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先生をしている、あの人の声を聴こう

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学校で先生をしている人、学校に関わっている人たちが、一歩を踏み出したお話や、新しい何かに挑戦したお話を伺って、インタビュー記事にしています。 更新は不定期。学校教育において、小さ…
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先生をしている、あの人の声を聴こう

知り合いの中に学校の先生はいますか? 学校に勤めていない人、学校と仕事上で接点のない人は、例えば、保護者という立場がなければ、学校やその中の人との接点は、ほとんど無いのではないだろうか。保護者だとしても、よほど積極的に関わろうとしないかぎり、限られた側面しか知ることはないだろう。そうだとすると学校に対して、報道されているようなネガティブなイメージばかりが感じられ、ごく限られた情報だけで、全てを印象付けてしまうようなことになるのではないだろうか。 今回私は、縁あって、ある地方

手立ての話に終始せず、自分の内面に深い気づきを。古賀市立小野小学校3年間の「対話中心の研修」の軌跡

教育哲学者の苫野一徳さんは常日頃、公教育の構造転換が必要だと仰っている。そこには3つの構造転換がある。①学びの構造転換、すなわち個別化協働化プロジェクト化の融合への構造転換、②民主主義の土台として自分たちの学校は自分たちで作るということ、③多様性がごちゃまぜのラーニングセンターになることだ。そしてこの3つを推進するため、根本的な部分で「対話の文化と仕組みを作る」ことが必須だと訴える。その実例として、福岡県古賀市小野小学校の実践をあちこちの講演で紹介しているという。 私(この

人が育つ土壌を耕す|戸田市・学校経営アドバイザーの実践

埼玉県の戸田市教育委員会。公立小中学校の取り組みが“先進的”と言われ、話題になることも多い。この記事では、校長を退いた後、「学校経営アドバイザー」として校長や教職員の伴走支援に心を砕く小髙 美惠子(おだか みえこ)さんと市教委が「縁の下の力持ち」的存在として取り組んで内容について取り上げる。 今回の後編は、①1on1プロジェクト、②根拠ある省察的フィードバック、③研修観の転換に向けた伴走支援、の3つの柱のうち、②③について詳しく聞いた。 (前編はこちら) 対話して練り上げ

孤立させない1on1プロジェクト|戸田市・学校経営アドバイザーの実践 

埼玉県の戸田市教育委員会。公立小中学校の取り組みが“先進的”と言われ、話題になることも多い。ただこの記事では、戸田市が実施する数々の”先進的”な取り組みは取り上げない。取材したのは、校長を退いた後、「学校経営アドバイザー」として校長や教職員の伴走支援に心を砕く小髙 美惠子(おだか みえこ)さんと市教委が「縁の下の力持ち」的存在として取り組んでいる内容について。 令和6年度は、①1on1プロジェクト、②根拠ある省察的フィードバック、③研修観の転換に向けた伴走支援、の3つの柱に注

公教育を支えるキーマンたち「全国の指導主事を応援する会」とは。

指導主事。都道府県や市町村の教育委員会事務局に所属し、地域の学校の校長や教員に助言や指導をする専門職員。学校教員として経験を重ねた実力者が就くことが多いと言われている。一般的にはあまり知られた仕事ではない。そんな「指導主事」を「応援する会」があるということをたまたま知った。有志による任意の活動「全国の指導主事を応援する会」を立ち上げ、運営する瀬川裕也さんにお話を聞いた。 ――まずは瀬川さんご自身のキャリアを教えていただけますでしょうか。 現在私は、ベネッセコーポレーションで

教員自身が新しいものに挑戦すれば、生徒たちの目も輝く|芝浦工業大学附属中学高等学校がSEEラーニングを取り入れるわけ(後編)

24年3月「SEEラーニング」を学ぶ2日間のワークショップが開催された(レポート記事はこちら)。日本全国から教師や教育関係者が多数集まった。参加者の一人、芝浦工業大学附属中学高等学校の教頭を務める斎藤貢市さん。どんな理由で、どんな目的で、この学びの場に参加することになったのか、斎藤貢市先生と、一緒に参加されていた金森千春先生にお話を聴いた。 (前編はこちら) 教員自身が新しいものに挑戦すれば、生徒たちの目も輝くーあらかじめパッケージされた教材をこなすだけでなく独自の授業づ

弱みを言っていい関係があることに気づいてほしい|芝浦工業大学附属中学高等学校がSEEラーニングを取り入れるわけ(前編)

24年3月「SEEラーニング」を学ぶ2日間のワークショップが開催された(レポート記事はこちら)。ここには日本全国から教師や教育関係者が多数集まった。参加者の一人、芝浦工業大学附属中学高等学校の教頭を務める斎藤貢市さん。実は、筆者の私すーじーは、芝浦工業大学の卒業生。首都圏で有名な理工系大学の附属中高の教頭先生が、一見するとややオルタナティブにも見えるワークショップにがっつり参加することが意外にも思えた。どんな理由で、どんな目的で、この学びの場に参加することになったのか、斎藤貢

学校や先生のこと、インタビューさせてください

読みに来てくださり、ありがとうございます。私はこれまで個人的な活動として、学校で先生として働く人のインタビューをして、このnoteに記事として公開してきました。その先生自身が取り組んでいること、その勤務校が新しく始めたこと、様々です。お名前を出される場合と、出されない場合、どちらもあります。 明確な目的をもって始めたというより、出会いの中で、私がじっくりお話を聴きたい、そしてその実践や取り組みを私以外の人にも伝えたい・広めたいと思った人に、そのときどきお声がけして、その機会

地域まるごと学校に。横浜市立西寺尾小学校・石川先生のワクワクする夢

教育関係者だけが集まる小さな読書会で知り合った、公立小学校の副校長先生。勤め先の学校について、現状に課題も感じているが、自慢できるところもたくさんあるという。年度末の忙しい時期、令和6年3月下旬、横浜市立西寺尾小学校の副校長・石川和之先生(4月から他校に異動)に、詳しくお話を聞いた。 地域との連携が学びを豊かにする-地域まるごと学校にしたいという構想をお持ちだとお聞きしました。それがどのようなものか教えていただけますでしょうか。 私が今目指したいと思っているのは、地域をまる

名古屋市教員有志の対話会「新しい学びのおしゃべり会」開催レポート

2024年3月27日(水)、名古屋・新しい学びのおしゃべり会が開催されました。主催したのは、名古屋市の「School Innovationプロジェクト」(※1)の視察研究に参画していた教員(令和5年度スクールクリエイター)の有志。会には約70名もの参加者が集まりました。名古屋市では、幼稚園から高等学校まで全ての学校園が共通して目指す教育の方向性「ナゴヤ学びのコンパス」(※2)が示され、教育のアップデートを目指しています。現場で働く先生たちは「ナゴヤ学びのコンパス」をどう捉え、

教員もまちに出よう!「教員副業コーディネーターまちまち」の活動

公務員は副業禁止。根拠も知らずなんとなくそう思っていたが、それは誤解だった。公務員も、もちろん公立の教員も副業していい。むしろ、することを期待する制度がある。そんな制度を活用しようと動き始めた公立学校教員たちがいるということで、名古屋市のNPO法人「教員副業コーディネーターまちまち」代表の柴山恭毅さんに話を聞いた。 公務員は副業禁止ではない!?-まずはどのような活動をしているか教えていただけますか? まず最初に知ってほしいのは、「公務員の地域貢献活動制度」というものです。こ

校内の教員インタビューから色々な会話が始まる。年代や役割を越えたつながりの芽生え。

今回、関西地方のとある公立小学校にお勤めの先生(Hさん)にお話を聞きました。子育てに伴う退職を経てから現場に戻り、ご本人ならではの関わり方を試してみるなかで、新たな気づきがあったようです。 「異世界につながる住人」を意識してみたら-現在の働き方やご担当などについて教えていただけますか? 以前は常勤の教員として公立・私立中学校に勤めていましたが、子育ての関係で一度退職し、少し余裕の出てきた今年、公立小学校の非常勤講師として現場に戻りました。担当としては、3年生から5年生の外国

6時間目を撤廃。児童も教員も自律した学習者になるために。

舞台は東北地方の小さな町。人口が5000人強、急速に人口が減少し、町内には小学校1校、中学校1校だけ。隣接する市を中心に市区町村が広域連合となり、教職員の人事異動などは概ねその広域内で行われる。今回紹介する学校は、児童が約200人、教職員が約30名、全学年が1クラス、特別支援学級が4つの小学校。そんな学校で起きている変化について、校長先生に話を聞いた。(取材は令和6年3月下旬) 毎日15分のモジュール活用で6時間目をなくした-今、学校経営の中で何か変えようとしていると伺った

学級担任制から学年担任制&教科担任制に。学級4つの小学校で実現へ。

関西地方のある小学校。これまで当たり前だと思っていた、「1学級につき1名の担任の先生」。これを変えて、「1学年の子どもたちを1学年の先生たち」でみていくという仕組みへの変更。令和7年度に向けて準備中という学校の先生に話を聞いた。 学年の子どもたちを複数の先生で見ていく意味-学級担任制をやめて学年担任制に移行するということだそうですが、詳しく教えていただけますか。 当校は1学年4学級あります。従来は、1学級に担任教員が1名ですよね。これを変更し、4つの学級に4人の先生がつき、