マガジンのカバー画像

わび寂びライカ USA

5
もう一度だけ海外へ行くとしたら、いの一番にニューヨークだ。ケネディ空港で拾ったタクシーのラジオからながれるクールジャズに身をゆだね、クイーンズボロ橋が近づくにつれ摩天楼のスカイラ…
運営しているクリエイター

#ショパン

影の男

大窓から差しこむ朝日をあびた大男が ひろびろとしたコンコースのど真ん中で突っ立っている 肩幅は広くたくましい 逆光にうかびあがったシルエットは、力強さそのもの が、影は大きいけれど、弱々しい 強と弱が一緒になった男の光と影は 世紀末アメリカを象徴しているかもしれない いまなお世界最強だが、衰退の兆しを見せる黄昏の大国アメリカ グランドセントラル駅、午前9時 朝の通勤客が急ぎ足で行きかうコンコースを見張る 人の良さそうな黒人の警官がそばにいる 安心してカメラを取りだした

神々の大いなる自然

ぞっとして身の毛がよだった 前を横切ったのは、何だ?  冬眠しそこなったアメリカ熊か 20メートル先からジッとこっちを見ている 大鹿であった アメリカ西海岸、ヨセミテ国立公園 12月初め、快晴、前夜の雪がつもり、寒い 朝から渓谷をひとり歩きまわる ヨセミテの象徴たる氷河が削った切りたった岩山 ハーフドームに圧倒された アメリカの大いなる自然には神々が住む アンセル・アダムスは 人っ子ひとりいない冬のヨセミテに居をかまえ永年撮影した 壮大な大いなる自然をモノクロの美