ファンタスティック集
想鐘 虎鷹
女王殿下と0015
シーン1 死ぬのは何奴だ
ビージェント0015、青色人タウルスはバーでカクテルを飲んでいた。
同じ青色人の可愛い女性が話しかけてきて、2人は意気投合し、ホテルの一室へと行った。
翌日、タウルスはレストランで食事をとっていて、TVを見ると昨夜の女性がバラバラの遺体として発見されたことを知った。
女性はヨー・ニーと名乗っていたが、タウルスは先に寝たふりをしていたら、彼女は自分の手首につけていた装置とタウルスが足首につけていた装置を取り替えていた。
ヨーが部屋を出て行こうとして、突然、彼女は眠りに落ちた。
彼女がタウルスに飲ませたと思っていた睡眠剤は実は、彼が逆にヨーに飲ませて、彼女が自分につけた装置を彼女に付け替え、元に戻した。
彼が自分につけていたのは実はダミーで、多くの人々がつけていたのとは外見は同じでも、実はまったく違うものであった。
この世界・地平は数十年前までは、無色人の支配する世界で、ようやっとその状態からは、表面上は解放された状況である。
無色人のブック・オンと言われる賭のシステムで金を稼ごうという投資と言われるものを勧めている青色人の同邦人は実は無色人に魂を売った裏切り者で、彼らは最終的には自分が生き残ることを考えていた。
しかし、彼らとて、無色人の意向如何でどうにでもされる可能性に気づいているのか、いないのか‥‥
結局、WWNなどを使って、莫大な金を稼いでいる多くの人も一度走りだしてしまって、止まることも出来ず、いつまで走り続けられるかもわからない哀れな愚か者が殆どである。
シーン2 死ぬのはおそらく皆んな、多分ね
コードネーム0015、青色人タウルスは今日もシャグを楽しんでいた。
彼は、あまり酒というものを嗜むことはしない。人と酒を酌み交わすこともしなくなってどれくらいの月日が流れただろう。
ポンチーゲームで徹夜する時、他の3名が酒を飲みながらしていたとしても、彼はいつもシガレットを吸っていた。
アルコールは頭を鈍らす。それとは反対にニコチンは覚醒作用があり、精神も神経も鋭くしてくれる。
一瞬の判断が大きな流れを掴むか逃すかに多大な影響を及ぼす、この賭け事ゲームにおいては、眠気まで誘うリカーなどを飲みながら、よく臨めるものだと感心する。
もっとも、王取りゲームをしていた時、明らかに素面(しらふ)の時より、ぐでんぐでんに酔っ払っていた方が強い年配男性がいたので、ポンチーゲームにおいても、そんな人々を相手に彼が卓を囲んでいたのかもしれない。
酒で記憶をなくして奇行に及ぶ人々は結構多い。だが、彼は起きた時、一瞬、記憶を失っていたような時を10分ほど過ごしたが、昨夜のことは思い出せた。それも、かなり昔の学生時代の出来事だった。
かき氷を食べた時、頭がキーンとする、という人は結構いるが、彼にはそんな経験もない。
ある人にそのことを話したら、「酒で記憶をなくしたことがないこととそれは関係しているのかもしれない」と言っていた。
ある日の午後、街を歩いていたら、あのヨー・ニーと名乗っていた女性と瓜二つの面影を認めた。
「彼女は殺されたはず」であった。しかし、それはTVでのニュースの話であり、この地平の極北の国のマスコミは如何様(いかよう)な情報でも流している。
仮に嘘を報道してないとしても、殺されたのは彼女ではなかったかもしれないし、局が司直の発表をそのまま電波で届けたのかもしれない。
女は前を歩いているのでタウルスには気づいていない。そして、彼は女性がヨー・ニーであると確信した。
後ろ首にホクロがあったからだ。彼は彼女に気づかれることのないよう、あとを追った。
シーン3 コールドフィンガー
急にタウルスのザイン(この世界・地平で吾々のLINEにあたるSNS)にメッセージが入った。
あなたは、ブック・オンでベットされましたか?
それに答えて曰く。
テニスとかに賭けました。情報を受け取って右向け右のように従うのは嫌なので、自分で好き勝手賭けてたら、映像はなくて、音声だけで、もう少しで勝てると思ったら、なぜか試合が中止に
それと似たような事がまた、あったので、これは恣意的なような気がして、ラマ字(ローマ字のようなもの)で神国語で啖呵を切って送ってやりました
なぜ、中津国語と新羅句語では対応しているのに神国語はないのでしょう? おかしくはないですか?
すると、相手は答えた。
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タウルスが機器でやりとりしている事に気を取られていたら、ヨーはどこかに消えていた。
ひょっとしたら、どこかで誰かが見ていて、恣意的にザインを送ってきたのだろうか。
空腹を覚えた彼は、眼の前のレストランへと入って行った。
シーン4 ゴールデンハート
「なぜ、あなたはNN社の健康管理機器のダミーをつけているの? 」
タウルスが食事をとっていると、後ろからヨーが尋ねてきた。
一瞬、驚いたが、「君は殺されたはず」という言葉も言わず、
「ご機嫌よう」と飲み物を勧め、話を始めた。
「無色人の中にはいい人もいっぱいいる。しかし、彼らの少なからぬ人々は青色人や茶色人のような有色人を人間ではなく、使役する家畜以下のものと認識している」
「それなのにおめでたいこの国の人々は、金が得られると大喜びで、自身の生体や行動のデータを売って、生活し、健康管理まで彼らに委ねている」
「無色人がなぜ、この国の人々に優先的にそのシステムを紹介し、導入させたのか。金融リテラシーどころか生命リテラシーも低い、この国の人は感動的な美談に踊らされ、彼らの真意も探ることもなく、性善説に基づいて、多くがそのシステムに入会している」
「そのシステムを使えば、人々の行動・生命まで、彼らの手中だ。自然死に見せかけて殺すことも容易だ。悲しいことに、世界は性悪説に基づいて考え、行動した方がまだ、安全にできているようだ」
「そう。考えが深いのね」ヨーは微笑むとシガレットを彼に差し出した。
タウルスは疑いながらも、シガレットを受け取り、火をつけ、煙を吐いた。
シーン5 トゥモロー・エバー・リヴ
「まず、悪しき無色人は金融という化物にまで肥大化させたシステムを造り、ピラミッド型の世界の頂点にいつまでも居座り、有色人たちを家畜以下に貶め、支配し続けようとしてきた」
「まあ、金がなくては生きていけないと皆が思い込み刷り込まれているので、すぐにそのシステムをなくせとは言わない」
そう言うと、コードネーム0015は、白い煙を吐き、眼の前の青色の女に尋ねた。
「君の趣味というか、特技はなんだ?」
ヨーはタブレットを取り出し、その画面を、彼に見せた。
「ほう ! 見事な絵だ。これを君が? 」
彼女は嬉しそうに微笑むと、幾分、潤んだ眼差しを向けた。
「君が例えば、その得意な絵を教えるとする。その教えてもらえるためのお金を1ヨーとして、何ゼニーに設定する? 」
「1000ゼニーかしら」
「そんな風に、各々の通貨を発行して、世の中に循環させれば、君は例えば、それで食べ物などを手に入れられるし、絵の描き方を覚えたい子供なんかは、君の発行した貨幣を携えて、君のところへ来る、っていう仕組みを創ればいい」
「素敵ね」
飲んでいるのはソフトドリンクなのにアルコールでも入ったかのような気分に彼女はなっていた。
店内が慌しくなっていた。ニュース速報によるとこの国の要人が急死したという。
TVに映る彼の手首には、NN社の健康管理機器があった。
「やはり、そうか」
彼は呟くとレシートをレジ係に渡し、現金で支払うと、レストランをあとにした。
シーン6 消されぬライフセンス
「今時、現金払いなのね」
「ご馳走様」と言ったあとで、彼の後を追いかけて来て、彼女は笑みを浮かべながら声をかけた。
「なぜ、世界的にキャッシュレスが進み、この国でもクレジットカード払いにすると優遇されるようになっているのか。それは、人々の行動や状態も把握・管理しやすいし、何よりも貨幣を数字上のことだけとして、如何様(いかよう)にでも処理できる」
「人々は車などという一見便利だが、この上もなく有害なものを所有して、大型のショッピングモールなどで買い物をするというライフスタイルだ」
「だが、それでは大事なことは知ることもできず、人にも触れることはできない。本当は小さな店の方が品質は良くて安いものを売っていて、そこの店主やスタッフと会話などをして、繋がりを得ることもできる」
「だが、そんな小さな店は現金払いのところが殆どだ。カード払いにすると手数料を支払わなければならず、経営を存続することが難しくなるからだ」
2人は話しながら、駐輪場に着いた。
彼の携帯電話は一見、キャリア通信のように見えるが、実は周波数が特殊な衛星電話だった。
ヨーは足首につけていた健康管理機器を取り外し、箱に入れ、タウルスから新たな携帯電話を受け取り、自分の体格に相応しいマウンテンバイクに跨った。
シーン7 ムーンウォーカー
「なぜ、あいつは死んでしまったんだ」
世界金融の中心地ドンドンの特別区、イタイアのバカチンのような地区に、無色人・ガングロソクソンの国の重鎮が集まっていて、その中でも一番高位の男は叫んだ。
タウルスの国の要人は彼らに脅されていた。だが、その要人は自国民のこともある程度は考えていたので言わば、板挟みであった。
だが、自身の命の方が大事なので、彼らに逆らうつもりは毛頭なかった。
どうやら、彼の死は原因不明の突然死と認定されたが、それは精密機器のバグによるミスにより引き起こされたらしい。
極北の国では、NN社の健康管理機器に対する不信感が広まっていた。
「健康管理機器を使用していたにも関わらず、要人は死んだ。この機器には本当に命を守ることができるのだろうか」と。
無色人のマリリンマンソンという秘密結社(上記のドンドンの人間たちはその中心メンバーである)はこれを恐れていた。
なぜなら、極北の国の殆どの人々にNN社の健康管理機器を普及させるのが取り敢えずの最大の目的であったから。
そうすれば、彼らは殆どの国民が青色人である人々を好きなように生殺与奪できるはずであった。
これで計画に遅れが出ることは明らかだった。しかも、無色人の中でも、世界のピラミッドの頂点にいる彼らを失脚させようとする人々も少なからずいた。
「わたしは愛と光と忍耐です」
そういう祈りを捧げる人たちも世界中に相当数増えていた。
それに対し、この秘密結社のモットーは
「世界を支配し収奪し君臨する」であった。
会議は3時間ほど、紛糾を含みつつ、続き、決議された。
それは「フェーズQ」というものであった。
シーン8 エバーセイ・エバーアゲイン
コードネーム0015タウルスは、銀色のcross bikeを漕ぎながら、言った。
「MLMやネット社会が広がり、人々はそれによりお金が得られるということもあり、急速にそれらは世界中に広まった」
「それらは人々を繋ぐという役割も果たしている。だが、それを管理する方はパノプティコンの力を有する。位置情報などにより、人々がどこにいて何をしているのかも管理・誘導も可能な社会は既に実現している」
「必要とあらば、偶発的な事故として、特定の人物を消すことも可能な世界に吾々は生かされている。挙げ句の果ては、キャッシュレス、健康管理までその当局に手渡し、生殺与奪はすべて彼らに握られてしまっている」
「自由などはもうないも同然だ。その上、思考の自由まで制御されたら、自分は自由に生きている、と思っている人間は果たして、本当に自由に生きているのだろうか」
「人々は自身や家族の生命を保全するのに必死だ。つまり、心は既に死んでいる。自分で考え・行動していると言える人間は果たして今の世界にどれくらいいるか」
「情報、重要な情報は大金を出さないと得られないとよく喧伝されている。つまり、情報により、人々は既に分断されているのだ。勝ち組・負け組、そんなことを吹き込まれ、皆、勝ち組には入らなければと結局、踊らされているに過ぎない」
「おまけにそのネットを支配する組織に吾が国の首相経験者が金を出して自身に都合悪い動画配信などはコントロールするという事態にまで及んでいる」
「動画配信さえ、ある目的のため、歪められ、誘導されている。そのコントロールしている者の上というか影にいる本当の支配者は果たして何者か」
「ここで問いが突きつけられている。各が何を自分の望ましいこととし、何を望まないか。よく、善悪と言われている問いだ」
「善悪とは、結局、自分の好みに過ぎぬのかもしれない。だから、好嫌と行った方がいいのかもしれない。相手か自分か、どちらかが生き残れないとしたら、それは争いになるだろう」
「大事なのは、そういう状況とは常に仕組まれて人々に提示されているということに気づくことだ。相手も自分も他の誰かも十分に生きていけるのに、自分が生き残るためには他者を排除しなければならないと吹き込み、そういう事態は演出されている、という視点・視野を保ち続けること」
「誰かが君を害するために近づいてきたら、君はその人を慈しみの眼差しで包めるか。そんなことは、とても難しいだろう。だが、それを実践できるか否かが、吾々ひとりひとりに試されている」
ヨーはマウンテンバイクのため、彼のcross bikeほど、全速で漕いでも、スピードは出ない。サスペンションのため前進する力が削がれるためだ。しかし、ちょっとした凸凹などがあっても、そのバネのお陰で体には衝撃もそんなには及ばない。
彼女には彼が何者で何を考え、何をしようとしている存在かはある程度、既にわかっているようであった。しかし、彼は彼女が何者かは殆ど知らない。
だが、その何者かもわからぬ者に、ほとんど隠すこともなく、率直に話している。
そのことを両者とも疑問も感じず、不可思議にも連れ立って夕暮れの街を進んでいた。
シーン9 0015は何度死ぬ
ヨーはある日、忽然と姿を消し、連絡も断った。
タウルスには彼女の情報は殆ど与えられてはいなかったが、短いやり取りの中で、彼女が傷ついて来たことが知れた。
この世に生きている人の中で、傷ついていない人などは皆無だろう。
ただ、それを自身が如何(いか)に捉え、如何(どう)生かすか、で我々の生は多大に変わってくる。
男勝りで・雄々しく・しかし、感情表現が特に不器用な彼女のことであるから、自分ひとりで決着をつけたいというか、納得できるまでやりたいのだろう。
0015はどうするのがいいか、絶えず、葛藤していた。
自分の人生は自分が創っていくもの、それはわかっている。
では、そこに登場する、自分と同じような形態の「人」とは一体何で、どう関わって行ったらいいのだろう。
それは、ヨーにとっても同じかも知れない。
否、生きている人、皆の課題であり、人と人の間、所謂人間と呼ばれる存在に関しては、最も重要なメインテーマ、ライフパーパスなどと言われるものであろう。
人は何度死ぬほどの事を経験し、乗り越えれば幸せにたどり着く、のだろう。
タウルスは、自死を企て、その時、何か大いなる者、とでもいうべき存在に助けられた、そう感じている。
前世や来世などは知らぬし、それ(特には来世)を知れることはかえって不幸なように感じられる。
人が十全に活動できるためには、多すぎる情報は寧ろ邪魔であるし、少なすぎると及ばぬことも多いであろう。
だが、未来を志向して生きるなら、武装して飛び込むより、無防備に挑んだ方が楽しい、そう至考している。
シーン10 ワールド・イズ・リアリィ・イナフ
雨模様の鈍色(にびいろ)の空を0015タウルスは一瞥しカフェのカメロオンを見つめた。
そのカマという名の変色生物は様々に色を描き、自身がキャンバスだった。
それが彼(女?)の表現であり、本質であり、本質とは不変の性質とディファインされているが、その生物の本質とは絶えず変わり続けて止まぬことだった。
人は様々な物事により、自身を表現し、そのなんたるかを示している。
ある者にとってはそれは服装であったり、他の者はビジネスと言われるもの、かの者は宗教とかを信じ活動することがその存在の証(あかし)となっている。
0015にとって、言語表現でなかったものを出現させ、眼前のものを一瞬で隠すことが、自身のアイデンティティであり、それにより、充実・爽快を感じている。
煙を燻らしながら、音声を聞き、キーを打ち、紡ぐ文字を生成させながら、意識の低層で考えているというか抱(いだ)いているのは多分、いつも同じ似たようなことであろう。
PCを長時間、見つめているせいか、やたら目が乾く。
マグカップにコーヒーと砂糖を入れ、暫しレスト。
爛爛とした生を描くには何が必要か、と絶えず探り動いてはいるが、不思議と心は平静でいられている。
雨だれを聞きながら、「群れるな」という音声を耳にし、「自分の基準を持ち、即決し、やらないことを決めろ」の言葉に、サプライズを齎すことを模索し、文の連なりが生み出されていく。
大量生産・消費の世界のために奴隷化され働からされている人々のビルの崩壊の情報を受け取る。
ライド・オン・ザ・タイムでトレンドに乗り、どこに辿り着くかは解りかねるが、共感の重要性、利益の追求の不要性、情報を発信し、所有よりも経験を選択したいと強く感じる傾向に世界は動いている、と声が心を誘(いざな)う。
自治体のメガホンスピーカーで何かの報を送りくるが外音の活動の活発で内容を聞き取れぬ。
心の声を訊けとはよく言われるが、それはどこかから、なにものかを超えてやって来る。
肥太る醜醜な人々の吐き気と排泄が同時に襲うような行為の数々を知り、世界の開かれた人々は、何を欲し、何を捨てるだろう。
健康機器を自身に身に付けた人々は、電波情報によりコントロールされている己が身にも気づいている者は殆どいず、長生きでき、しかも、経済的にも潤うと、その危険性にも認識は及んではいない。
なんのための長生きで、誰(た)がための、「経世済民」か。「経世催眠」では ?
送られて来る「健康的」食べ物に何が入っているか、疑問も持たず、人々は盲目的に喜んで摂取する。
被験されているのにも気づかず‥‥
思考しても至考を求めず、その内容も即物的な事象のみ。
この国民(くにたみ)は苦に他見ぬ程、敏感でそれを恐れ忌避する。
苦を味わえればこそ、楽はその輝き・快感・爽快を壮大にする。
多くの人々には、「The world is not enough」が紛れもない実感であり、現実であろう。
だが、眼覚めた、ほんのひとつまみの人は知っている。
この世は、悪醜が漂っている。それにも拘らず「The world is really enough」であることを。
シーン11 ダイ・セイム・デイ
ヨーは自身が所属している組織で尋問のようなものを受けていた。
0015自身と背後の組織について、どこまで知っていることを言うのが適当か、絶えず考えながら、査問員には答えていた。
彼女は彼を思い出していた。
「なぜ、あの男は得体の知れぬ自分に、あんなにも隠し事もなく、オープンになんでも話せるのだろう」と。
そして、自分の属している組織とタウルスの言動を心の中で比べていた。
彼女は彼に一度、
「比べないで」
と言ったことがあった。
彼は自分の非を認め、すぐに謝罪した。
その自分が今は比べているのを知ったら、彼がなんと言うか、が気になった。
そして、この組織が現在、計画進行中のフェーズQなるものの内容を一刻も早く正確に把握し、何よりも彼に知らせよう、そう考えていた。
特殊能力者の彼女だが、出来ることと出来ないことのギャップは相当あった。
不思議な他者にない能力はあるのに、他の多くの人が持っているなんでもないような能力などは欠落していたと言っても過言ではなかった。
そして、器用そうに一見見えて実は不器用な男と自分の関係を考えていた。
長時間に及ぶ尋問から解放されると、彼女は眠りについた。
トリプルスパイの彼女は、自分がこれからどう振る舞うのが得策か、頭を悩ませながらも、夢で会いたい何者かを想い、胸が騒いでいた。
シーン12 錆びた銃を持つ男
0015は夏の日の昼あがり、女性の声の電話を受けた。
声は電子機器で変えられていたが、話の内容などからヨーであることが知れた。
なぜか、目覚めた時から予感がしていたことを脳裏でネガのように絵がかすめた。
彼女は「フェーズQ」の内実を、3分の1ほど掴んでいた。
だが、それをどう伝えるか……
彼女が今いる組織では、彼女が彼を嵌めるために電話をかけているという認識であった。
そして 、もともと彼女が初めから所属していた組織はビッグデータで彼女の動向を追っている。
それに加えて自分と同じ青色人のタウルスの属する協立境開のトリプルスパイの自分。
彼女は自身の命はほとんど諦めていた。
彼女が今、電話をかけている相手は、彼女の話したことをそのまま受け止めるだろう。
多少の読解を駆使しつつ。
2人はある程度の符号・暗号のようなものを定めていた。
そして、普通に話していて、不可思議な暗合めいたものを共感していた。
それがとても、嬉しいような・驚きのような・魂の喜びを感じていた。
電話でどのくらいの時間話していたか、両者はまったくわからなかった。
1時間のようなほんの5分間だったような──
話し終えて電話をしまうと、彼は思考し始めた。
まず、彼女の身の安全を確実にする動きを主眼として。
そして、悟った。
「計画とは立てるだけ無駄」であることを。
いつも、ノープランで、出たとこ勝負。
なるようにしかならない、というか「するようにしか出来ない」
昔、このランディバースのこの国では刀というものを帯びた人々がいて真剣ではない「錆び刃」というものを所持し歩いていた者も相当数いた。
彼は銃を所持していたが、構えることはあっても、人に向けて発砲したことはない。
所謂、彼は「錆びた銃を持つ男」であり、その弾も殺傷能力などない「活弾」であった。
シーン13 エバー・アゲイン・セイ・エバー
0015はcross bikeに跨って動き出した。
ヨーが連絡を絶って、どれくらいが経っただろう ?
もう1年くらいが過ぎようとしていた。
彼女の安否を確かめるため、幾らmessageを投げかけても、返信はなかった。
ただ、生きているであろうことだけが想像できるのみであった。
何処にいるのかも杳として知れなかった。
幽かに交流があったとき、タウルスはランディバースのこの国の隣のディストリクトへ行った帰り、月のない夜、山中を進んでいてライトを点けても真っ暗で見えないなにものかが出そうな不気味な初夏の寒中彼女に連絡をして「守ってくれ」と頼んだ。
彼女はエネルギー体のようなもので他の天体へも飛んでいける、ということだった。
「同じひとつの世界に棲み、それぞれの宇宙を生きている」という考えをしている彼にとって、不可思議な話ではあるが、否定する根拠もなかったので、彼女の体験している宇宙を否定する考えもまったく持ち合わせてはいなかった。
地元のディストリクトに入っての観光施設で暖をとって、彼女に連絡をし、無事だったことの礼を述べた。
WWN(ワールド・ワイド・ネット=所謂吾々の世界のWWW)で管理社会が完成されていたこの世界では、所謂、自動車や自動二輪も人工知能により制御され、自分で自由に動くには自転車が1番便利だった。
折からの雷雨で稲光が叫んでいた。
彼は、道すがらの民家で雨宿りをし、レインスーツを身につけ、シャグを愉しみ、一息ついた。
彼女にまた、「守ってくれ」と頼むためmessageを送ろうかとかとも考えたが、ただ、心中で祈るだけに止めた。
「そう想えばそうなる」のがこの世界の実相なら、彼が彼女に守られている、そう想像し、祈るだけでもご利益はあるはずだ。
実用主義とかいう思考では、「神が存在するか否か」は問題ではなく、「神が存在すると考えたら、自分の人生が幸福なものになる」なら、それでよし、とする。
もし、「神が存在しない方が自分にとってすっきりしてよりよく生きていける」なら、そのほうがよい。
つまり、真実・事実・真理といったものは、自分の人生に役立つように如何様にでもするのがよい、というのがその思想の主張である。
人は他者の心中を慮り、苦しむことが多すぎるように感じられる。
他者の心は如何に把握しようと、自身のやりたいようにやるがよかろう。
もし、まったく外れて、下手なことになったとしても、その時はなるようになったらいいだろう。
基本、嫌われてもいい、不利益を被ってもいい、と覚悟していつも事に当たっていたら、人生は予想したものより上手く行く、みたいである。
シーン14 ドクター・イエス・ノオ
ヨーは遂に、「フェーズQ」の全体像を掴むことが出来た。
ランディバースの青色人の極北の国の人々を健康管理のシステムに加入させ、その内実は人体実験であり、そのデータを無色人のため、役立てている。
そして、それをし終えたら、その国の無色人にとって都合の悪い人物を自然死に見せかけて消していき、多くの人々を自然な形で疾病状態に陥らせ、製薬やワクチンを高額な金銭で売りつけ、経済的に搾取し世界を支配する、というのが大まかな内容であった。
しかし、極北の国の青色人の体は大概デリケートであり、無色人の殆どの体は頑丈であった。
故に、痩せすぎの青色人を太らせるように調合した食品を無色人に施すと大抵は凄く太りすぎになり、それを解消しようと痩せるように食品を調合して与えてもなかなか痩せるのは難しい傾向であった。
また、反対に太りすぎの無色人に、青色人向けの痩せる食品を与えても、なかなか痩せるのは難しく、つまりは頑丈と言えば聞こえはいいが、よくない表現をすると鈍感であった。
ヨーはタウルスが以前、彼女に話した言葉を反芻していた。
「もし、夢に自分が出て来るようなことがあったら、出演料を支払ってほしい」
彼は、心から笑って言葉を放ったが、彼女は少しはにかんで微笑した。
「今までの出演料を何で支払えと彼は言うかしら……」
もう、交流を断ってから、1年以上が経過した。
自分には彼の行動を縛る権利もなにもないであろうことはわかっていた。
だが、「待っていてくれている」そう信じていたかった。
0015は自身でも、人との交流は好きであり、結構、失敗することもあるが、概ね、成功しているつもりでいる。
特に、美しい異性へのコミュニケイトはそつなくやっているように見えているかもしれないが、それは概ね、会話上のことだけであり、実際の具体的な交流は皆無と言ってもよかった。
「あ~あ、なにを囚われてるんだ ? 適当に遊べばいいんだし、それでなにも悪いことはしていないはずだ。それにしても、なんでこんなに不器用にできているんだろうなあ──」
自分は自由に振舞っていいんだし、自身の幸せを第一に行動しても罰は当たらない、そう彼はいつも考えている。
人は夢を見ても大抵は忘れているというが、彼の夢にヨーが出て来た記憶は皆無である。
不可思議な能力者のヨーは夢で何度もタウルスに情報を告げていた。
だが、肝心の0015は夢を受け取っているのかいないのか……
彼は情報をヨーが送ってくれているとは露ほども記憶にはないが、推理力かなんなのか、大体の無色人の計画はわかっていた。
想像力と現実世界を観察すれば大体、把握できる、そう彼は感じていた。
タウルスが折からの雷雨に襲われ、彼女に自分の身の安全を加護してくれるように祈っていた時、ヨーは夢の中で、エネルギー体となって、cross bikeを漕ぐ彼の少し上で彼を事故等に遭わぬよう見守っていた。
シーン15 スカイ・ライズ
お互いに逢って話が出来たら、したい、そう念じていた。
ヨーはヨーで毎晩、夢で語りかけているのにまったく、それを記憶していない相手に苛立っていた。
たった2つの質問で、正確に自分の誕生日を何年何月何日と言い当てた、タウルスに対して彼女は警戒心のようなものを抱いた。
「ひょっとしたら、自分の幼児体型も、彼は見透かしているのではないか ? 」そう感じると迂闊に自身の情報を与えるのは躊躇われた。
なんか、話すことによって、自身が丸裸にされる、と予感しただけで、体の内側が「6月」と英語で、数度、呟いた……
0015は0015でもう、疲弊していた。
こんなに一方的に自己開示して洗いざらい情報をSNSで相手に与えているのに、その相手からは何の音沙汰もない。
これでは幾ら、彼女を無色人の組織から、救い出そうにもどうしようもない。
様々考えているうちに、頬が濡れていた。
純粋に想っていた──
予知能力があるという彼女の話を聞いた時、彼は「可哀想に」と言葉を漏らした。
そして、同時に「凄い能力だ」と言ったら、「上には上がいる」と彼女は事実を平然と話した。
自身の前途が予めわかってしまった世界に、人は生きたいであろうか。
未来はわからないからこそ、喜び、怒り、悲しみも、新鮮にビビッドに味わえる。
0015タウルスはそう考えている。
彼女の身の上に同情を寄せた男に、「自分はこの能力を人々の為に役立てたい」そう打ち明けた。
彼は「それは素晴らしい ! 」、「悪い未来なら、それをよくするように出来たらいいね」と返した。
ヨーもヨーで最早、記憶も曖昧になっていた。
自分は「フェーズQ」の内実を自身で掴んだと彼にその内容を得意気にはなしていたが、本当は、彼がその内実をその推理力によって言い当て、自分に語りかけていた、そんな絵も脳裏に活き活きと焼き付いていた。
両者とも何が現実で、何処までが想像で、いつ夢の中にいるか、判然とせず、すべてが曖昧になっていた。
どうせなら、夢の中で暮らせたら……
「いつもエネルギー体になって、飛んで行って見守ってあげているのに」それを多分、自覚していない相手に対しても、彼女は恨めしく感じた。
自分がこんなに想っているのだから、多分、相手には伝わっているはず、多くの人はそう考えているし、そのようなロマンティックなことが事実で普通に世の中がそのように廻っているなら、この世界のあまりにも多すぎる悲劇は起こってはいないであろう。
言葉を生き、言葉によって多くの存在を活かし、言葉によって世界をよりよいものにしていく、そう決心している男は、何の言葉もくれない相手にもう絶望を感じていた。
こんなに切望しているのに、与えすぎだと託宣を受けているにもかかわらず、それにも損している、と感じもせず(本心では感じているのであろう)、自分は言葉を捧げ続けている。
謂わば2人はすれ違いである。
不可思議な力を駆使して相手に尽くしているのにそれに気づいて貰えない女、言葉を想いの丈を相手に惜しみなく投げかけても何の返答も得られない男……
数日も起き続け、最早、限界に達した男は疲れ果て、女に訣別の言葉を残した。
「太初に言葉ありき」
ランディバースのこの世界でも、すべてを開く鍵は言葉が握っている。
それが真理・真実・事実、なのであったのか──
シーン16 カジノ・シトワイヤン
世の中の半数の男女は失敗する為・自分たちが上手く行かず・結局永遠の愛などは得られず、つまりは失望・痛みを体験するために婚姻関係を結んでいる。
そう考えて一緒になるカップルは恐らく皆無で、幸せになれる、あるいは打算で家計を共にしている人々は多い、それが人々を観察し、冷静な思考を働かせて見れば気づいている人も少なくはないだろう。
別に失敗が悪いわけでも、成功が一概に価値のある、ことでもない。
そこから何かを学び、自身や人々の悩み・苦しみを痛感することにより、人格が向上し、自他のために役立てることができればそれはとても尊いことだ。
成功しているカップルでも、社会や他者に大きな害毒を巻き散らかすことしか出来ていないものたちもいる。
彼らは成功していることにより、それ以上の失敗というより、巨大な失策・失態を晒している。
「禍福は糾える縄の如し」という言葉もあるが、「上善は過度な期待を相手に抱かず、Knowing me, knowing you」とでも言えるであろうか。
ヨーはなんの衒いもなくありのままを語りかけてくる男につい、自身のあまり上手くは行っては来なかった恋愛体験を漏らした。
0015は心から同情し、声をかけた。
この世の殆どの人は何らかの痛みを抱えて生きてきてるし、生きている。
彼の望みはそんな人々のうち、自身と縁ある人々との一緒の幸福だ。
だが、そんなことは果たして可能で、それを例えば、パートナーと呼ばれる存在は心情的に許せるものであろうか……
だが、不可能と感じられていることを実現し、新たな価値観・世界観で人々を自由にし、前代未聞の幸福な世界を樹立することが、真の豊さ・勇気・忍耐・達成であろう、彼はいつもそう考えている。
だが、今、念頭にあるたったひとりの女も幸せに出来ないうちにそんなことを実現することは到底、不可能だし、ただの妄想にしか過ぎない、そう心底から感じていた。
彼は彼で女を求めていた。
そして、彼女は彼女で━━自身認めたくも、意識もしたくないことではあるが男を……
そして、ヨーはエネルギー体で見守る男が苦しんでいるのをただ見ていることが出来ず、そっと肩に手をかけ、頬を寄せ、体を#$&=~@!?+-¥
タウルスの何かが急に反応した。彼は想像の中でヨーに笑って恥じた。
彼にとってはただの少し虚しい想像だったが、彼女にとってはリアルなとても勇気のある創造だった。
男は窓外の樹々で少し暗い午後の風に戦(そよ)ぐ緑葉の揺れを見つめていた。
女は外で半円の少し青い月を見上げていた。
シーン17 王女殿下の0015
男はこの時代には珍しくなったラジオの音楽を聞いていた。
「さくら、さくら、いつまで経っても来ぬ人と‥‥♩」
女は無色人組織の一室で隣室の女性がつけているPCからの音声を聞きとった。
「わたしは泣いたことがない‥‥🎶」
「I once had a girl or should I say she had me‥‥♫」
流れくる調べを意識しつつ、男は彫刻刀を動かし、「ネオ・ウロボロス」なる作品を彫りあげた。
「You light up my life‥‥♬」
自分が嘗て物語を書いてWEBに投稿していた時分、結構なPV数があったと告げると男は「凄い」と心から称賛した。
そして、「どんな物語 ?」と尋ねると、女は「んー、なんだったんだろう ? 」と言った。
そうすると「純文学 ? それとも、不純文学? 」と言葉をスローされた。
その語呂がとても可笑しくて、久しぶりに笑い転げた。
以上のことがいつあったことか、それともこれから起こり来ようとしているのかは最早、はっきりとはしない。
女は特殊能力で過去世なるものにもアクセスできるらしかった。
勿論、念頭にある男との様々な記憶やエピソードをも所持している。
それに対し、今現在の生に関しても心許ない男はただ一心に描く未来とはどのようなものであるのか━━
ランディバースのこの地平世界にも様々な世界観があった。
結構、「生まれ変わり(輪廻転生)」を信じている人間もいる。
「宇宙人は存在はしない」と考えている者も少なくなかった。
悪魔と言われるものを恐れる者、崇拝する者、など様々いた。
もし、「その悪魔というものを抱き締めたら‥‥」と男は考えた。
「堕天使と言われている彼(女)らだから、元々は善良だったはずだ」
「彼らが、堕ちたのは嫉妬心からだった」
「本当は神のもとに戻り、幸福な世界を作りたい、のではないだろうか ? 」
「対立の構造で眺めるから、神と堕天使は永遠に争っていて不幸なのだ」
「お互いを容認し、睦まじかった時を想い出せたなら、そこに和解が出来(しゅったい)するだろう」
勿論、神と悪魔と言われるものごとに詳しい訳でも、世界の実相を捉えている訳でもまったくない。
だから、ただの想いつき、感じたことである。
「さー、寝るよー」
女がそう言うと、男は
「いやん。恥ずかしい‥‥。痛くしないでね。優しくしてね」
と戯(おど)けた。
女はどのような情を顔に表していたかは定かではないが、少し心を軽くして
「ひとり芝居 ? 」
と応えた。
「過去世」「現世」「未来世」とはよく聞く言葉ではある。
それが、事実だとして、一体、どうしたと言うのか。
未来世の悪化を恐れて、事を為したり・忌避して生きて行くのか ?
突然、曲が頭を過(よ)ぎる。
「突っ走るだけ〜♬、一億の夜を越えてー🎶」
シーン18 ゴールデン・サファイアは永遠に
様々なアクシデントが重なって、「フェーズQ」はまだ時期尚早であり、もっと綿密なデータを収集する必要がある、と無色人組織は決定を降した。
そんなこんなでカオス的状況が重なる内に、組織内の善き心を抱いている数人の無色人にディスクローズする者たちが現れた。
これにより、世界的に非難を浴びた組織はその悪計を改めるを得ずをなくなり、ランディバースの地平の極東の青色人の国の多くの人々はその命体が保全されることに落ち着いた。
嘗て、バグにより、要人が自然死に見せかけられた殺害事件が発生したことがあったが、それは何処かの国のAIに詳しい者が無色人組織のシステムに侵入しようとして起きた事故であった。
しかし、それを調査追及しようにも、今では無駄であり、死んだ者は還り来ず、余計な問題のタネを蒸し返すのも躊躇われた。
ヨーは無色人組織からはお役御免となり、自由の身となり、最初から属していたマスターのいる組織のために動いていた。
トリプルスパイというのは謂わば、彼女の心の中でのことであり、3番目の組織のスパイとなったのは彼女の情の働きによるところが大きかった。
取り敢えずの危機は脱し、世界は平穏を取り戻し、より人々にとって幸せな方向に向かっているような雰囲気である。
だが、サイクロン・ハード社のトム・ビェータという実質的オーナーで表向きは篤志家の世界を管理支配することを企む者が人々の家畜化を着々と進めている……
これに対し、地平世界の人々はどのように動くのか。
唯唯諾諾(いいだくだく)と金による支配に乗って、予防注射とやらを受けたり、管理されることを選択し、生殺与奪を握らせるのか━━
可能世界のそれぞれのマルチバースは何処でもよりよい場になって行く為に存在する。
幾ら問題を解決しても際限なくまた発生するのは、問題がないと人々はなにもすることがなく、真の幸福=至福と言われるものを堪能するため。
男はクリーム色のMeedy Hox に跨り漕ぎ出した。
「ときめき、痛み♫」昔聴いた曲を口ずさみながら。
女のことがまた過(よぎ)ったが、すぐ、大丈夫、と呟いた。
何処にいるのか不明だが、「いつも側にいて守ってくれている」
かなり前から、そう想い込む、と決めていた。
女は蒼色のバネのついたバイク(彼女の認識。一般的にはサスペンションと云われている。自転車に関しては詳しくはないため。だが、ライディングの技術はなかなかだった)を漕いでいた。
「ねぇ 神が咎めたって あなたを♩」絵はとても得意だったが、歌は……まあ、アヒルやガチョウよりもいい声である。
何処かの国の朱雀方角から、男はライディングして、眼前に十字路を認めた。
「瞳を揺らせて 終わらない♬」男は大抵は真っ直ぐ道を進むのに此度は右に行くと決めた。
女は青龍方向から、足を回転し続けていた。
いつもは預観能力とでもいうものを使って行き先を決めるのだが、その時はなんの気なしに「左」と決めた。
極東の国の世界北辰具カンペオン・カッツ松石が嘗て
「カッツさん、太天はどちらから昇りますか ? 」と訊かれて
「んー、左の方」と答えたことを想い出したからである。
両者が同じ座標軸・時空に存在しているのかは定かではない。
だが、互いがその存在の根柢から、求め確心し、エブリスィング・グレートとでも呼ばれるものを信頼し、更に自身の生の鍵は自分が握っている、と知っているとしたら……
「ずっとそばでわたし夢を紡ぐわ 夢で出逢えたなら🎶」
大声で心から想いを絞り出した。
人は「運命」という言の葉を様々な意味・理由・表現として使用する。
その意味するところは「fate」「destiny」「doom」「fortune」「lot」「portion」と少なくとも6つある。
だが、この男女のそれは「まだ存在することのなかった第7」の運的関連性であった。
Fin
エレメンタルエピソード
━━古より続く詩想する魂の旅程━━
1.夜、空を眺め溝に嵌りし者の想い
彼はいつものように、天体を観察し、夜、空を眺めながら、歩いていると、右足が空振り、地を踏みしめることはなかった。要するに足元が疎かになり、溝に落ちてしまったのである。
その一部始終を少し離れたところから、見つめていた乙女が近づいてきて、言った。
「あなたは星のような遠くのものの動きまでもおわかりになるのに、肝心の足元さえ、覚束ない人なのね」
「うん、まったくだ。僕は興味を持つと、自身の置かれた状況とかも、忘れてしまい、それに夢中になってしまう。まさか、こんな溝に嵌るとはね」
彼は、笑いながら、応えた。
よく見ると、真っ直ぐな瞳のここいら辺ではあまり見かけない、ちょっと年齢不詳の若そうな娘だ。2人は互いの名を確認し合うと、歩きながら、話した。その話の内容は、あまり多くの人々が興味のありそうもない、どちらかというとつまらないと感じるようなものだった。しかし、2人にはとても、そんな話が面白く、いつまで話しても尽きることがなく、このような楽しい対話は今まであまり経験がなかったように感じ、心が躍った。
この時、彼らが何歳で、そのあと、どうなったのかは、記録にも残ってないので、何もわからない。ひょっとしたら、以上のことは、誰かの空想の賜物かもしれない。
しかし、ある言い伝えによると、彼は彼女を「黄金色の乙女」と名づけ、様々な知を探求しあったという。
2.樽を棲家とする足るを知る者の歓喜
彼は樽を自らの住居とし、好き勝手に生き、誰彼構わず噛みついた。ゆえに、人々はかの者を、「犬と等しき者」と呼んだ。
彼は、破廉恥なことも、非常識なことも、人々にどう想われようと一向に気にもせず、己が心の命ずるままになし、厳かに偉そうに映る人には特に、皮肉を浴びせるように、その言動の矛盾するところをつき、笑い飛ばした。そのような彼でも、多くの市民に愛され、何かあると、助けられることも多かったという。
ある時、帝国を成した若き帝王が、樽の中で日向ぼっこをして寛いでいた彼の前に立ち、こう尋ねた。
「そちは余が怖くはないか?」
「どこのどなたかは存ぜぬが、あなたは悪しき者か?」
「いや、余は悪しき者であるとは自身を認識してはおらぬ」
「あなたが悪しき者なら、いざ知らず、そうでないならば、何故、怖れなければならぬ理由があるだろうか」
他にも、二言、三言の遣り取りがあり、帝王は部下に迎えられ、以下のように述べたという。
「余が帝王たる余であらぬ、他の者になるのであれば、かの者として生きたいものだ」
ある時、樽の中で寝ていた彼のもとに来客があったという。その客がどのような身分の者でなにをしに彼を訪ねて来たかは、詳かではない。しかし、その来客の後、暫くの間、犬のように噛みつくことも、破廉恥なことをすることもなく、満ち足りた表情を浮かべていたという。
彼には、他の多くの人々には見えぬものが、見えていたと言われるが、多くの人々が体感して既知のことが、彼には未知であったのかもしれない。彼が、その知らなかったことを体験したかどうかは、誰も知らないが、ひょっとしたら、彼の歓喜はそのようなことに纏わることであったかもしれない。
3.法螺話の大家、亀を喩えに官途を固辞す
彼には、幼馴染で有名な思想家の一国の大臣を務めている友人がいた。彼らはいつも語らい、笑いあっていたが、その友も偉くなり、疎遠となっていた。
ある日、一国の王の使者たちが彼の寓居を訪れ、重臣への就任を要請した。彼は外に出て、使者たちを招き、池に亀が泳いでいるのを共に眺め、言った。
「聴くところによると、宮中では亀卜というものがあり、その亀の骸はとても大事にされているそうですね」
使者たちはその言に対し、首肯した。彼は、また、言を重ね
「そこに一匹の亀が楽しそうに泳いでいますね」
指差し、使者たちもそれを認めた。亀はとても伸び伸びと楽しそうにのんびりと、水の中で揺蕩っていた。
「ところで、あなた方は、この亀のように楽しそうに生きているのと、骸となって大事にされている亀とを比べ、どちらを選びますか」
使者たちは、勿論、池で寛ぐ亀の方が望ましい、と答えた。彼は、それを受けてこう言った、
「私もです。徒に、生を慌ただしく過ごしたくはありません。この亀のように泥の中といえども、伸び伸びと生きていきたく想います。ゆえに宮中への出仕はお断り致します」
使者が幾たび出仕を勧めに訪れても、彼はそれに応ずることはなかった。そして、いつも、壮大な法螺話が想いつく度、一人笑みを浮かべ、富貴を得ることもなく、蝶のようにひらり、雲のようにぽかりと楽しそうに過ごした。果たして、蝶が彼の夢を見ていたのか、雲が彼の下にあったのか━━
4.恋多き文を学びし者、友の情けを知る
彼女は、新たな恋人である音楽家の彼とこの島に来た。今まで、幾人と恋愛を経験してきただろう? 何事でもそうであるが初めの頃は新鮮で驚くことばかりで、楽しいことも多いが、こと生活となると夢のようなものであった愛の日々も、ある意味単調な色褪せたような味気ない想いが訪れる瞬間が多くなって来るように感じられる。笑顔と感動の日々も、諍いや釈然としない鬱屈した時に変わり果ててくる。
結局、2人は、冬は都会、夏は彼女の別荘で過ごす生活を9年ほど続けたのち、彼女の子供たちを巡るイザコザなどのため、別れた。
彼女はその別れた彼と知り合って、程なく、民主や社会主義の思想を抱き、高名な政治思想家・活動家と交流した。ある年の如月に天命が革るに際しては、政治活動に参加したが、その後には田舎に隠棲し執筆に専念した。
後の世に「第二の性」などと呼ばれた、男性という存在と同じような権利を己が性の人々にも齎すための運動を主導しながらも、執筆し続け、多くの文学者と友情を結んだという。
彼女の真に愛した者は誰であったのだろう。彼女は婚前妊娠子として貴族の父と庶民の母との間に生まれた。その父は早くに亡くなった。彼女が多くの男性と恋に落ちたのは、その父の影を追い求めてのことであったかもしれない。その彼女がある相手に「あなたは私を落としたの?」と訊ねたとき、その少し惚けたような冗談好きの相手は「いや、僕は君を拾ったのさ」と応じたという話がある紙片に書かれていたという。
5.若き天才学者の運命と境涯
朦朧とした意識の中で、彼は夢を見ていた。父を亡くし、小学生となった彼は、ある日俄雨に遭遇した。傘を持たぬ多くの同級生が走って帰路についている中、彼は頭にハンカチを乗せ、ゆっくり帰宅しようとしていた。心配して迎えに来ていた母が
「なぜ、お前は走らないのさ」と怒って聴くと、彼は悪びれもせず当然という風でこう答えた。
「だって、帰る時は走らずに歩け、と校則には書いてあるから」
また、異例の若さで、古典文献学の教授として、大学に招聘された時のこと。彼は、哲学の教授を希望していたが、それは終生叶わなかった。ある音楽家の熱狂的理解者として親交を結び、彼のために本を書いたが、それは多くの批判を呼び、それが原因となって、結局は大学を辞することとなった。
年下の友人から、異国の若い女性を紹介され、恋に落ち、求婚するも断られ、後にその友人も同様であった。しかし、この三者の友情と恋愛関係は少しの間ではあるが継続され、程なく破綻した。彼は、この痛手から、立ち上がるため、創作に没頭した。それは、後の時代、彼のもっとも文学的価値の高い作品、であると評価されている。
彼はある日、思索していると、あるとても恐ろしい直観が閃いた。我々のこの人生はなに寸分違うことなく、何回も繰り返されるのではあるまいか。だとしたら、それを自身は望むだろうか?
数分の懊悩の後、彼は高らかに宣言した
「ははははははは、これが人生というものか。では、何度でも!」
6.類稀なる才媛は此度の夜も降臨に救われん
今日も仕事は辛かった。高給な教師としての仕事の資格もあるのに、彼女は敢えて、給金も安く、過酷な労働が要求される工場で仕事をしていた。彼女は、なにを楽しみとして、生きているのだろう?
幼少の頃より、見惚れられる美少女として、学業も優秀だった。しかし、あまり年の離れていない兄は、教科書にも載っている数学者の再来と言われる程の天才で、彼女は自身と彼を見比べ、劣等感に苛まれ、本気で何度死のうと考えただろう?
彼女は信者として、洗礼を受けたわけではない。しかし、ある時、異国の教会を訪れた折、神秘体験を経験し、「油注がれたる者」が降りて来た。それが、具体的にはどういうことかは、彼女にしかわからない。しかし、その体験があればこそ、今まで死にたくなるように感じた時、乗り越え続けられて来たのである。
一体、彼女はなにを楽しみとし、なにを喜びとして生きているのだろう。他の大勢の男女は恋愛といわれるものに夢中になり、子供を育てるのに懸命に働いている者たちが大多数だ。
一方、彼女は才色兼備で、もし、結婚しようという考えを抱いたら、すぐにでもできたであろう。しかし、尋常ではない感受性や価値観のため、多分、婚姻生活を営んだとしても、早晩瓦解しているのは、想像に難くない。
この夜も、聖なる「油注がれたる者」は、彼女に降臨して来た。苦しく辛い労働で挫けそうになっているこの頃は毎日のように、それは現れる。ただの彼女の幻覚といえば、そうとも言えるだろう。だが、現実といわれるものとそれとの境界は奈辺にあるのか? そして、その油注がれたる者はただの彼女が創り出した想像の産物であったのだろうか?
7.夭折の秀才と北国の無政府主義者の抱きし大いなる疑問
彼は、わずか10代で、外つ国の立派な人=聖者とは如何なるものかという教えを説く塾で、それに対する反論を認め、師から破門された。
「何故、皆、有難い教えだと頭から信じ、疑問を持たないのか? 教えを聞いていて、違和感を感じないのだろうか? 疑問を皆抱かないのが、甚だ疑問だ」
20代の時には、仏というものを説く教えにも、異論を唱えた。「そんなん、ほっとけ」
彼は、30代そこそこでこの世を去ったが、本朝の神々にも異を唱えた。耶蘇教では、三位一体の教えがあるが、「神々、聖者、仏」は、彼が発見した、新たな三位一体であったやもしれぬ。
また、同じ島国の北方にも、仏=聖なるもの、をただ飯喰らいと批判し、「労役せざる者に与う食などなし」と唱え、領主にも畏れる心を抱かず、批判する医者がいた。
この2名の求道者は、あらゆる物事に疑問を感じ、様々な論を物した。しかし、その貴重な文書は散逸したものも多い。それは、或いは、批判された相手が、己の立場を守るためには、願ったり叶ったりのことであったやもしれぬ。
彼らには、世の大多数の人々が、有難い教えなるものに己が生の行き先を任せ、意識的に選択しないことを大いに訝しんだが、世の人は彼らが何故、そのように苛立つのかは遂には理解するには至らなかった。
8.世界でも有数の甚だ迷惑な者の言辞
「この部屋にピンクのカバがいる」
その言を受けて、師たる部屋の主は、部屋中をひっくり返し始めた。弟子であるその男も、共に机の引き出し、椅子の陰、部屋中あらゆるところを探し続けた。だが、結局、彼の主張したように、ピンクのカバを2人は見つけることができなかった。
「哲学者というのはこの世で最も迷惑な存在だ」という言述があるが、彼はその中でも群を抜いて迷惑な存在であったかもしれぬ。ピンクのカバを一緒に探した師の何人目かの妻は、深夜、眠っている時、彼の来訪を受け、どうでもよいことを、とても重大なことのように告白されたと、後年、託っている。
彼は、この島国の元々の住人ではなく、大陸からの移住者であった。大金持ちの実業家の末子であったが、彼の兄たちは自殺した者も複数名いたという。この一家は、芸術家に多大な援助を惜しまなかった。
ある時、故国で姉の自宅の設計を手掛け、この時、初めて異性と結婚を意識したという。だが、それは婚姻には至らず、彼は概ね、人生を通じて、同性に恋心を抱いていたと伝わっている。
彼には、人を魅了するものが具わっており、彼の言に従い、選良の道を捨て、工場労働者の職に就いた学生もおり、その父兄は、彼のことを恨んだという話も聞いている。
薄れゆく意識の中で、航空力学の研究をしていた若い頃の夢を見ていた。その夢の中で、彼は自身が作った航空機を操縦していたが、その助手席に乗っていたのは誰であったのか、、、その顔を確かめようして、遂にそれが明らかになることはなかった。
9.マルチバース=可能世界論=絶対矛盾の自己同一
世界はひとつだけではなく、少しずつ位相の違う無数の世界が存在する、というアイデア・世界解釈が最近一般的になってきたように感ぜられる。つまり、あなたにも無数のバージョンがあるのだ。金持ちのあなた、子供のいるあなた、欲しいものを手にしているあなた、勿論、あなたが存在しない世界もあり得る。
イエスが磔刑で復活した世界、磔刑で死なずに日本に来た世界、など相矛盾する伝承があることも、マルチバースが事実だとすると説明がつく。違う過去の事実が現在に流入していることから、複数の言い伝えやモニュメントが存在する、ということも説明がつきそうである。
真理は一つと主張する方々もおられるが、そういう世界観からは、そういう世界が生成し、世界は無数の真実の集合であるという認識からは、カラフルないろとりどりの豊かな世界が拡がってくるように感ぜられる。どのような世界も可能であり、矛盾していることも当たり前というか、矛盾が常態であるという世界観の中で生きていたら、狭い現在の人倫から、もっと広くて大きな人間関係の世界に遊べるようになれるのではないだろうか。
直線的な時間認識から、時間というものは実在せず、過去も未来もすべて今に在り現れている、という認識には至れるであろうか。時間というのは、ただの概念であり、実際に在るものではない。我々の現実というものも一種の幻想であるという。
「難波のことも夢のまた夢」という文言があるが、夢であるから虚しいのではなく、夢であるからこそ、素晴らしいものにしようという、想いを抱いて、懸命に活動していったら如何だろう。
10.傷つく勇気と不可抗力
何度、人間関係で傷ついても構わない、大丈夫だ、と決断する。そうすれば、どんなことも超えていけるだろう。自身が、人を傷つけないよう振る舞っていたとしても、その振る舞いこそが、かえって相手を傷つけるのかもしれない。
罪の意識を感じやすい人は傷つきやすい人なのかもしれない。自らが苦しみに敏感だから、他者の心に痛みを齎すことに大変な罪悪感を感ずるのだろう。傷つき、傷つけることを怖がっていては、自己を十全に表現し、生きていくことは難しい。「もしも他の誰かを知らずに傷つけても絶対譲れない夢が僕にはあるよ」というフレーズがあるが、『幸せになる勇気』とは『嫌われる勇気』であるとともに「傷つく勇気」「傷つける勇気」を含んだものであるように想われる。
率直に自身に正直に、他者に誠で接しても、相手から温かい心で接してもらえるとは限らない。寧ろ、思いも寄らぬ冷遇で迎えられたらどうすればいいのだろう。その冷遇の本心は案外わかることは難しいように思われる。相手は寧ろ、こちらを想ってくれたからこそ、冷たい態度をとったという場合もあるだろう。すべては不確かで、自身の心が反映した世界である。つまり、どう感ずるかに左右される世界、そういう意味ではあなたがどう考えるか、解釈するかがすべての鍵となる世界である。
どのように考えても自由な世界、その心持ちが幸不幸というものに大きく関わる世界なら、幸せでいることに如くはない。だったら、たとえ独りよがりだとしても、まず、自身が幸福であることが最大の意義あることであろう。壮大な想念はあらゆるものを巻き込んで、至福の世界を創出するだろう。
11.何者もこの世界は変えられない=変わり行くのが常態の僕の世界
言の葉は溢れ出る、宇宙の彼方へ、悲しみの水溜まりと喜びの漣は、この胸をすり抜けて吹き寄せてくる、そして心を捉えて優しく包み込む、思考は当てもなく彷徨う、郵便箱の内側をそわそわと抜ける風のように、そしてそれぞれの道を一途にかえってゆく、宇宙の彼方へと、すべては感謝の中で、、、
歌を聴いていると、とめどない心の動きを感じ、カタルシスが体に現れる。アクロス・ザ・ユニバースは祈りのような楽曲だ。歌というものは、本来、意乗りであったのだろう。それは、本邦の三十一文字にも現れている。「かなし」き気持ちを表したものが「歌」と言われた。
恋とは「孤悲」であるという。つまり、孤り悲しき想いを感じ、恋恋と煩悶するのが「こひ」なのだろう。「ちはやぶるかみよもきかずたつたがわからくれないにみずくくるとは」この和歌を思い浮かべた時、ハリスンのマイ・スイート・ロードがYouTubeで流れた。
ほんの何年か前なら、自身が神である、と宣言したら、非難する人々も多かったに違いない。ある年配の女性は「I am God」と私がFacebookに投稿したら、「正しくは神の子ね」とご親切に修正を加えて下さった。私は、その文言に溜息で応えた。それ以来、彼女のコメントは私の投稿には見かけない。
我々、一人一人が神である、というのは、自身の周りの世界は己が意識・考え・想いの反映したものであり、謂わば世界は唯識論的に成立しているということである。物の存在が先であるという唯物論的な世界ではなくして、「そう思ばそうなる」世界であるということである。なんと、楽しい世界であることか!!!
12.フレキシブル・ワールド=可塑的な我々が創りあげゆくもの
「世界の中に奇跡があるのではない。世界があること自体が奇跡なのだ」
以前に登場した、甚だ迷惑な存在である、ピンクのカバを師の部屋で探した哲学者の言葉であったと記憶している。
出会いは奇跡だ。生活を共にするのも奇跡だ。言葉を交わすのも奇跡だ。あなたの存在すること、それ自体が奇跡だ。奇跡の軌跡、それとも軌跡の奇跡、、、
有難さに笑みが浮かび、それは極まれば嬉しさで涙が頬を伝う。悲しさよりも喜びよりも深い嬉しさによる感激・感銘は魂を震わせ、肉体・精神、全存在からの振動は涙となって溢れ出る。
あなたは何を経験したくて、この地上に存在しているのか? あなたの真に欲しているものとはなんだろう?
それが得られない限り、どんな高価なもの、高級なもの、最高に美味いもの、美しいもの、優れたもの、、、つまり、この世のどんな宝を得たとしても、あなたの心は渇いた大地だろう。渇いた大地が最も欲しているのは何よりも慈雨であり、大地には水があればこそ、豊穣な稔りが齎されるだろう。
13.君と僕との間に━━永劫と刹那の間(あわい)で━━
人は、自身の何ものかが「永遠」なるものに携わることを望む。「自己の遺伝子を残すために生きている」という主張がある。だが、その遺伝子なるものも、一世代受け継がれていける度に、2分の1 乗ずつあなたの遺伝子の割合は薄まっていき、あなたの10世代目の子孫は本当に僅かばかりのDNAしか受け継いでいないこととなる。
「人生は短し、芸術は長し」という言葉があるが、表現者は作品という形で己の痕跡をこの世に残そうと切望する。名誉、己が名を後世まで語り継がれることを望む人々は少なくないように見受けられる。
私は想う。「この世に存在した痕跡を何も残さず、去っていけたら、スマート」ではなかろうか、と。私の残したいものというのは、言の葉である。皆が、普通に使用し、何の変哲もない表現手段である。
誰が言った、かとかは、如何様でもいい。言葉は、万人のものである。言い人知らず、の言葉とはなんと価値ある言葉だろう。自明の真実であるが故に、その言葉を聴いた瞬間にその人の血肉となる。
幸せは切ないほどの刹那の中での実感である。この上ない歓喜が永劫続いたとしたら、疲れてしょうがなくなってしまうだろう。平静の状態がケとすれば歓喜の瞬間はハレである。永遠の今の状態がケであるとすれば、その今の瞬間に湧き上がる歓喜がハレである。「ハーレルヤ、ハレルヤ、ハレルヤ、、、」
「なぜ巡り会うのかを、私たちは誰も知らない」
最近接した情報によると、「袖振り合うも多生他生の縁」などという諺もあるが、我々はいつどこで誰に会うか、など、結構細かいことまで、ブループリントとして作成してから、この世に誕生してくるのだという。ただ、それを殆どの人々は忘れてしまって、生誕するらしい。
プラトンの述べたとされるかなりのことが、現在、「スピリチュアル」などと言われる分野で主張されていることと酷似していることに、筆者は驚嘆の念を抱かずにいられぬのである。
14.浄化=joker→情感
最近、「浄化」という言葉をよく聴く。デトックス、断捨離、など、自身はすべてやってるから、大丈夫、と、甘い物などを一口のつもりが、結局すべて食べてしまい、何のための絶食や浄化だったのか? と反省している方もおられると想う。所謂、食事制限なるものは、体に悪い太るものを食べても大丈夫なようになるためにあるというかする、と明らめたら如何だろう。
すべてのルール(決まり事、決め事)は、破るためにある。約束はそれを裏切るため(相手も想像できなかったほど、素晴らしく良い方へできたら、最高ではあるが)にするのであり、結婚とはある意味、相手を知り、結局は一緒にいられないということを思い知るためにするもの、、、と言ったら、言い過ぎであろうか?
自罰的な人より、他罰的な人の方が、精神的には健康な傾向にある、という調査結果を耳にしたことがある。何かよくない出来事があったら、自分が至らなかったせい、と考えるより、自分以外の誰かが悪かったから、と考える傾向にある人の方が、精神的な病には罹らない割合が高いという。
自身の周りの世界は自らの想念によって造られている、というアイデア・考えが、ここ最近、随分認められてきているように感ぜられる。
笑いによる浄化で、心を軽くし、波動とやらを軽くするのがいいという。jokerは人々の情感に訴え、この現実という一種の幻想の世界で苦しみ喘ぐ人々のために、自己の務めを遂行し続ける。
15.ストラクチャリズムvs自由意志論=ロール・オーバー・ザ・運命論
構造主義(ストラクチャリズム)という、20世紀に流行した、フランス発の哲学・思想的流派がある。我が国でも、逃走論とかスキゾ(分裂的)とかという言葉が飛び交った。丁度、私が学生だった折しも80年代であった。
その主張は、人間と言われるものは、無意識(潜在意識)という構造的なものにより、支配され動かされているというのがその一部であったと記憶している。観察結果によると、人の95%の行動は、無意識的になしているという。
宇宙と言われるものの4%ばかりが、物質として見えている部分であるという。人の顕在意識で行動している割合も4%であるという。量子論によると、この世界の現象は、観察者によって影響を受けるという。つまり、出来事は、見ている人がいるのといないのとでは、結果が違ってくるということである。
正に、宇宙は今生成し、現れているのであり、人間はミクロ・コスモス(小宇宙)であると古来言われてきた。時間・歴史と言われるもののパラドクス。信じられぬだろうが、過去・未来も今に存在している。どう説明したら、おわかりいただけるかは、上手く表現できないのだが、すべては意識というものに我々の生は負っている。
想いも言葉もエネルギーとしてこの世界に存在し続けるという。所謂、エネルギー保存の法則である。あなたはもし、死んだとしても去りはしない。つまり、死去という言葉は正しくない。生という状態と形態・在り方を変えて、あなたは存在し続けるという意味である。
単に生存のことのみを心配し、死んだように生きるのは辞めにしたら、如何だろう。大いに不安かも知れぬが、活き活きと生きるため、つまり、生活していくため、自己の魂を黙殺して生きていくことはしないと決め、魂の苦しむ生存より、魂の歓喜する生活を楽しんだら如何であろう。
16.世にも奇妙なアベック
ある名門の深窓の令嬢が、男性の哲学者の暮らしぶりを見て、ぞっこん彼に惚れ込んでしまった。なにしろ、名門のお嬢さんのことだから、縁談は降るようにあった。
しかし、彼女は彼のことで胸がいっぱいで、そんな話には、全く耳をかさなかった。果ては、彼と結婚させてくれなければ、死んでしまいますと言われ、脅された両親は当の哲学者に、「どうか、娘にあなたを諦めさせていただけないでしょうか」と頼み込んだ。
彼はそれを受け、彼女になにを話しても、ますます彼に惹かれてくだけ。最終手段として、彼は真っ裸となり、「これがあなたの花婿だ」と言って(股間を指さしたかどうかは知らないが、、、)、脱いだ着物を持ち上げて「全財産はこれだけだ」と言い放ち、「さあさあ、さあさあ、はっきり方をつけてよ(×3)」「やってられないわ~」少々というか大分、お戯れが過ぎたようである、失礼!!
「さあ、これを見て心をお決めなさい。そして、君もおらあと同じような道楽にいきていけなければ、君はおらあと生を共にすることはできねえよ」と笑みを向けた。
しかし、彼女はそんな男と生を共にすることを欲し、すんごく粗末な衣類をまとい、常に彼と一緒に(息がつまらんかね? 喧嘩とかにはならんのかね)、歩き回り、公然と〇〇罪というものをはたらき、宴に招かれると一緒に参加した。
さて、この続きもあるのだが、聞きたい人がなにかコメントしてくださったら、発表することとする。最低、3コメントいただけたならば、執筆(キーパンチング)することをお約束する。
17.エピソードファンタジーシリーズ(EFS)コーヒー好きの皇帝
今まで、特定の名前を登場人物に付してこなかったが、歴史的人物の実名の登場をご要請いただこう。まずは、カエサルである。ご存知ない方も多いと想われるが、彼は無類のコーヒー好きであった。手編み焙煎をするほどで、彼がなぜ、様々な地を平定したかというと、コーヒー豆を手に入れるためだったという説もある程である。
あの有名な言葉、「賽は投げられた」は、実は、「白湯は投げられた」であるという伝承もある。
カエサルは知己を招いて、コーヒーを振る舞うのを趣味としていた。数人の友にそれぞれ、何を飲むか聞いて一杯一杯、淹れていたが、最後に随行者である男に聴いた。
「ブルータス、お前、モカ? 」
18.パンセ「人間は考える、、、」
幾何学。繊細。
真の雄弁は、雄弁をばかにし、真の道徳は、道徳をばかにする。言いかえれば、規則などない判断の道徳は、精神の道徳をばかにする。
なぜなら、学問が精神に属しているように、判断こそ、それが直感に属しているからである。繊細は判断の分け前であり、幾何学は精神の分け前である。
哲学をばかにすることこそ、真に哲学することである。
パスカルの『パンセ』の中の言葉であるらしいが、まったくもって、記憶にございません。読み返してみようっと。彼は、30代で逝去したが、バスケットをしてて叫んだ、「パスせい!!」
彼は、乗合馬車なるシステムを発明し、これはバスの原型である。「任権は官が得る(御)足である」
尚、筆者は『拾語』なるものを考案した。よろしければ、御意見などをお願いいたします。
19.詩想するということ・素晴らしき詩(人)
エラ・ウィーラー・ウィルコックスをつい先ほど知った。とても、素晴らしい詩(人)だ。
価値がある男
喜ぶのは容易である
人生が歌のように流れていくとき
しかし価値がある男は微笑む男だ
全てがうまくいかないとき
だが、その歌が、音痴だったり、しばしば、つっかえたりしてたら? 大笑いしたいし、させたい。すべてがうまくいかないとき、というのは、落ち込んで想い込みに陥っているだけでは? うまくいかないのは、すべてが至福の中での、あるいは好運への途上での、ほんの夢の途中──
孤独
笑おう、そうすれば世界が貴方と共に笑う
泣きなさい、そうすれば貴方は一人だ
「咳をしてもひとり」という俳句がある。笑ってもひとり? 共に寄り添って、心からの涙を零(こぼ)してくれる存在がいるだけで、あなたは孤立してるのではなく、深く愛されていることに心からの感謝・嬉しさに充たされるだろう。
運命の風
ある船は東へ行き、別の船は西に行く
吹いている風と全く同じに
それが一組の帆であり
風ではない
それが行く先を告げてくれる
海の風のように運命の行方がある
人生を旅していくように
それが一組の魂であり
それが行く先を決める
静かでもなく争いでもなく
長崎には坂道が多いという。さて、上り坂と下り坂どちらが多いだろう?
風が吹いている。それは、順風? それとも、逆風??
風向きの方へ進めば、進みにくく、背に受けて進めば、速く進めるだろう。
ヨットは帆の張り方で、逆風でもそちらに向かってセーリングできるという。
巡り逢っている存在はすべてがあなたの仲間だ。だが、それを敵にするのも、あなたの在り方による。
ボンボヤージュ! グラティアス・アミーゴ!!
20.太陽が眩しかったから……アルジェリアのサッカー作家
「ママンが死んだ」で始まる、『異邦人』、アルベール・カミュの作品の中で、わたしが最も好きなのは、『シーシュポスの神話』
彼の言葉は、一編の詩だ。
僕の後ろを歩かないでくれ。
僕は導かないかもしれない。
僕の前を歩かないでくれ。
僕はついていかないかもしれない。
ただ僕と一緒にいて、
友達でいてほしい。
crossbikeで共に漕ぎ続けていこう。前後に連なって進むと、後ろの人は風が避けれて楽に進める。前後を交替して、チームで漕ぐととても楽に速く進んでいける。集団で行くと、中の方ほど凄く楽で、とっても速いスピードで、先頭を行くチームをも飲み込んでしまうこともしばしば起こるという。
幸せが何から成っているのか
探し続けている人は、
決して幸せになれない。
人生の意味を見出そうとしている人は、
決して生きているとはいえない。
恋とはなにか、と考えに集中していたら、恋人はとっくにあなたから、去って行ってしまった後かも。
全ては使い果たされたのか?
よろしい。
それなら、これから生き始めよう。
タロットの最初のカードは0の愚者。愚者は、グシャグシャ、想い悩んだりせず、偏見も持たず、人に尋ね、疑いもせず、旅を進んでいくだろう。たとえ、悪意ある人に騙されたとしても、彼(女)は、人を恨むだろうか?
最後の審判を待っていてはいけない。
それは毎日くだされているのだ。
正解(もっとも最短で最大の成功する方法、など)を求めてばかりいたら、結局、何事もなすこともなく、日々は過ぎ行ってしまうだろう。「どんな時も、迷い探し続ける日々が答えになる」というより、日々の言動・行為が生きているということ。人生は結果? 過程?? 家庭はお大事に。
すべての葉が花となるとき、
秋はもう一つの春である。
21.「あはれ」vs「をかし」、式部と少納言
世界最古の小説とされる『源氏物語』と日本三大随筆のなかで最古の『枕草子』。作者はそれぞれ、紫式部と清少納言、2人とも当時としては珍しく漢文も解し、宮廷の女官で、清少納言の方が数歳ほど年上であったようである。
それぞれ、「あはれ」と「をかし」の文学と評されている。ある書物で、「あはれ」とは「ああ、われ」としみじみと感じ入ること、だと説明してあったと記憶しているが、ひょっとしたら、夢の中での出来事であったかもしれない。
「をかし」とは、お菓子を食べたときのように、楽しく滑稽な様、「お菓子を食べたときのように」というのは、筆者の勝手な付けたりである。
我が国を代表する文学の嚆矢が、女性2名から始まっているのは、とても、象徴的である。これからの地球は、女性が活躍していく世界である、と聴いている。
男性が内助の功を発揮していくステージであるのかもしれない。まあ、各の関係にはその人たち固有の関係性があるだろう。
「なんでもあり」がこれからのキーワードであろう。しみじみとした恋愛物語をものした式部と言葉の面白さ・言語ゲームの綴り手である少納言、あなたはどちらがお好みであろう。まあ、どちらも魅力的ではあるが。
「春はあけぼの」「いづれの御時にか」「いよいよあかずあはれなるものに思ほして」「ほのかにうち光りて行くもをかし」
適当に切り取って、並べてみた。言葉を生業とする人の中に、コピーライターと名乗る人々が相当数存在するが、言葉とは複製(コピー)であるからであるという。新しい言葉も、今まで存在した言葉のコピー&ペーストの結果である。
古より存在する言葉を駆使して、新たな感動を創り出す。それは、あなたにも充分に可能なことなのだ。
22.完璧な標準語を話していたはず!!──東北の熊襲──
タカユキは学生となって初めての夏休み、京都・奈良の帰り、東京の中丸デパートに寄っていた。母と妹に、イアリングをお土産として買うこととした。
そして、店員のお姐さんと話していたら、徐(おもむろ)に、
「岩手の方ですか? 」と言われた。
タカユキは「はい」と応えながら、内心、戸惑っていた。
「おらあ、完璧な標準語(ひょうずんご)話すてたはずだあ。なすて、わがったんだべな? 東北人(とうほぐずん)だどわがらいるんだばわがるども、なすて、プインポイントで岩手ってわがらいだんだべ」
彼は、青森の下北で生まれ、父が営林署員だったので、岩手県南、津軽、上北、と転居して歩き、その時は、壬生義士伝の主人公が住んでいたとされる町に住んでいた。
故に、青森と岩手の言葉は殆どわからないことはなかったし、親戚が秋田市に住んでいて、高校が田沢湖の生徒も学区内だったので、北東北三県の言葉は理解できた。
しかし、彼の話す言葉は、無国籍の北東北弁らしく、本人の意識では標準語に限りなく近いはずであったし、百歩譲っても、北東北弁の共通語と認められてしかるべきものだった。
ある政治家が、後年、
「東北は熊襲と呼ばれて、文化程度が低い」
などと、自身の無知を晒(さら)していた。
彼の母方は、近江商人がルーツで、曾祖父から伯父の代まで、神社仏閣をも手掛ける大工だった。中学の修学旅行で北海道に行ったとき、父方の伯母さんが会いに来てくださった。
友人の真人は、「アイヌに似てる」と言った。
まあ、蝦夷とアイヌは殆どイコールだろうから、西日本と北日本の混血なのだろう。
人間は、自分が基準なので、本人が幾ら変わっていてもそれに気づかない。半世紀以上、生きていて、タカユキが自身が中学時代、大変な変人、と噂だったと知ったのはつい2年程前。
彼は、現在こそ、
「おらあ、完璧な標準語(ひょうずんご)話(はな)すてら! 」
と自信満々である。
「すかす、なんで、青森弁や岩手弁、話せば、笑いるんだべ」
0015 イーハトウボから愛をこめて
エピソード1 ウォーリーは探す?心配しないで、幸せに!
Wally Getz, the great Zeni of the horizon, pondered.
地平世界の大ゼニー持ちウォーリー・ゲッツは至考した。
"How can we live in this overpopulated world ? "
「人口が増えすぎたこの世界で生きて行くにはどうすれぱいいか ?
We cannot continue to increase the number of people who simply consume without creating anything and without imagination.
なにも創り出さず、想像性も持ち合わせていない単に消費ばかりしている人々をこのまま増やし続けさせるわけにはいかない。
We can legally and secretly make them infertile, plus even illnesses, to increase our wealth and naturally decrease it for medical and drug costs. "
合法的に秘密裏にそれらの人々を不妊症にして、それに加え病気にでもして、医療費や薬の代金で我々の富を増やし、自然に減らせばいいのだ」
He was the founder of MaxHard, a volunteer who sold and penetrated Calicula Machine worldwide, earned enormous wealth.
彼はMaxHard社の創業者であり、カリキュラマシーンを全世界的に販売・浸透させ莫大な富をも得て、篤志家でもあった。
Although various rumors have been disseminated, he is a person born in the horoscope, who is said to have a great tendency toward life and death and the mystery and philosophical tendency of life.
様々な噂なども流されてはいるが、生死や人生の神秘・哲学的な傾向が大きいとされるホロスコープの生まれの人物である。
He was also very inquisitive and had a deep and warm feeling for people.
探究心も旺盛で人々への深くて温かな想いもあった。
However, when I reached the top of the world and looked down, I suffered from "a very great fear and horror."
だが、世界の頂に達して、ふと見下ろしてみたら「とても大いなる恐れと慄(おのの)き」に苦悩した。
People who are always in the middle or at the foot of the mountain welcome Gekokujo.
下剋上を歓迎するのは常に中腹や麓にいる人間だ。
Those at the top never want to change society.
頂にいる者は決して社会の変革などは望んでいない。
They always hope that society will remain fixed, and they are acting for that purpose.
彼(女)らは常に社会が固定され続けることを願い、また、そのために行動をしている。
The happiest and unhappy people in the world are those who are blessed with a variety of people, things, and things, but who are constantly suffering and always trying to take care of themselves as planned.
世界で最も幸せそうに見えて、幸せではない人間とは様々な人・物・事に恵まれてはいても、心が絶えず苦しんでいて常に計画通りに大事をなそうと取り組んでいる者たちだ。
If fear moves them and doesn't do what they want, they will feel great despair, incompetence, and dissatisfaction.
恐怖が彼らを動かし、自分の想い通りにちょっとでもいかなかったら、大きな絶望や無能感、不満などを感ずるであろうから。
On the other hand, Taurus, a blue man and a PlayingGuy in this horizon, is close to Wally's birthday and has the same horoscope, but he lives a lonely life with "nuhehem".
一方、この地平世界の青色人・遊び人のタウルスはウォーリーの誕生日と割と近く、同じホロスコープであるが、「ぬへへむ」と気儘な生活を営んでいた。
And he thought, wished, and prayed.
そして、彼はこう想い、願い、祈った。
"Wally, you are too worried. There's something more important than a declining population. Laugh out loud!"
「ウォーリー、心配のし過ぎだ。人口の減少よりも大事なことがある。大声で笑え ! 」
エピソード2 地平世界の現況と展望
Computational theory is the mainstream in Randy Bass, one of the multiverses here on the horizon.
マルチバースの内の1つここ地平のランディバースでは計算主義が主流である。
On the other hand, people with a heart, including the organization to which Taurus belongs, advocated humanism.
対して、タウルスの属す組織をはじめとして心ある人々は人本主義を掲げていた。
A large company in the great power of Melika, where colorless people have mainly served as the ruler of the country, promotes globalism and finances the world and others
In the current horizon dominated by, it is believed that it is possible to overturn it by creating community coupons by Blackchen called virtual currency around the world and working together.
無色人が国の統領を主に務めてきた大国メリカの大企業がグローバル主義を推し進め、世界を金融その他で支配している現況の地平世界で、それを覆すことが可能なのはバーチャルカレンシーと呼ばれるブラックチェンによるコミュニティクーポンが世界のあちこちに生まれ、それらが連携することであると考えられている。
In other words, by exchanging community coupons, which are virtual currencies, instead of the legal currencies of each country, it is a connection of flat people and communities that breaks the composition in which several companies, commonly known as GAHAHA, dominate the world. is there.
つまり各国の法定通貨に代わって、バーチャルな通貨であるコミュニティクーポンをやり取りすることにより、通称GAHAHAと言われている数企業が世界を支配する構図を崩すのが、フラットな人々・コミュニティの繋がりである。
Most people use the Calicula Machine developed by Wally Getz and use Gagal's search system to have Avasom deliver their daily necessities.
大半の人々はウォリー・ゲッツの開発したカリキュラマシーンを使用し、 Gagalの検索システムを使用して、Avasomで生活物資を配達して貰うという生活スタイルを営んでいる。
Ahhan's Calicula Machine and Smefo are overwhelmingly popular with the few people worldwide.
世界的に少数の人々に圧倒的人気があるのはAhhanのカリキュラマシーンやスメフォである。
Most of the information in the world was collected by these companies, and it was the companies in Nakatsu, the great power of blue people, who waited for it.
世界の大半の情報はこれらの企業に収集され、それに待ったをかけたのが、青色人の大国中津国の企業などである。
In the horizon, the technology is legally owned by attracting companies from the far north island nation, which is a small country where Taurus lives but is a culturally large country, to its own country and providing cheap labor. It has grown economically to compete with Melika, has spread Calicula Machines and Smefos around the world, gathered information, and has a disturbing scent between the two countries.
タウルスの住む小国ではあるが文化的には大国である極北の島国の企業などを自身の国に誘致し、格安の労働力を提供する形で技術を合法的に自国のものとし、地平世界で経済的にメリカと張り合えるほど成長させ、カリキュラマシーンやスメフォを世界中に拡め、情報を収集し、両国の間には不穏な匂いが立ち込めている。
Small communities were born among the people of the world who relied on large companies to produce and procure these devices, and within each of them they began to produce devices, initially building networks within the communities. However, as they worked together, they left GAHAHA's yoke, and as each community united, a flat world began to emerge.
大企業にこれらのデバイスの生産・調達を頼っていた世界の人々の間で、小規模なコミュニティが生まれ、それぞれの中でもデバイスを生産するようになり、はじめはコミュニティ内でネットワークを構築していたのが、それらが連携を進めることにより、GAHAHAの頸木を離れ、各コミュニティが連衡することにより、フラットな世界が出現し始めていた。
People at the top of the mountain seem to want to enjoy the view of the world below.
山の頂上にいる人々はいつまでも眼下の世界の眺望を楽しみたいと感じるらしい。
Especially those who have struggled to climb up from the plains below and know the current top world will also be sorry to live in the same world as those who lived in the same place as themselves.
特に下の平野から苦労して登りつめ現在の頂点世界を知った者はまた、嘗ての自身と同じ所に住んでいた者と同じ世界に住むのは真っ平ごめんであろう。
But for those who have lived in the plains from the beginning and have never felt like climbing a mountain, looking down on people, or looking down on them, why is the freedom of the people of the upper and lower worlds? There was a tendency that I didn't want to understand whether I would take it or try to take it.
だが、はじめから平野に住み、山に登りたいとも、人を見下したいとも見下ろされたいとも感じたことのない青色人タウルスのような考えを持つ人々にとっては何故、上から下界の人々の自由を奪い、収奪しようとするのかは理解もしたくない傾向性であった。
However, a significant percentage of the rare substances used in most devices in the world are sourced from the brown continent of Frique.
だが、世界のほとんどのデバイスに使われている希少物質は茶色人のフリケ大陸から調達されているものがかなりのパーセンテージを占めていた。
Locals were oppressed by hard labor to excavate those substances.
現地の人々はそれらの物質を発掘するために激しい労働に虐げられていた。
In that sense, Taurus feels that the blue people themselves are also involved in the abuse of the local brown people.
そういう意味では、青色人の自分たちも現地の茶色人の虐待に加担している、とタウルスは感じている。
He was determined to realize utopia with those browns and flat-world-minded people by leveraging devices built at their precious sacrifice.
彼らの尊い犠牲で造られているデバイスを活用することにより、彼ら茶色人や平らかな世界を志向する人々とユートピアを実現させる、彼はそう決心していた。
エピソード3 この地平世界の課題
Bass, one of the possible worlds, tens of millions of people were slaughtered each day.
可能世界のうちのひとつ此処ランディバースでは、1日に何千万もの人々が身罷(みまか)っていた。
Starvation accounted for a large part of this.
その中でもかなり大分を占めているのは飢餓であった。
Countries with money import food from other countries and the surplus food is discarded.
金を持っている国は他国から食糧を輸入し、余った食べ物は廃棄されている。
It was no exception to the country far north of codename 0015 Taurus.
それはコードネーム0015タウルスの極北の国も例外ではなかった。
It is said that if the food that is wasted around the world is useful for those who need it, there will be no one in the world who is hungry.
世界中で廃棄されている食物が必要な人のために役立てられるなら、世界には飢渇する人は存在しなくなる、そう言われている。
Many of those who live in a blessed environment have lost their gratitude for how they are in a lie.
恵まれた環境に生きている者たちは自身が如何に僥倖の中にいるのか、その有り難みを感謝する心を失っている人が多い。
More than two years ago, there was an incident in which a fairly rich sister starved to death.
二昔以上前の話ではあるが、かなりの金持ちの姉妹が餓死するという事件があった。
If I had so much money, I would have had many ways to live by giving it as a gift to make food or buy it.
そんなに有り余るほどのお金があるなら、それをプレゼントして食べ物を作って貰ったり、買ってきて貰うなり、生きていく方法は幾らでもあっただろう。
The failure to do so leads to the isolation of the people of this country above all, and expresses the sadness of not being able to meet.
それが出来なかったことが何よりもこの国の人々の孤立と繋がり、寄り添え会えない、悲しさを表徴している。
Solitude lies between people. 孤独は人と人の間にある。
There is a saying, "There is Aoyama everywhere in humans," but people repeat Hello Goodbye.
「人間至る処青山あり」という言葉があるが、人はハロー・グッバイを繰り返す。
The phrase of the song "We are going on this journey to be happy" is overwhelming.
「僕たちは幸せになるためこの旅路を行くんだ」歌のフレーズが心を過(よぎ)る。
"Believe" and "betrayed" "doubt" are always a set.
「信じる」ことと「裏切られる」「疑う」ことは常にセットだ。
In order for a person who has suffered a heartache to be able to trust a person unconditionally again, no, even betrayal is no longer "suspicious" to feel his own problem. It may be by being "betrayed".
心に痛手を負った人が再び人を無条件に信頼できるようになるには、否、裏切られることをもさえ、最早、自身の問題と感じなくなるには、これ以上ないほど「疑っていた」ことが「裏切られる」ことによってであるのかもしれない。
One would always want such an encounter, but how much loneliness and misconduct would be needed for the meeting?
人はそのような邂逅を常に望んでいるであろうが、その一会のためにどれだけの寂しさや不仕合わせを経れば至れるのか。
Overlooking the foothills from the top of the horizon, Wally Getz has had everything he can get, and so has been seen by many.
地平世界の頂上から裾野を見下ろすウォーリー・ゲッツは得られるものはすべて得られている、多くの人々からもそう見られていた。
But he lacked something important. だが、彼には大切なものが欠けていた。
He is a friend who can open his heart. 心を開け放たれる友という存在である。
エピソード4 其々の少年の孤独
He tortured Hua Tuo and left the knowledge as a book for later people, one theory is that Cao Cao was a rationalist who did such a thing.
華佗を拷問して、後の人々のためにその知識を書物として残した、一説には曹操はそのようなことをした合理主義者であったと伝えられている。
In their time, the status of medical professionals was still very low, and the status of those who were regarded as Confucian scholars was high.
彼らの時代はまだ医療従事者の地位はとても低く、儒学者と看做されている者の身分が高かった。
"Life" is the most important thing, and most people have such values.
「命」が最も重大なもの、殆どの人がそのような価値観を抱(いだ)いている。
I wonder if I can have something that I feel is more important than my own life.
自身の命より大事だと感じているものを自分は持ち得ているだろうか、そう省(かえり)みている。
Perhaps the more things you feel more important than yourself, the more fulfilling your life will be.
ひょっとしたら、自身より大切だと感じるものがあればある程、生きることは充実するのかもしれない。
Without sacrificing anyone, including myself, we continue to live a satisfying life together and follow the path to this.
決して自身も含めて誰をも犠牲にすることなく、共に満足できる生を送ること、これに至る道を辿(たど)り続けている。
If this world is said to be the everlasting world of this world, death may be nothing more than the experience of waking up.
もしこの世界が現世(うつしよ)という常世(とこよ)と言われているもののうつしなら、死とは眼が覚める、という経験に過ぎぬのかもしれぬ。
Hunger, pain and joy are very painful experiences.
空腹も痛みも喜びもとても痛切な体験だ。
Even if the daily activities in this world are just "dreams", no, I want to make them very wonderful because they are "dreams".
この世界での毎日の活動も所詮「夢」にすぎなくても、いや、寧ろ「夢」であるからこそ、とても素晴らしいものにしたい、そうは考えないだろうか。
In the Three Kingdoms, Cao Cao is more likely to have an image of evil (especially in the blue island nation of the Far North), but he must have had his own great love and ideals.
三国志では、どちらかというと悪のイメージを抱かれやすい(極北の青色人の島国では特に)曹操であるが、彼には彼なりの大いなる愛があり、理想があったに違いない。
All people live on their own values, so the bad guys and the good guys just label themselves that way.
すべての人々は各の価値観に基づいて生きているのであるから、悪人も善人もただ自分がそうラベルをつけているに過ぎない。
People have a habit of regarding things that have different views, especially conflicting interpretations, as "evil."
人は自分と違う見解・特に対立した解釈をとるものを「悪」と看做す習性がある。
One of Wally's favorite historical figures is said to be Cao Cao.
ウォーリーの好きな歴史上の人物のうちの一人が、曹操であると言われている。
It is the words of Zhuang Zhou, the landlord of the tale of "Imaginary room, no white".
「虚室、白(はく)を生ず」法螺話の大家・荘周の言葉である。
There is Taurus who reconsidered to treat everyone with such an attitude.
誰に対してもそのような態度で接しよう、そう思い直したタウルスがいる。
エピソード5 純粋性
What impresses and attracts people, isn't it what is called "purity"?
人々を感動させ、惹きつけて已まぬもの、それは「純粋性」と言われるものではあるまいか。
Besides, if my selfishness is extremely weak and my love for others is overflowing, the beauty, sadness, and joy of the water that naturally flows down my cheeks will wet me, and I will be filled with gratitude for being alive.
それに私心というものが極めて希薄で他者への愛が溢れていたら、その美しさ・切なさ・嬉しさで自然に頬を流れ来る水分が濡らし、生きている感謝でいっぱいになる。
Wally was purely thinking about people's well-being.
ウォーリーは純粋に人々の幸福を考えていた。
But it was a bit self-righteous. しかし、それは些か独善的だった。
According to his computational theory, human nature is largely defined by heredity, and the financial strength of the family greatly influences the learning environment and what kind of profession.
計算主義に基づく彼の考えによると、人間の性質は遺伝により大方規定されていて、しかも、家庭の経済力によって学習環境やどのような職業に就けるかも大きく左右される。
Therefore, his idea was that it would be best for the talented and blessed to lead the world and to lead, manage and manage the inferior and underprivileged to run a peaceful society.
故に優秀で恵まれた人間が世界をリードし、劣った恵まれていない人間を領導し、管理して平和な社会を運営していくのが最善だ、というのが彼の行きついた考えだった。
Taurus thinks, "The world defines the order of the value of its existence by the superiority or inferiority of its ability."
タウルスは想う、「世界は能力の優劣によって、その存在の価値の序列を規定している」のかと。
Rather, those who claim to be "excellent" want to think and act for great happiness with more people, rather than seeking profits only within their narrow relationships. I wonder if I don't feel that way.
寧ろ、自己を「優れている」と任ずる者は、自身の狭い人間関係の内だけの利益を求めるのではなく、より多くの人々との大いなる幸福のため、思考し、活動していきたい、そうは感じぬのか、と。
Many people who cannot live with peace of mind without a feeling of superiority are those who have been inferior in the past and have been hurt and need to be healed in pain.
優越の想いを抱いていなければ安心して生きていけない多くの人々は、過去に劣等感を抱かされ、傷ついた経験をした痛みを抱えた癒されることを必要とする存在だ。
Wally is an excellent person who will be in the number of fingers in one hand in the world.
ウォーリーは世界でも片手の指の数にも入るであろう優秀な人間である。
However, he must have been hurt by a great sense of inferiority in the past.
だが、そんな彼も過去には大きな劣等感に痛切に傷ついたのだろう。
Taurus wonders what "superiority" is. 「優劣」とはなんだろう、タウルスは想う。
Isn't it just a "fight on the cochlear horn" after all?
それは所詮「蝸牛角上の争い」にすぎぬのではあるまいか。
I think people are attracted to the kindness that exudes from their existence rather than their superior intelligence.
知性の優れていることより、その人の存在から滲み出す優しさに人々は惹きつけられるのではないだろうか。
People are impressed by the words that are neither meditative nor follow-up, nor frankly think of the other person, and naturally give a favor to them.
諂(へつら)いでも追従でもなく、率直に相手のことを想ったなんでもない言葉に人は感激し、こちらに自然と好意をいだいてくれる。
"Honesty sees a fool" depends on what is lost and what is felt.
「正直者が馬鹿を見る」とは、なにを損とし、どのようなことを得と感ずるか、ここにかかっている。
What is "profit" and what is "loss" for you?
果たして、「あなたにとって」なにが「得」でなにが「損」であろう ?
エピソード6 食という現実性
Now, let's set aside the story of Wally Getz and write about the urgent food situation.
さて、ウォーリー・ゲッツの話は一旦置いておいて、切実な食糧事情について記そう。
The food situation in this horizon is in a considerable crisis.
この地平世界の食糧事情は相当な危機的状況にある。
In 0015's home country, the island nation of the far north, a herbicide called landdown was sold.
0015の母国、極北の島国ではランドダウンという除草剤が売られていた。
The drug is manufactured by a company called Mousente in Merique, which is trying to take control of the world's seeds, at least to the intellectuals.
その薬の製造はメリケのモウセンテという企業が行っていて、同社は世界の種子を牛耳って人々を支配下に治めようと企んでいる、少なくとも識者にはそう感じられている。
To understand the above, it is sufficient to examine the contents of the seed law in this country and other countries these days.
以上を理解するには昨今のこの国をはじめとした種子法の内容を調べれば事足りる。
We will be unaware that the outer moat will be filled, and eventually the inner moat will be filled and easily ruled.
吾々は気づかぬうちに外堀も埋められ、やがて内堀も埋められ、そして易々と支配されてしまうだろう。
Do you want to survive as livestock? あなたは家畜としての生存をお望みか。
Then, as it is, know nothing, just follow the government's instructions and, like most people today, wear a mask all the time.
だったら、今のまま、何も知らず、ただお上の告に従って、現在の大多数の人々同様、マスクを四六時中つけているがよい。
But if you feel that your freedom is of utmost importance, that you are in control, and that you are not willing to entrust your life and death to power, first let's know and show people your own attitudes and actions.
だが、もし、あなたが自己の自由を何よりも大事と感じ、管理され、生殺与奪を強権に委ねられるのを潔しとしないのなら、まず、知って自分なりの態度・行動を人々に示そう。
This strange world seems to have been struck since the time when Smefo became popular.
この異様な世界はスメフォというものが普及した時ぐらいから、その布石が打たれていたように感じられる。
People do not interact with the people in front of them and become residents of the virtual world of the Internet.
人々は眼前の人との交流もせず、ネットという仮想の世界の住人となっている。
If so, grab important information online, disseminate it, create comrades, and move on for the value you want to protect.
であるなら、ネットで重要な情報を掴み、それを発信し、同志を創り、自分たちの守りたい価値のため、進んで行こう。
Let's start the movement by the gathering of quiet, powerful and strong souls today.
静かなる力ある強い魂の集結による運動は今日、この日から始めよう。
エピソード7 ライフライン : 水、電力
In the far north island nation of Randy Bass, a so-called privatization in which a colorless corporation undertakes a water supply business was about to be implemented.
ランディバースの極北の島国では無色人の法人が水道事業を請け負う所謂民営化が実施されようとしていた。
Moreover, even if the water pipe is damaged due to a disaster or the like, it is not repaired, but only for profit, that is, to devour the interest.
しかも、それは災害などで水道管が破損しても修理をする訳でもないただ儲け即ち利権を貪るためだけのものであった。
In order to return it to the public sector, it must be bought at a high stock price from the corporation it manages, in short, the colorless enterprises for privatization are just to really pluck money from the blue people.
それを再び公営に戻そうとするには経営する法人から高い株価で買い取らねばならない、要するに民営化のための無色人の企業はただただ本当に青色人の人民からお金をむしり取るためだけの存在である。
Where is the beauty as a "human" in the above-mentioned substance?
以上のような内実のどこに「人」としての美しさがあるのだろうか。
0015 Taurus knows. 0015タウルスは知っている。
The dignified and beautiful spirit of the men of a small company involved in electricity in this country.
この国の電力に関わる小さな会社の凛々しく美しき男たちの気概を。
When the once-in-a-century earthquake struck and many people were suffering from a lack of electricity supply, although it was said to be a partner company, a large margin was pulled out and the salary was thought to be cheap for work. The appearance of many construction workers who were doing hard work to restore power with money.
100年に一度の震災が襲い、多くの人々が電力の供給が絶えて苦しんでいた時、協力会社とは言われてはいるが多額のマージンを抜かれ仕事の割には安いと想われる給金で電力復旧のため、激務をこなしていた多くの工事員たちの姿。
Their own responsibilities, proud work, and the world are made up of the activities of these people.
彼らの自身の責務と誇りある仕事、世の中はこのような人々の営為によって成り立っている。
Even among the same blue people, you can get a lot of fees just by intervening and get a job at a small company at a low unit price.
同じ青色人の間でさえ、ただ間に入るだけで多額の手数料を手中にし、中小の会社に安い単価で仕事をおろす。
How do you feel when you look at such a composition?
あなたはこのような構図を眺め、如何感ずるだろう。
Reasonable compensation for proper labor. 適正な労働に妥当な報酬を。
The root of the contradiction and tragedy in this world is that unreasonably high compensation is paid for sloppy labor and work.
いい加減な労働・仕事に不当に高額な報酬が支払われていることに、この世の矛盾・悲劇の根源がある。
[以上にて脱稿 2024/7/22 想鐘 虎鷹(おもいかねが こよう)記す]
#創作大賞2024 #ファンタジー小説部門
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