応じた外界の気(天気・気候)である。

  • 春は気持ちよく風が吹くので、風は春と同じ木に属す。

  • 夏は暑いので、暑は夏と同じ火に属す。

  • 秋は乾燥しているので、燥は秋と同じ金に属す。

  • 冬は寒いので、寒は冬と同じ水に属す。

  • 長夏は湿気が多いので、湿は長夏と同じ土に属す。


五音(角・徴・宮・商・羽)

読み方:かく・ち・きゅう・しょう・う

五音(角・徴(ち)・宮・商・羽)は5種類の音階名であり、五臓と対応している。

東洋の伝統的な音楽では5種類の音を使って作成されていた。

  • 宮:ド(最も低い音)

  • 商:レ

  • 角:ミ

  • 徴:ソ

  • 羽:ラ(最も高い音で)

宮→商→角→徴→羽で1オクターブを形成している。


余談:音楽における五行の対応

金と商音

金は商音に対応する。商音の特徴は高亢で明るく、金属の質感を連想させるような、しっかりとした明確な音である。このため、音楽において商音は果断さや毅然とした感情を表現するためによく使われる。

木と角音

木は角音に対応する。角音は清新で悠揚な特徴を持ち、木の成長を思わせる生気と活力に満ちている。音楽において、角音は自然の美しさや調和を表現するためによく使用される。

水と羽音

水は羽音に対応する。羽音の特徴は柔和で流れるような音色で、水の流動を思わせる包容力と変化の特質を持っている。音楽では、羽音は柔情や思いを表現するためによく使われる。

火と徵音

火行は徵音に対応する。徵音の特徴は熱烈で奔放な音色で、火の燃えさかる様子を連想させる情熱と活力に満ちている。音楽において、徵音は興奮や熱烈な感情を表現するためによく使われる。

土と宮音

土は宮音に対応する。宮音の特徴は厚みがあり、安定した音色で、大地の堅実さを感じさせる音である。このため、音楽において宮音は荘重や厳粛な雰囲気を表現するためによく使用される。


五行と五音の関係と中医学における応用

五行と五音の対応関係は、音楽理論だけでなく中医学の理論にも深く関わっている。中医学では、五臓が五音に影響を与え、反対に五音も五臓を調整できると考えられている。このため、音楽は古代において病気を治療する方法の一つとして用いられていた。現代の音楽療法の先駆けといえるだろう。

宮音と脾胃の調和

宮音は土に対応し、その特徴である厚みと安定感は脾胃の調和させる。中医学では、脾胃は消化吸収の要であり、宮音を聴くことで脾胃の機能を整え、消化不良や胃の不調を改善することが期待できる。

商音と肺の調和

商音は金に対応し、その高亢で明るい音色は肺脏を調和させる。肺は呼吸器系の中心であり、商音を聴くことで肺の機能を高め、咳や喘息などの呼吸器疾患の予防や改善が期待できる。

角音と肝の調和

角音は木に対応し、その清新で悠揚な音色は肝脏の調和させる。肝は血液の貯蔵や解毒作用を担っており、角音を聴くことで肝の機能を助け、ストレスの軽減や情緒の安定を図ることが期待できる。

徵音と心の調和

徵音は火に対応し、その熱烈で奔放な音色は心脏の調和させる。心は循環器系の中心であり、徵音を聴くことで心の機能を促進し、心悸亢進や不整脈の改善が期待できる。

羽音と腎の調和

羽音は水に対応し、その柔和で流れるような音色は肾脏を調和させる。肾は生命力の源とされており、羽音を聴くことで肾の機能を強化し、疲労回復や免疫力の向上が期待できる。

古代の人々は、この理論に基づいて音楽療法を実践し、病気の予防や治療に役立てていた。


五音と経穴の関係

商は五行の「金」、五臓では「肺」、六腑では「大腸」と同じ属性である。

商は「少商・商陽・商丘」と、経穴の名前で使われている。少商は「肺の気が少しずつ湧き出ているところ」、商陽は「大腸で陽経」、商丘は「脾経の金穴(丘は内果)」である。「商」という文字が名前に付いていれば、同じ属性の「肺・金・大腸」と関係があるのではないかと推測できるのだ。

五音以外にも、五行色体表は経穴と関連している部分が多い。覚えておくと一石二鳥である。



五臭(臊〈羶〉・焦・香・腥・腐)

読み方:そう〈せん〉・しょう・か・せい・ふ

五臭は五香ともいう。

読み方は、臊(そう)、羶(せん)、焦(しょう)、香(か)、腥(せい)、腐(ふ)である。

  • 臊(あぶらくさい):羊肉の臭いに近い。羶(せん)ともいう。草木を食べる動物や鳥には臊臭があることから木に属す。

  • 焦(こげくさい):肉の焦げる臭いである。物を火で焼くと、焦げた臭いがすることから火に属す。

  • 香(かんばしい):黍(きび)や木香のような甘い香りである。甘い臭いがすることから土に属す。

  • 腥(なまぐさい):魚の生臭い臭いである。水族である魚は、金の気を受け継いでいる。そのため、生臭い臭いは金に属す。

  • 腐(くされくさい):腐敗臭である。物が水に入ると腐りやすい。その性質から腐は水に属す。

他にも、「病気の時に身体から発する臭いである」という考えと、「薬物や食べ物の5種類の臭いである」という考えがある。

張景岳の《類経》で「臊気入肝,焦気入心,香気入脾,腥気入肺,腐気入腎也。(臊気は肝に、焦気は心に、香気は脾に、腥気は肺に、腐気は腎に入るなり。)」と記されているように、五気は帰経(生薬や食材が身体のどの部分に影響があるかを示す)と大きく関係している。


今回の記事では「自然界の五行」を学んだ。

次回は、「人体の五行」を学ぶ。


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