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枯れ寂びライカ Hokkaido

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突風で駅舎がぐらっと揺れ、それまでのぽかぽか陽気が一転、気温が急降下した。ぶるっと体が犬みたいに震えた。根室ちかくの花咲駅。最果ての無人駅であった。
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#カフェ

 賀正  氷点下12℃ 増毛

留萌で乗客がどっと降り列車のなかは4~5人となった。 白波がたつ日本海沿いの停車場ごとにひとり、ふたりと客が消える。 夕暮れどき、雪がはげしく舞いあがる無人の終着駅・増毛にたどりつく。 降りたのは、おばあちゃんと僕のふたりであった。 今から10年まえであった。 氷点下12度。 2月の町は雪に埋もれていた。 いつもの倍も積もったという。 昭和8年築の観光案内所は閉まっていたが、 雑貨、寿司屋の明かりがぽつりぽつり。 雪道に足をとられ歩きつづけると、 凍えた手先と足の指

仔羊とCafé

初秋、道北の離島、焼尻。 横なぐりの雨と風が荒れ狂う。 羊をさがしまわるがその姿ははるか彼方だ。 雨がパンツにしみこんできた。 駐在のおまわりさんに教えられてとびこんだCafé。 別世界がひろがっていた。 天井までぎっしり本がつまっている。 ムンクとかピカソの画集、文学、建築、デザインの本がずらり。 モーツァルトがひびき、おまけにスパイシーな香りがただよう。 鼻とお腹をしげきしたカレーは美味かった。 女主人が淹れてくれたコーヒーも抜群。 ねばること2時間半、す