落書き31072021

 夜の砂浜を2人連れ立って歩く。あなたはどこか忙しなくて、言葉を探して遠回りしているみたい。
 あなたがうわずった声を出す。「き、今日は月が綺麗だね」
あたしは空を見上げる。空には満天の星が瞬いている。月は、月はない。大きな光を失った空には、名前を知らない星が燃えている。
 隣のあなたを見る。星々の光はあなたの横顔に影を作る。あなたは今どんな表情をしているのだろう。あたしは笑いを堪えて呟く、「死んでもいいわ」。
 あなたは「えっ?」っとこちらに振り向く。今度はちゃんと表情見える。あたしが「なんでもない」と言うと、あなたは目に見えて狼狽える。あたしはあなたの手を握る。あたしのより大きくて、硬くて、湿った手。心臓の鼓動が伝わってしまいそう。ああ、とても楽しい。

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