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わび寂びライカ EU

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わがカメラ事始めは、30年ほどまえのイタリアの旅。出発まぎわに「写真の撮り方入門」を手にした泥縄そのものであった。 そんな初心者が、プロ仕様のピントも露出も手動のニコンF3で撮っ…
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#グラダナ

わび寂びライカ

わがカメラ事始めは、30年ほどまえのイタリアの旅。 出発まぎわに「写真の撮り方入門」を手にした泥縄そのものであった。 そんな初心者が、プロ仕様のピントも露出も手動のニコンF3で撮って、ピンボケだらけのネガの山を築いた。 アッシジの路地裏。あ、同じカメラを持っている! とお互い思わず駆けよった相手がドイツの女子学生であった。 ベテラン風情の彼女は、プロ風にニコンを「ナイコン」と発音して、ライカより良い「キャメラ」、と。 その後、イタリアの失敗写真から抜けだそうとF3のシャ

さらばグラダナ、わが愛を!

晩秋、観光客があふれるアルハンブラ宮殿をさけ、フェネラリーフェに足をむけた。 アルハンブラ宮殿は城塞であり、イスラムの王が政務をとる場で、その住まい。 フェネラリーフェは、王の離宮で女人禁制であった。宮殿とは谷ひとつ隔てた丘にある。   そこは人もまばらで別天地であった。 ひそやかにひびく水音がする。イスラム庭園の粋「水路のパティオ」。 静かな空間に、いっそうの奥行を与える水の音。 日本庭園の鹿威しの、まわりにひびく澄んだ音だ。 これはオリエントの世界。   さらに奥へ