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港町・函館 今と昔

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天然の良港をいだく函館。 高田屋嘉兵衛の千石船が出入りし、ペリー提督が水と薪をもとめて開港をせまり、戊辰戦争では榎本武揚の艦隊が官軍と交戦するなど歴史を刻んできた。 開港160年…
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#100歳

サル山のボス

冬が近くなり函館・湯の川温泉にあるサル山温泉に遊んだ。 函館弁で“なまら、あずましい”とは、とても気持ちがよいの意。 それもそうだ。 サル山温泉は、なんと源泉かけ流しなのだ。 長く入りすぎてボーとした顔の猿もいる。  およそ90頭の猿が暮らし、力がつよく思いやりがあり、 人望ならぬ猿望があるのが、サル山のボスとなる。 歴代ボスのなかで「函助」は、 えばり散らさず仲間の信頼をきずき、 25年もの間、君臨して、 人間でいえば100歳で大往生した。 その日一日、サル山

望郷の思い

大雪のあと晴れわたった函館・下海岸、汐泊川ちかくの浜辺。 昔そこにあった屋根の瓦と壁が欠け落ち、傾きかけた大柄の番屋は跡かたもなく消えていた。 イワシの木村番屋。雪原が広がっているだけ。  明治から昭和初期にかけイワシの大群がおしよせ海の色がかわった。イワシを大釜で炊いて畑作肥料となる漁粕が地域をうるおした。   漁期の11~12月、漁師は番屋に泊まりこみ“ヤサヨ、ヤサァヨー”と地引き網をひいた。女たちはイワシをつめこんだモッコをかつぎ浜と釜場を行きかう。 番屋跡にたた