30. ナツガッシュクのおもひで  Day.1

あっという間に夏合宿の初日を迎えた。

朝9時に名古屋駅に集合、そこからチャーターしたバスで白馬まで約4時間、合宿場所のロッジに到着する。

ロッジは高原の中腹にあり周りは山に囲まれている。

近くには・・・

何も無ぇ〜。


最寄りのコンビニにも車がないと行けないらしい。

完全に隔離である。


すぐに部長から案内があった。

「準備ができ次第、上の体育館で練習始めるからとっとと用意しろよー!」

ロッジからすぐの所に体育館があり合宿期間中は自由に使えるらしい。

準備を終えて体育館に行くとすでに上級生はみんな揃っており、今までの練習の雰囲気とは違い何かピリピリとした緊張感が漂っている。

「遅いぞ! さっさと始めるぞ!」

あれ? なんかいつもと違うな。

「最初に言っておく! 

この合宿はかーなーりキツい!」


え〜、マジすか。楽しいって言ってたじゃないすか。

「終わったら楽しいかもな。」

騙された〜! 完全にヤラれた。


「じゃあまずはランニングからだ。」

山道を3キロのランニングから始まった。

高校の部活以来のランニングはかなりキツかった。

「よし、次は“ナチュリバ”だ!」


“ナチュリバ”とはワルツの練習の1つである。

ワルツにはナチュラルターンとリバースターンという超基本のステップがあるのだが、これをワルツの曲がかかっている間ひたすら繰り返すのが“ナチュリバ”である。

「今日は初日だから“ナチュリバ”8曲!」

え〜、いつも4曲くらいじゃないすか〜。

1曲が約3分だから25分くらいやり続けることになる“ナチュリバ”は地味にキツい。

しかもこれをカウントを言いながらやるのである。

「つべこべ言わずにさっさとヤル!」

なんか当たりがキツいな。


イ〜チ、ニ〜、サ〜ン。 イ〜チ、ニ〜、サ〜ン。

「声が小さーい!」

急にスパルタだな。


イーチ、ニー、サーン! 

イーチ、ニー、サーン!


「その調子だー!」

めっちゃ体育会系じゃん。


ナチュリバが終わり、ワルツとタンゴのステップを一通りやってから少しの休憩を挟む。

他の1年生もいつもと違う雰囲気の先輩達に戸惑っているようであった。

なんか話し違うくね?みたいな空気が漂っている。


しかし周りは山に囲まれ完全に隔離されている為、逃げ出すことは不可能だ。

「次はルンバウォーク8曲だ!」

え〜、また8曲も〜。

ルンバウォークはルンバの基本的な歩き方の練習だ。前進と後退をひたすら繰り返す、これもまた地味にキツい。

「さっさとヤル!」


これもカウントを言いながらやる。

ツ〜、スリ〜、フォ〜、ワン。

ツ〜、スリ〜、フォ〜、ワン。

「また声が小さーい!」

またかよ。

ツー、スリー、フォー、ワン!

ツー、スリー、フォー、ワン!

「いいぞー!」

ホントにこれダンス部かよ。


ルンバウォークの後はルンバとチャチャチャのステップを一通りやってから、その日の練習は終わりとなった。

「初日だから今日はこれくらいで終わりにする。」

やっと終わった〜。

「夕食の後は勉強会だ!」


え〜、まだあるんすか〜。

夕食の後はダンスの知識を覚える為の講義が1時間くらい。

終わったのは22時近くだったと思う。

「よし、後は風呂に入って早く寝るように!

明日は早朝ランニングからスタートだ!」


マジか。

こうして夏合宿1日目は終了した訳だが、これはまだ序章に過ぎなかったのである。

思いのほかシリアスな展開になったな。

次回、ナチュリバの恐怖!


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