「人生のテーマ」への向き合い方。本『ミライの武器』を読んで。
夢中になれる「人生のテーマ」は何だろうと考えている人に、おすすめの本があります。吉藤(よしふじ)オリィさんが書いた『ミライの武器 「夢中になれる」を見つける授業』です。
吉藤オリィさんはロボット開発者。身体が不自由だったり病気を患ったりしている人でも遠隔で操作しコミュニケーションできるロボット「OriHime」や、ALS等の難病患者向け意思伝達装置「OriHime eye」などを開発しています。小学5年から中学2年まで不登校だったものの、特技だった折り紙を続けるうちに創作の機会が広がり、高校時代に電動車椅子の発明に関わって世界で表彰されるなど、次々と活躍の場を広げ、今注目の人です。毎日ずっと「黒い白衣」を着ているらしく、その姿をどこかで目にしたことがある人も多いのではないでしょうか。
そしてこの本。
夢中になって生きているオリィさんが語る、モノの見方が実に面白い。逆転の発想のようで、目からうろこの連続なのです。
例えばこのエピソード。
人類は「できない」を「できる」に変えることができる生き物だ。どうして変えられたのかといえば、「それをやりたい」という気持ちを持ちつづけたこと、「できない」への見方を変えたからだ。(p.135)
メガネをかければ、誰でもほぼ等しく視力を補える。車椅子を使えば、誰かにおぶってもらわなくても外出できる。電卓を使えば暗算が苦手な人でもすぐ計算でき、自動翻訳機があれば世界中で質問でき、わからないことは図書館に行かなくても手元のスマホで調べることができる。(p.133)
たしかにそうです。今はできない、だからこそやる価値がある。自分にとって譲れない問題にぶち当たったら、まずは一歩を踏み出して、その反応を得て、小さな失敗を重ねて、一つ一つ改良を重ねていけばいいのです。
折り紙だってそうかもしれない。考えてたってわからないし、手を動かさなければ始まらない。そう教わった気がしました。
そしてもうひとつ。
オリィさんが17歳のとき、科学技術コンテストに出場。進学校の強豪を押しのけて見事優勝、世界大会への切符を手にします。英語とプレゼンの猛特訓をしてアメリカへ。各国代表が集まる世界大会で彼は3位に輝きます。しかしそんな輝かしい舞台で、彼にはずっとひとつの違和感があったという。大会に参加する別の参加者が、嬉々として「私の研究は、私の人生そのものだ」と語るのを目の当たりにして「自分は何のために生きているんだろう」と考え込んでしまったといいます。
ところが、日本に帰ってきて注目されると、高校生の彼に、悩み相談があちこちから届くようになりました。そして気づきます。世の中は自分が思っていたよりも全然完ぺきじゃないんだ。世の中には、社会に適応したいけれど、うまく適応できない人がいる。多くの人が、いろんな形の孤独に苦しんでいる。ということに。そして人生のテーマである「孤独の解消」に人生を捧げようと決めたそうです。
この考えは、不安定な私の精神を安定させる上で、すごく価値のあることだった。「残りの命を使う目的」「まだ死ねない理由」を設定することで、なにをするにもあまり迷わなくなった。(p.91)
そんな風に17歳のオリィさんは考えたそうです。翻って私はどうか。なんとなく考えようとしたことはあっても、残りの命を使う、まだ死ねない、と切迫感のある考え方をしたことはありません。具体的に終わりを想定したことがない、これはつまり想定していないに等しいのかもしれません。このことに気づいた私は、今まさに、自分の使命の言語化に取り組んでいます。
最後に。
この本全体を通して、オリィさんの優しさと温かさを感じます。それは彼が「孤独の悪循環」に苦しんできて、それを乗り越えるために地道な努力をしてきたことや、彼の友人たちが、人との出会いや関りをとても大切にしているからなのかもしれません。
夢中になって生きられる「人生のテーマ」は何だろうと考えている人に、手に取ってもらえたら嬉しいです。
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