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わび寂びライカ EU

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わがカメラ事始めは、30年ほどまえのイタリアの旅。出発まぎわに「写真の撮り方入門」を手にした泥縄そのものであった。 そんな初心者が、プロ仕様のピントも露出も手動のニコンF3で撮っ…
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#一度は行きたいあの場所

わび寂びライカ

わがカメラ事始めは、30年ほどまえのイタリアの旅 出発まぎわに「写真の撮り方入門」を手にした 泥縄そのものであった そんな初心者が プロ仕様のピントも露出も手動のニコンF3で撮って ピンボケだらけのネガの山を築いた アッシジの路地裏 あ、同じカメラを持っている! と お互い思わず駆けよった相手がドイツの女子学生であった ベテラン風情の彼女は プロ風にニコンを「ナイコン」と発音して ライカより良い「キャメラ」、と その後、イタリアの失敗写真から抜けだそうと F3のシャッ

運命の石

ダブリンの北西30キロにある小高いタラの丘 羊のフンをふまぬよう、そろそろ登って行く あたりはなだらかな牧草地で 羊の群れが草を食んでいる アイルランドに渡ったケルト族は 部族ごとに分かれ小国が争っていたが 王のなかの王ともいうべきタラの王をえらび その王のもとにゆるやかな連合をつくった タラの王は 宗教的な役割が色こくシンボル的存在であった 大陸からキリスト教が伝わり全土に広がるにつれ タラは影をうすめ 10世紀ごろ、タラの王座は消える が、この丘は アイリッシュ

コペンハーゲンの「解放区」

足を踏み入れたとたん、息をのみ立ちすくんだ スプレーで描いた前 衛的な絵や落書きで 壁一面がおおわれた廃屋群のど真中 ヒッピー風や 子連れの黒人親子もそこかしこ 人々の表情は、わりと穏やかで知的な 顔も見えるが ニヒルな雰囲気があたりに漂っている コペンハーゲンの町外れ、運河に囲まれた一角に クリスチャニアと呼 ばれる「解放区」がある 一九七〇年代、軍隊の兵舎や倉庫だった空き家を 浮浪者、元犯罪者、ヒッピーの若者、ヨーロッパ流れ者が いつ の間にか無断占拠してしまった