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ここは、ヘンデルが「水上の音楽」を演奏した 英国のテムズ河でもなければ 平安貴族が舟遊びを楽しんだ京都の大沢池でもない ここは、僕がガキのころ橋の上から とびこんで遊んだ五稜郭公園のお堀なのだ ヴァイオリンの音がひびき、ギターの弾き語り ソプラノの高く澄んだ歌声が 浮かんだ舞台のボートから響きわたった さらに、バラードをつま弾く津軽三味線 函館の今と昔を語るに語る講談…… 2020年夏、コロナショックで 生の演奏に飢えていたアーティストと お堀をかこんだ市民、観光客も
夕飯に遅れると母ちゃんに怒られる。 で、うす暗くなった公園のベンチの 人影に声をかけた。 「おじさん、今、何時? ねえ、教えてよ、おじさん」 返事がない。 そこで、おじさんの背後から正面にまわった。 僕は見た。初めて見たのだ。 男と女が接吻していた。 今、考えても、かなりなディープキス。 小学生のころ、遊び場のひとつが、五稜郭公園。 夕暮れまで洟たれ小僧は、あそびに遊ぶ。 いまでも表門の橋をわたる時、 そこから堀に飛びこんだ夏を思いだす。 あのころ、もっぱら犬か