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ある日の日本経済新聞見出しから:メディアも脱炭素に転換

Before It’s Too Late 通信 −手遅れになる前にー
2021年01月25日 第054号

以前は新聞に気候危機関連の記事が殆どなく、あっても多くは温暖化懐疑論との併記でした。

一年半程前から日経の編集方針が変わったのか、記事が増え始め、元旦の新聞の第一面のトップ記事は何と「脱炭素の主役、世界競う」でした。(朝日も元旦第一面は「共生のSDG」で温暖化特集。)

菅首相の2050年カーボン・ニュートラル(CN)宣言で記事が書きやすくなったのかもしれません。その後も毎日のようにかなりの分量の記事がでています。

例えば1月18日は、第一面トップが「オフィスビル電力 脱炭素」。

その下に、「米政策、早期に大幅転換」。他の面では「CO2貯留 浅い地盤で」。

2つのコラムの見出しは「再エネで日本と新技術創出」「環境激変が迫る改革」とあります。

極めつけは気候イニシアティブ(JCI)の全面広告、「2030年度の再生可能エネルギー電力目標を40~50%に」です。

JCIは気候変動対策に自ら積極的に取り組む企業や自治体、NGOで構成され、1月末時点で540団体が参加するネットワークです。この広告の要請にはそのうち92の企業が名前を連ねています。

パリ協定1.5℃目標を達成するための2050年CN実現には、2030年までに温室効果ガスの排出をほぼ半減させなければなりません。

JCIの要請の背景には、日本の気候危機対策の遅れがあります。

各国の2030年目標を比較すると下表のようになり、JCIは欧米並みの目標を要求しています。

主要国等の2030年の自然エネルギー電力目標は次の通りです。https://www.renewable-ei.org/activities/statistics/trends/20210115.php画像2

企業は脱炭素でも国際競争に晒されています。

Apple社は、サプライ・チェーンを含む事業全体で2030年までのCNを宣言。https://www.apple.com/jp/newsroom/2020/07/apple-commits-to-be-100-percent-carbon-neutral-for-its-supply-chain-and-products-by-2030/

マイクロソフトは2030年までにカーボン・ネガティブ、2050年までに1975年の創業以来排出した炭素量より多くの炭素を除去すると発表しています。https://news.microsoft.com/ja-jp/2020/01/17/200117-microsoft-announces-carbon-negative-by-2030/

企業がこのような目標を達成できないと、これら企業と取引できないことになります。

JCIのメンバーであるソニーの方によれば、国外の事業部門はCNを達成できるが、国内事業はこのままでは達成できないということです。

その危機感が全面広告の要請につながっています。

政府の方針は、地球の環境だけでなく企業の競争力も左右します。

日本だけがいくら踏ん張っても、脱炭素の国際的潮流を変えることはできません。

政府は今、エネルギー基本計画の改定作業に入っています。

改定ではこの現実を踏まえ積極的な2030年目標を設定して、脱炭素をリードするような思い切った政策に転換することを期待したいものです。

そして、私たちの声を「あと4年、未来を守れるのは今・キャンペーンの署名で伝えましょう。http://ato4nen.com/

横山隆美