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わび寂びライカ EU

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わがカメラ事始めは、30年ほどまえのイタリアの旅。出発まぎわに「写真の撮り方入門」を手にした泥縄そのものであった。 そんな初心者が、プロ仕様のピントも露出も手動のニコンF3で撮っ…
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#この街がすき

わび寂びライカ

わがカメラ事始めは、30年ほどまえのイタリアの旅。 出発まぎわに「写真の撮り方入門」を手にした泥縄そのものであった。 そんな初心者が、プロ仕様のピントも露出も手動のニコンF3で撮って、ピンボケだらけのネガの山を築いた。 アッシジの路地裏。あ、同じカメラを持っている! とお互い思わず駆けよった相手がドイツの女子学生であった。 ベテラン風情の彼女は、プロ風にニコンを「ナイコン」と発音して、ライカより良い「キャメラ」、と。 その後、イタリアの失敗写真から抜けだそうとF3のシャ

神の声をきいた

アアー、アアァーアアアァー 厳かな声が 天から降りそそいでくる これはなんだ、神の声ではないか…… じつは僕の声が 高い円天井にこだましているのだった その間およそ8秒 赤茶けた荒地にオリーブの樹がひろがる丘を 幾度となく登ったり下ったり グラナダから車で60分のモンテフリオに着いた 白壁の家が 丘の斜面に連なる住民2000人だが スペインでもっとも美しい村といわれる 道ばたの八百屋から出てきた老人に誘われるまま 教会裏手の扉からドームへ通じる狭くて暗い すりへっ

ザルツブルグ散歩

ザルツブルクは、小雨模様で夏なのに肌寒い 「サウンド・オ ブ・ミュージック」で 『ドレミの歌』の舞台となったミラベル庭園を通りぬけ カラヤンの生家そばの橋をわたり 旧市街に入った 歩き疲れてカフェで、白ワインを3〜4杯かさねる ギャルソンおすすめのプレーンなオムレツは美味かった   ヨハン・シュトラウス の円舞曲「酒・女・歌」のごとく いい酒・いい食事、そのうえ、いい女といけば、旅は最高となる が、三番目はまあ難しい   クラシックが流れるカフェから ザルツブルク城を見あ

この世の天国 ドブロヴニク

夢うつつに何か聞えてくる。 たしかに窓の下から、かすかにコトコトコト……。 寝ぼけ眼で重たい鎧戸をあけると、 真下の広場では、うす暗いなか、 採れたての野菜、果物、花などをならべている。 まもなく朝市がはじまるのだ。 多民族国家ユーゴスラヴィアを治めてきた英雄チトー亡きあと、 連邦のタガがゆるみ、1991年、クロアチアが独立を宣言。 それはならじとセルビア人を主とするユーゴ軍が侵入、 クロアチア内戦が起きた。 ユーゴ軍とクロアチア軍、住民同士であったクロアチア人と 独立