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「はたらく」は、一生モノ

人生で最初に「はたらく」を身近に感じたのは、
父の「はたらく」だ。

うちの父は福岡のテレビ局に勤めていた。
まぁ、いま振り返っても当時の父が「忙しかった」のは明白で、
朝、出かける時間こそ遅かったものの、
平日の夜ごはんなんて、ほとんど一緒に食べた記憶がない。

ドキュメンタリー番組のディレクターだった父は、
まさに「はたらく人」で、テレビ番組づくりに没頭していた。

そんな父とじっくりと話をしたのは、
父が定年した後だ。
上京していた僕と妹の元を訪れ、
3人でごはんに行った時のことだった。

父がこんなに「明るく話す人」だとはじめて知った。
無口な人だと思ってたが、よく話す、よく笑う。
映画も本もテレビドラマも何にでも興味を持ち、
そのことについて熱く語る、語る。
昔から家庭以外ではこういう人だったのか、
仕事を離れてこういう人になったのかわからないほどだ。
その日、その場でLINEを交換した。
今までとは違う、
新しい親子関係がスタートした感じがした。

父は、演劇も好きで、
時々、東京に観劇にくるようになった。
その度に親子3人で劇場へと出かけた。
その日は池袋のサンシャインシアターで観劇だったので、
待ち合わせを「いけふくろう」前にしていた。

待ち合わせ時間の約30分前に、
父からLINEがきた。

「もう着いた」と。そして、写真が添えられていた。

スクリーンショット 2021-01-04 17.28.02

なぜ自撮り??と僕と妹は笑わされた。

その日の観劇後、3人でごはんを食べている時に、
「インスタグラムをはじめてみれば?」という話題になり、
父は興味を持った。

「今日の自撮りが面白かったから
 『自撮りおじさん』というアカウントでどう?」

そんな3人のやりとりから、
その場でアカウントを作り、
父はインスタグラムデビューしたのである。

これが、実際のアカウント 自撮りおじさん

スクリーンショット 2021-01-04 17.20.59

2017年の11月にスタートした、このアカウント。
ご覧いただくとわかる通り、2200名を越えるフォロワーがいるのだ。

なぜか。
父がインスタに、はまったからだ。

じゃあ、インスタにはまれば、
フォロワーが増えるかというとそうではない。

その秘密は父が長年つづけてきた「はたらく」にある。

父はドキュメンタリー番組のディレクターであった。
いまの父は自分をキャラクター化し、
そのキャラクターのドキュメンタリー番組を作っているかのように、
インスタグラムを楽しみまくっている。

僕や妹がコメントをしたとしても、
父としての返信ではなく、
「おじさんはね」とおじさんを主語にして返してくる徹底ぶり。

定年後の時間を有効に使い「いいね!」してくれた人にはすぐに、
「いいね!」を返すし、

フォローしてくれた人には当然フォローバッグ、
さらにその人の投稿のいくつかに「いいね!」をつける。

おじさん曰く「そのくらいは当然の誠意」とのこと。

日々、インスタに何を投稿しようかと考え、
そのために出かけるようになり、精力的に活動する日々を送っている。
どんどんと元気になっていく。

このアカウントの特徴は、フォロワーの人数のわりに、
コメントの数が多いということ。
どうやら「おじさん」と卑下する父には、
コメントしやすいらしい。
若い女性からも「おじさん、かわいい」
「おじさん、ウケる」と、大人気だ。
それに対して「楽しそうなおじさん」からのコメントが返ってくるので、
それもコメントをいれたくなる理由だろう。

子どもからすると、わざわざ親に「元気?」と聞かなくとも、
「元気」なことがわかるのは、安心である。
親にインスタをはじめてもらうのは、そういう意味でオススメですよ。

好きなことを仕事にできる人は少ないかもしれない。
でも、父は、その一人だったんだなぁ、と思う。

「はたらく」ことを一生懸命にがんばってきたからこそ、
その技術や能力や姿勢を活かして、老後まで楽しむことができる。

「はたらく」ってお金や家族のためのものだったりするけれど、
自分の人生のためのものであり、一生モノなんだなぁ、と思いながら、
自撮りおじさんの投稿に、日々、「いいね!」をつけている。

カタチは変わっても、
一生懸命「はたらいた時間」は、一生モノになるのだ。

#はたらくってなんだろう

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ROCKET STAR/経営・ディレクター・コピーライター/新しい仕事への挑戦報告や仕事の延長線上にある言葉での創作活動など、まず自分が楽しそうなことを書き綴っていきたい。絵本の原作、ショートショートにもチャレンジしたいと思ってます。照れくさいようなポエムとかもいいかも。