53. 腰抜け野郎・男一匹パソドブレ

スローフォックストロットの後はパソドブレだ。

「パソドブレは何を表現してるか覚えてるか?」

確か闘牛だったような・・・。

「そう、パソは闘牛とフラメンコをモチーフにしたダンスだ。」

闘牛とかフラメンコってことは発祥はスペインっすよね。

「その通り! ただ発祥はスペインだが流行したのはフランスのパリなんだ。」

へぇ〜、シャレオツっすね。

「パソでは基本的には男性が闘牛士、女性がケープやフラメンコダンサーをイメージして踊るんだ。」

キャラがある程度決まってるんすね。

「そして今までやったラテン種目の中では唯一男性が主役のダンスだぞ。」

おー。

「基本的には2拍子のマーチだけど、パソドブレはスペイン語で《倍のステップ》っていう意味だからテンポも通常の倍の早さなんだ。」

なんだか忙しそうすね。

「まぁ、とりあえずやってみるからしっかり見ておけよ。」

そういうと部長とフェロモン先輩が対称的なフラメンコっぽいポーズを決め始めた。

どうやらこのポーズからスタートするらしい。

すると突然アコースティックギターをかき鳴らした曲が流れ出す。

部長とフェロモン先輩は小気味よくステップを刻み、時には床を踏み鳴らしながら、時にはポーズを決めながら動き続ける。

そしてお互いになんだか睨み合っているようだ。

力強く勇ましい。凄い迫力だ。

デモンストレーションが終わり、部長が近づいてくる。

「なんとなくイメージは湧いたか?」

そうすね。最初に何かポーズしてませんでした?

「あれはね、スパニッシュ・ラインっていうのよ〜。」

フェロモン先輩が教えてくれる。

スパニッシュ・ライン?


「そう、パソの一番基本的なポーズよ。とにかくやってみましょ。」

はい、お願いしまーす。 

「じゃあ、まずは右足に立って、右腕を真上に上げて。」

え〜と、こんな感じ?

「ヤダ〜、何なのそのへっぴり腰は〜。

もっと腰を前に突き出して〜❤️」


こ、こうすか?

「フニャッとしてんじゃないわよ〜。

しっかり立たせて〜❤️」


た、立たせる?

「腰に決まってんじゃな〜い。」

腰をね。

「まったくもう、腰抜け野郎とじゃ踊れないわよ〜。」


腰抜け野郎・・・。

「腰抜けの闘牛士なんてシャレになんないわ。 すぐに死んじゃうわよ〜。」


死にたくないっす!

「じゃあ、ステップの前にそのへっぴり腰を何とかしなくちゃね〜。」

物腰は柔らかいけどまあまあ厳しめのこと言われてるな。

次回、腰抜け野郎の行方はいかに!



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